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第一章 最強の少年
12 立て続けに
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元気になったルイスは、街の外に出て、アノリカルを探していた。
いつの間にか常設依頼となっていたようで、掲示板にも、アノリカルの採取依頼が貼られていた。
常設依頼の場合は、わざわざ受注を知らせる必要はないため、ルイスは手続きを行わず、街の外に来ている。
念のため、他に依頼がないかダグラスに確認したが、討伐依頼はないと言われた。
それどころか、『お前は怪我が治ったばかりなんだから無茶すんな!』と怒鳴られてしまい、アノリカルの採取をしてくるように言われた。
(一度できたら慣れてきたかも)
昨日は何回も失敗していたが、成功してコツを掴んでからは、完璧とまでは言わなくても、失敗する数は少なくなっていた。
花は、家から持ってきていた袋に入れている。二本目以降は、それを、地面に置いておいて、魔力を注いでいる。そして、終わったら袋に入れ、見つけたらまた袋を置くというのを繰り返していた。
ダグラスは兵士でも使えと言ってくれて、ダグラスから話が言ったのか、なぜか事情を知っていた兵士に協力を申し出されたが、ルイスは申し訳なさから断っていた。
これが、冒険者のパーティーメンバーなら、ルイスだって任せたかもしれない。だが、あの兵士は門の警備という重要な仕事があるのだ。それを邪魔するわけにはいかない。
「あっ、もうそろそろ帰らないと」
二十本ほど採取して、そろそろ夕方になるというタイミングで、ルイスは街に戻ろうと門のほうを向く。
その時、妙な気配を感じた。
これは、魔物の気配だ。ルイスは、離れすぎていなければ、無意識的に魔物の気配がわかる。近くには、人の気配もあるようだった。このままでは、人が襲われるかもしれない。だが、あまり帰宅が遅いと養父母たちに怒られる。
父親はともかく、母親はあまり怒らせたくない。
(う~ん……。このくらいなら、一分くらいで着くかな)
天秤にかけた結果、あまり遅くならないだろうと判断し、魔物のほうに向かうことにした。
なるべく、早く向かわなければならないので、のんびりと地面を走っている暇はない。
ルイスは、真反対に体を向け、足に力を込めて地面を蹴る。ルイスの蹴りの威力で、大きく土埃が舞舞った。
ルイスの体は、一瞬にして彼方に飛んでいった。
◇◇◇
ルイスが飛んでいく。
それを、呆然としながら見上げる男がいた。ルカである。ルカは、またアノリカルを咲かそうとしているルイスのことが気になり、仕事の傍ら見守っていた。
地面を蹴ったことで、ルイスの体は宙に浮かぶ。それは、この街を囲っている石壁を楽々と飛び越せるくらいであり、ルイスの身長の十倍はあるであろう高さだ。
これは、飛翔しているわけではない。ルイスにとっては、ただ跳び跳ねただけだ。それはわかっているが、端から見れば飛んでいるようにしか見えない。
(あいつがあんなんじゃあ、口止めは意味がないと思うが)
ルカは、先日の夜中に家まで訪ねてきた存在を思い出す。名はダグラスと言い、冒険者ギルドの職員とのことだった。
冒険者ギルドと兵士は、役割が似通っているため、上層部とは協力体制にある。そのため、ギルドの職員が、兵士を訪ねてくることはそこまでおかしなことではない。
だが、わざわざ自分と、それもこんな夜中に、家に来てまで話そうとしてくるのが不思議だった。魔物の報告とかなら、それこそ兵士長だけで充分だ。自分に何か報告があるのだとしても、それなら事前に兵士長が教えてくれるはず。だが、それもない。
一体、何の用なんだと身構えていると、ダグラスという男は一言だけ言って終わった。
『ルイスがアノリカルを咲かせたことは、誰にも言うな。兵士長にも、領主様にも』
それだけ言って、ダグラスはルカに背を向けた。そして、歩こうとするところで足を止める。
『……俺が来たことは、ルイスには言うな』
ダグラスは、再び歩き出した。
ルカは、その言葉を理解するのに数秒かかる。ルカがその言葉を理解した頃には、男の姿は闇に消えていた。
言われなくても、そのことは誰にも話すつもりはなかった。魔物が倒せないと言われている少年が、アノリカルを人工的にいくつも咲かせたなど、ルカだって見なければ信じないだろう。
それなのに、わざわざ言いに来るようなことだろうか。兵士長だけでなく、領主にも隠せと言う。そうなると、話さないといけないような気がする。
だが……あの時のダグラスのルカを見る目は、それだけでルカを殺せるような冷たい瞳だった。たった一言の口外禁止の言葉を聞いただけなのに、まるで死刑宣告をされたかのような圧迫感だった。
話したことが知られたら、本当に始末される。本能的に悟った。
それに、ルカも話すなという理由はわからなくもない。ダグラスに言われたのもあるが、ルイスのためにも、あの時のことはルカの心だけに留めておくことにした。よほどのことがなければ、墓場まで持っていくつもりだ。
その、つもりだったのだがーー
(ありゃあ、無理だな)
人間離れした跳躍力を見せたルイスを見て、ルカは、はぁとため息をついた。
いつの間にか常設依頼となっていたようで、掲示板にも、アノリカルの採取依頼が貼られていた。
常設依頼の場合は、わざわざ受注を知らせる必要はないため、ルイスは手続きを行わず、街の外に来ている。
念のため、他に依頼がないかダグラスに確認したが、討伐依頼はないと言われた。
それどころか、『お前は怪我が治ったばかりなんだから無茶すんな!』と怒鳴られてしまい、アノリカルの採取をしてくるように言われた。
(一度できたら慣れてきたかも)
昨日は何回も失敗していたが、成功してコツを掴んでからは、完璧とまでは言わなくても、失敗する数は少なくなっていた。
花は、家から持ってきていた袋に入れている。二本目以降は、それを、地面に置いておいて、魔力を注いでいる。そして、終わったら袋に入れ、見つけたらまた袋を置くというのを繰り返していた。
ダグラスは兵士でも使えと言ってくれて、ダグラスから話が言ったのか、なぜか事情を知っていた兵士に協力を申し出されたが、ルイスは申し訳なさから断っていた。
これが、冒険者のパーティーメンバーなら、ルイスだって任せたかもしれない。だが、あの兵士は門の警備という重要な仕事があるのだ。それを邪魔するわけにはいかない。
「あっ、もうそろそろ帰らないと」
二十本ほど採取して、そろそろ夕方になるというタイミングで、ルイスは街に戻ろうと門のほうを向く。
その時、妙な気配を感じた。
これは、魔物の気配だ。ルイスは、離れすぎていなければ、無意識的に魔物の気配がわかる。近くには、人の気配もあるようだった。このままでは、人が襲われるかもしれない。だが、あまり帰宅が遅いと養父母たちに怒られる。
父親はともかく、母親はあまり怒らせたくない。
(う~ん……。このくらいなら、一分くらいで着くかな)
天秤にかけた結果、あまり遅くならないだろうと判断し、魔物のほうに向かうことにした。
なるべく、早く向かわなければならないので、のんびりと地面を走っている暇はない。
ルイスは、真反対に体を向け、足に力を込めて地面を蹴る。ルイスの蹴りの威力で、大きく土埃が舞舞った。
ルイスの体は、一瞬にして彼方に飛んでいった。
◇◇◇
ルイスが飛んでいく。
それを、呆然としながら見上げる男がいた。ルカである。ルカは、またアノリカルを咲かそうとしているルイスのことが気になり、仕事の傍ら見守っていた。
地面を蹴ったことで、ルイスの体は宙に浮かぶ。それは、この街を囲っている石壁を楽々と飛び越せるくらいであり、ルイスの身長の十倍はあるであろう高さだ。
これは、飛翔しているわけではない。ルイスにとっては、ただ跳び跳ねただけだ。それはわかっているが、端から見れば飛んでいるようにしか見えない。
(あいつがあんなんじゃあ、口止めは意味がないと思うが)
ルカは、先日の夜中に家まで訪ねてきた存在を思い出す。名はダグラスと言い、冒険者ギルドの職員とのことだった。
冒険者ギルドと兵士は、役割が似通っているため、上層部とは協力体制にある。そのため、ギルドの職員が、兵士を訪ねてくることはそこまでおかしなことではない。
だが、わざわざ自分と、それもこんな夜中に、家に来てまで話そうとしてくるのが不思議だった。魔物の報告とかなら、それこそ兵士長だけで充分だ。自分に何か報告があるのだとしても、それなら事前に兵士長が教えてくれるはず。だが、それもない。
一体、何の用なんだと身構えていると、ダグラスという男は一言だけ言って終わった。
『ルイスがアノリカルを咲かせたことは、誰にも言うな。兵士長にも、領主様にも』
それだけ言って、ダグラスはルカに背を向けた。そして、歩こうとするところで足を止める。
『……俺が来たことは、ルイスには言うな』
ダグラスは、再び歩き出した。
ルカは、その言葉を理解するのに数秒かかる。ルカがその言葉を理解した頃には、男の姿は闇に消えていた。
言われなくても、そのことは誰にも話すつもりはなかった。魔物が倒せないと言われている少年が、アノリカルを人工的にいくつも咲かせたなど、ルカだって見なければ信じないだろう。
それなのに、わざわざ言いに来るようなことだろうか。兵士長だけでなく、領主にも隠せと言う。そうなると、話さないといけないような気がする。
だが……あの時のダグラスのルカを見る目は、それだけでルカを殺せるような冷たい瞳だった。たった一言の口外禁止の言葉を聞いただけなのに、まるで死刑宣告をされたかのような圧迫感だった。
話したことが知られたら、本当に始末される。本能的に悟った。
それに、ルカも話すなという理由はわからなくもない。ダグラスに言われたのもあるが、ルイスのためにも、あの時のことはルカの心だけに留めておくことにした。よほどのことがなければ、墓場まで持っていくつもりだ。
その、つもりだったのだがーー
(ありゃあ、無理だな)
人間離れした跳躍力を見せたルイスを見て、ルカは、はぁとため息をついた。
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