転生したら捨て子でしたが、優しい家族に拾われました。~恩返ししつつ快適な異世界生活を目指します~

りーさん

文字の大きさ
7 / 11
第一章 優しい家族に拾われて

7.

しおりを挟む
 想像以上の魔法を使って説教された僕は、アニエスから魔法指導を受けることになった。ちゃんと魔法を制御できるようにするためだという。
 ルシウスよりもアニエスのほうが技術も教え方も上手だそうなので、必然的にアニエスとなった。

「まずは魔力を扱う術を身につけるの。アインは感覚で使っているから精密なコントロールができていないのよ」
「理屈はわかるけど、具体的にはどうするの?」
「まずはこれ」

 そう言って、アニエスはたらいを見せる。

「このたらいを水で満たしなさい。ただし、溢してはダメ。溢したら最初からやり直しよ」
「……それだけ?」

 もっと手取り足取り教えてくるものだと思っていたから、少し呆けてしまうも、アニエスはきっと睨んでくる。

「量を調節するのって結構難しいのよ。シアの部屋を水浸しにしたあなたは余計ね」

 アニエスの言葉にムッとなった僕は言い返す。

「そう言うアニエスはできるの?」
「当たり前じゃない」

 アニエスは得意気な顔で水を生み出し、たらいを水で満たす。
 水は表面張力の膨らみがはっきりと見えるほどに入っており、僅かでも衝撃を加えたら溢れてしまうほどだ。それでも溢れない。

 得意気な顔をするだけはあるようだ。アニエスはたらいに入った水を地面に撒いた。

「ほら、今度はアインの番」
「わかった」

 僕は慎重に魔力を動かし、たらいに水を出すも、大量に生み出された水は一瞬でたらいから溢れた。

「あう……」
「はい、やり直し」

 アニエスは遠慮なくたらいの水をぶちまけた。僕は負けじと再び水を生み出すも、また溢れさせてしまう。
 今度は少しずつ溜めていこうと思ったけど、思ったよりも水の出る勢いが強くて再び溢れる。

 すぐに終わらせようと思ってたけど、全然終わる気配がない。
 これは僕がへたくそなのか、アニエスが上手なのか。どうせなら僕がへたくそなだけであってほしい。

「大丈夫よ、アイン」
「何が」

 うまくできないことが思った以上に悔しく思っているらしく、拗ねた返事をしてしまう。ほんとガキみたいだ。

「ルシウスもできないから」
「……そうなの?」
「彼って大雑把だから、こういう繊細さを求められると弱いのよね~」

 アニエスはクスクスと笑っている。何が楽しいのかわからないけど、アニエスが笑っていると僕も釣られて笑ってしまう。

「じゃあ、できるようになったらルシウスに見せて驚かせてやりたい」
「あら、いいわね。その時のあいつの顔はきっと見物だわ」

 目標ができると一瞬にしてやる気が出てくるのだから、子どもは本当に単純なものだ。
 その後も数回ほど繰り返して、ようやく感覚が掴めてきた。

 そしてついに。

「よし、できた!」

 初めてたらいから溢れさせずに水を満たすことができた。合計で二十回以上は挑戦したと思う。

「おお、やるじゃん」

 今まで冷たく「やり直し」としか言わなかったアニエスの口から久しぶりに優しい言葉が出てきた。
 僕のために厳しくしてくれていただけで、本当は優しいからね、アニエスは。

「じゃあ、次はもっと小さくしてみようか」
「ち、小さくするの?」
「ええ。最終的にはコップに溢さずに入れられるようになるまでやるわよ」

 前言撤回。アニエスはやっぱり優しくない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...