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第一章 第五王子になりました
1. 忘れられた王子
大国のアズール王国の王宮は、三つの建物からなる。国王の住まいである蒼天宮、王妃や側妃などの王の妻が住む蒼月宮、王子や王女の蒼星宮。他にもいくつか離宮はあるが、『蒼』が名前に含まれているのはこの三つの宮だけである。
アズール王国では青色は高貴な色とされている。王族の直系だけが宝石のように輝く青い瞳を持っており、古代語で『青い宝石』を意味する『シアヌ・ジュール』と呼ばれている。その瞳は継承権にも大きく影響する。
その他、血筋や実力なども加味されるが、瞳を持っているかどうかで順位にも差がつくほどだ。
この国では四人の王子が国王の座を争っている。王女もいるにはいるが、婚約者が決まっていたり、すでに他国に嫁いでいたりとあまり王位争いに関わりを持つ立場にはない。
そんな王宮では、ある噂が広まっていた。それは、とある怪談話。
蒼星宮に併設された図書館に、子どもの亡霊が出るというもの。一人の使用人が図書館の清掃を行った際に目撃された。その子どもは、本棚の前に立っていたかと思うと、突如として浮かび上がり、そのまま消えてしまうという。
多くの者たちは馬鹿馬鹿しい噂だと本気にしていなかったが、目撃した使用人が一人ではなく複数人であったことから、信じている者も決して少なくはなかった。
ちなみに僕は、まったく信じていない。だって、その幽霊の正体は生きた人間であることを知っているから。
王宮だから過去には人が死んだことだってあるんだろうし、幽霊が出ても不思議ではないけど、さすがに図書館で死んだ人はいないと思う。
その幽霊とされた人間が図書館に来ているのは、単なる暇潰し。他にやることがなくて、図書室に来ていたけど、見つかるといろいろと面倒なので、こそこそと隠れていたら幽霊騒ぎになっていた。
そんな僕は、噂の図書館で本を探している。最近は、自分が届く高さの本はある程度読んでしまったので、高いところの本を読みたい。
でも、僕はまだ子どもなので、梯子を使ったところで全部取れるわけではないし、落ちたら怪我ではすまないかもしれない。
だからこそ、浮かび上がる必要がある。
ここで察しのいい人は気づいただろう。幽霊の正体とされているのは僕のこと。
人がいないことを確認したつもりだったんだけど、まさか見られていたとはなぁ。びっくりして逃げてしまったからか、幽霊扱いされてしまった。
しかも、その幽霊話を聞きつけたのか、あまり人の来なかった蒼星宮の図書館に王子や王女が来るようになって、なかなかこっそりと図書館に来ることができなくなってしまった。僕はあまり人に会わないように言われているから、人が多いと図書館に行けない。
でも、しばらくすると興味がなくなったのか、また人が来なくなってきたので、再び図書室通いを始めた。
そんなある日のこと。事件は起きる。
僕がいつものように、本を選んでいたときのこと。
もう図書館の本もほぼ読んでしまい、まだ読んでいない本はないものかと本のタイトルを念入りにチェックしていて、周りの気配に気づくことができなかった。
ようやく読んだことのない本を見つけて、本を抱えて地面に降り立ったとき、背後に誰かの気配を感じた。
僕は、被っていたフードをさらに深く被り、顔を見られないようにする。約束を破るわけにはいかないからね。
「おい」
低い声が聞こえる。男の声。たった一言だけど、威厳のある。使用人ではない。
騎士?それともどこかの貴族?蒼星宮なら王子の可能性もあるな。
「お前はなんだ?」
「……僕?」
僕?と尋ねはしたけど、ここには僕と男以外に人はいないので、男の質問が僕に向けられていることは確かなんだけどね。
「本、読みに」
ようやくまだ読んでいない本が見つかったというのに、この人とお話ししている場合じゃない。
「それじゃ」
僕はいろいろと聞かれる前に、フードをさらに深く被って逃げた。走ってではない。図書館から自分の部屋に瞬間移動したのだ。
前に使用人に見つかったときもこのようにして逃げた。使用人からすれば目の前で消えたようにしか見えなかったと思う。
僕はベッドの上に瞬間移動したことで、ベッドにダイブするように着地する。地面に立とうとするとバランスを崩して倒れることが多いから、ベッドにダイブするように瞬間移動するのが一番安全なので。
「ジルさま、どうしましたか!?」
部屋にいた女の人ーーロナが僕に驚愕の表情を向けてきました。掃除道具を持っているから、掃除をしていたのかな。
いつも部屋をきれいにしてくれるロナには感謝しかない。
「見つかった」
「もう……あれほどお気をつけくださいと言ったでしょう!」
「ごめん……」
まさか、今の時間帯に図書館に人がいるとは思わなかったもん。今は晩餐の時間であり、王子や王女はもちろん、使用人や騎士もその準備や護衛で図書館に来ることはないと思っていたから。
「これでは、図書館に行かせることはできませんよ?」
「ひどい」
ロナの悪魔!鬼!子どもを部屋に閉じ込めるのは虐待なのに!
「顔、見られてない。大丈夫」
ずっと相手に背中を向けて話してたので。僕も相手の顔が見えなかったから、誰かわからないけど。
男の人なのは確かだけど、あんなところに騎士がいたのかな。使用人が掃除したりすることはあるけど、騎士が図書館に来たことなんてまったくなかった。せいぜい、王子や王女の護衛として来ていたくらいなのに。
「……わかりました。ですが、ほとぼりが冷めるまでは外出禁止です」
「わかった……」
本、読み足りないのにな……
アズール王国では青色は高貴な色とされている。王族の直系だけが宝石のように輝く青い瞳を持っており、古代語で『青い宝石』を意味する『シアヌ・ジュール』と呼ばれている。その瞳は継承権にも大きく影響する。
その他、血筋や実力なども加味されるが、瞳を持っているかどうかで順位にも差がつくほどだ。
この国では四人の王子が国王の座を争っている。王女もいるにはいるが、婚約者が決まっていたり、すでに他国に嫁いでいたりとあまり王位争いに関わりを持つ立場にはない。
そんな王宮では、ある噂が広まっていた。それは、とある怪談話。
蒼星宮に併設された図書館に、子どもの亡霊が出るというもの。一人の使用人が図書館の清掃を行った際に目撃された。その子どもは、本棚の前に立っていたかと思うと、突如として浮かび上がり、そのまま消えてしまうという。
多くの者たちは馬鹿馬鹿しい噂だと本気にしていなかったが、目撃した使用人が一人ではなく複数人であったことから、信じている者も決して少なくはなかった。
ちなみに僕は、まったく信じていない。だって、その幽霊の正体は生きた人間であることを知っているから。
王宮だから過去には人が死んだことだってあるんだろうし、幽霊が出ても不思議ではないけど、さすがに図書館で死んだ人はいないと思う。
その幽霊とされた人間が図書館に来ているのは、単なる暇潰し。他にやることがなくて、図書室に来ていたけど、見つかるといろいろと面倒なので、こそこそと隠れていたら幽霊騒ぎになっていた。
そんな僕は、噂の図書館で本を探している。最近は、自分が届く高さの本はある程度読んでしまったので、高いところの本を読みたい。
でも、僕はまだ子どもなので、梯子を使ったところで全部取れるわけではないし、落ちたら怪我ではすまないかもしれない。
だからこそ、浮かび上がる必要がある。
ここで察しのいい人は気づいただろう。幽霊の正体とされているのは僕のこと。
人がいないことを確認したつもりだったんだけど、まさか見られていたとはなぁ。びっくりして逃げてしまったからか、幽霊扱いされてしまった。
しかも、その幽霊話を聞きつけたのか、あまり人の来なかった蒼星宮の図書館に王子や王女が来るようになって、なかなかこっそりと図書館に来ることができなくなってしまった。僕はあまり人に会わないように言われているから、人が多いと図書館に行けない。
でも、しばらくすると興味がなくなったのか、また人が来なくなってきたので、再び図書室通いを始めた。
そんなある日のこと。事件は起きる。
僕がいつものように、本を選んでいたときのこと。
もう図書館の本もほぼ読んでしまい、まだ読んでいない本はないものかと本のタイトルを念入りにチェックしていて、周りの気配に気づくことができなかった。
ようやく読んだことのない本を見つけて、本を抱えて地面に降り立ったとき、背後に誰かの気配を感じた。
僕は、被っていたフードをさらに深く被り、顔を見られないようにする。約束を破るわけにはいかないからね。
「おい」
低い声が聞こえる。男の声。たった一言だけど、威厳のある。使用人ではない。
騎士?それともどこかの貴族?蒼星宮なら王子の可能性もあるな。
「お前はなんだ?」
「……僕?」
僕?と尋ねはしたけど、ここには僕と男以外に人はいないので、男の質問が僕に向けられていることは確かなんだけどね。
「本、読みに」
ようやくまだ読んでいない本が見つかったというのに、この人とお話ししている場合じゃない。
「それじゃ」
僕はいろいろと聞かれる前に、フードをさらに深く被って逃げた。走ってではない。図書館から自分の部屋に瞬間移動したのだ。
前に使用人に見つかったときもこのようにして逃げた。使用人からすれば目の前で消えたようにしか見えなかったと思う。
僕はベッドの上に瞬間移動したことで、ベッドにダイブするように着地する。地面に立とうとするとバランスを崩して倒れることが多いから、ベッドにダイブするように瞬間移動するのが一番安全なので。
「ジルさま、どうしましたか!?」
部屋にいた女の人ーーロナが僕に驚愕の表情を向けてきました。掃除道具を持っているから、掃除をしていたのかな。
いつも部屋をきれいにしてくれるロナには感謝しかない。
「見つかった」
「もう……あれほどお気をつけくださいと言ったでしょう!」
「ごめん……」
まさか、今の時間帯に図書館に人がいるとは思わなかったもん。今は晩餐の時間であり、王子や王女はもちろん、使用人や騎士もその準備や護衛で図書館に来ることはないと思っていたから。
「これでは、図書館に行かせることはできませんよ?」
「ひどい」
ロナの悪魔!鬼!子どもを部屋に閉じ込めるのは虐待なのに!
「顔、見られてない。大丈夫」
ずっと相手に背中を向けて話してたので。僕も相手の顔が見えなかったから、誰かわからないけど。
男の人なのは確かだけど、あんなところに騎士がいたのかな。使用人が掃除したりすることはあるけど、騎士が図書館に来たことなんてまったくなかった。せいぜい、王子や王女の護衛として来ていたくらいなのに。
「……わかりました。ですが、ほとぼりが冷めるまでは外出禁止です」
「わかった……」
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