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第一章 最強の少年
5 迷宮に潜る1
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ルイスがギルドに訪れた時、いつもとは違い、何やら騒がしかった。
「ダグラスおじさーん。何かあったの?」
「おっ、ルイス!いいところに来たな!」
ダグラスに声をかけると、ルイスに気づいたダグラスがそう言う。
ルイスは、ダグラスの言っていることがわからず首をかしげる。
「マス……ダグラスさん!まさか、彼に任せようと言うんですか!?」
「そうだが?」
信じられないという表情で訴えてくる受付嬢に、ダグラスは当然と言ったように返す。
(マス……って、何を言いかけたんだろう?)
当のルイスは、のほほんとそんなことを考えていた。
「やませ迷宮は、初心者向けとはいえ、ルイスくんには難しいのでは……」
「そうは言ってもなぁ。俺もルイスくらいしか心当たりがないんだよ。魔法も使えて、近接戦闘ができて、ソロで活動してて、なおかつすぐに動けるやつなんてな」
「あの……やませ迷宮って?」
完全に置いていかれつつあるルイスがそう聞くと、「ああ。ルイスは知らないか」と言って、ダグラスが説明してくれる。
「まず、迷宮って言うのは、洞窟や、昔の建物とかに魔素が集まって、異空間になった場所のことだ。やませ迷宮っていうのは、山の洞窟にある迷宮だな。十階層の迷宮で、小さめなところだ」
山と聞いて、ルイスは街から見える山を思い浮かべる。あの場所には、ダグラスから紹介された魔物の退治の一環で行った覚えがあるが、迷宮があるのは知らなかった。
「階層って?」
「迷宮はな、階層が積み重なっているんだ。ルイスの家にも、一階と二階があるだろ?あんな感じで、空間が上下に重なっていることを階層って言うんだ。十階層と言うのは、空間が十個あるってことだな」
ルイスは、自分の家を思い浮かべる。
家の一階と二階は、階段で繋がってはいるものの、天井で区切られている。
(それなら、僕の家は二階層ってことになるのか)
ある程度迷宮の特性を理解できたルイスは、一番重要なことを尋ねる。
「なんでそこに僕が行くの?」
「一つのパーティーが、依頼でしくじって怪我しちまってな。戦闘の主軸となってたやつが使い物にならなくなっちまったから、代わりを探してるんだ」
「それなら、その人が治るまで待てばいいんじゃないの?」
「それがな、そのパーティーはまだ駆け出しだから、家も持ってねぇし、依頼を受けて生活費を稼がなきゃならねぇんだ。そいつの治療費の問題もあるしな」
「それなら、僕は意味ないんじゃ……?」
ルイスの魔法や拳は、素材の形がろくに残らないほど強い。ルイスが迷宮で魔物を倒したところで、大した稼ぎにならないのはわかりきっていた。
「問題ねぇよ。さっき、迷宮は異空間になってるって言っただろ?魔物を倒したら、その死体は迷宮に吸収される。その代わりに、ドロップアイテムと呼ばれるものが現れるんだ。だから、仲間さえ傷つけなかったら、遠慮なく吹っ飛ばしても問題ない。それを回収すればいいわけだからな」
「なんで、ドロップアイテムが出るの?」
「そんなのは知らねぇよ。迷宮は、よくわかってないことが多いんだ。迷宮自体は千年以上前から各地で目撃されていたが、迷宮が作られる経緯は、わかったのは十年くらい前のことなんだからな」
「そうなんだ。でも、それならそこに僕を入れてくれてもよくない?」
威力が関係のないのならば、そこで素材を稼げば、楽々にお金が稼げて、等級も簡単に上がっただろう。それに、ダグラスが気づかないはずもない。
ルイスがダグラスをじとっと見ると、ダグラスはフッと笑う。
「迷宮は、いくら初心者向けでも、ソロでは8級からしか入れねぇんだよ。魔物を倒せなくちゃならないからな。残念だったな、9級のルイス」
「えぇ~!!じゃあ、おじさんが上げてくれればいいじゃん!」
「無理に決まってるだろ!」
ルイスがダグラスの服を掴み揺さぶる。ダグラスは、それを引き離そうとしているのを見て、受付嬢のニナは呆れ顔で見る。
(マスターならできるでしょうに。なんで隠すんですかね?)
ダグラスは、冒険者ギルドのギルドマスターだ。
ギルドマスターには、様々な特権が与えられている。等級の昇格もその一つだ。
だが、ダグラスはそれを使おうとはしない。そもそも、ルイスにギルドマスターだというのも秘密にしている。受付嬢たちにも、ルイスには話すなと周知させているほどだ。
先ほど、ニナがマスターと言いかけて呼び直したのもそれが理由だ。
そうは思ったものの、こんな馬鹿らしいことに関わりたくはなかったので、特に指摘もせずに、仕事に戻った。
◇◇◇
一週間後、ルイスは約束していたパーティーと合流する。
ダグラスからは、待ち合わせ場所とパーティーの名前、人数しか教わらなかったため、どんなパーティーなのかわからない。
「えっと、ここ……だよね?」
ルイスが指定された待ち合わせ場所付近でキョロキョロとしていると、それっぽい人たちを見かける。
ルイスは、その人たちの側に寄り、おそるおそる尋ねた。
「あの……もしかして、『蒼風の刃』さんたちですか?」
「そうだけど……どうしたの?」
答えてくれたのは、大盾を持った女性。
「ダグラスさんから頼まれて来たんですけど……」
ルイスがそう言うと、全員がぎょっとした。
「あなた、魔物が倒せないっていうルイスくんでしょう!?確かに、子どもだって言うのは聞いてたけど、でも……」
「だ、大丈夫です。倒せますから。駆け出しなのに、僕のこと知ってるんですね」
「そりゃあ、あなたはギルドの有名人だもの。知らない人はいないんじゃない?」
「そんなに有名ですか?僕って」
まったく自覚のないルイスは首をかしげるが、蒼風の刃たちは呆れたようにルイスを見る。ルイスは、ますます訳がわからなかった。
一人の女性が、ため息をつきながらも説明する。
「だって、ルイスくんって、ちゃんと両親がいるんでしょう?それなのに冒険者をやって、しかも魔物を倒せなかったって、いつもあの男の人に泣きついてるじゃない。気づくなってほうが無理があるわ」
「泣きついてなんてーー」
そこまで言ったところで、言葉は出なくなった。思い返してみれば、心当たりしかなかったからだ。
「まぁ、ちゃんと戦力になるなら問題ないわ。ダグラスさんからの紹介なら間違いはないと思うし、行きましょう」
「は、はい」
ダグラスさんって信用されているんだなぁと思いながら、ルイスは後ろをついていった。
「ダグラスおじさーん。何かあったの?」
「おっ、ルイス!いいところに来たな!」
ダグラスに声をかけると、ルイスに気づいたダグラスがそう言う。
ルイスは、ダグラスの言っていることがわからず首をかしげる。
「マス……ダグラスさん!まさか、彼に任せようと言うんですか!?」
「そうだが?」
信じられないという表情で訴えてくる受付嬢に、ダグラスは当然と言ったように返す。
(マス……って、何を言いかけたんだろう?)
当のルイスは、のほほんとそんなことを考えていた。
「やませ迷宮は、初心者向けとはいえ、ルイスくんには難しいのでは……」
「そうは言ってもなぁ。俺もルイスくらいしか心当たりがないんだよ。魔法も使えて、近接戦闘ができて、ソロで活動してて、なおかつすぐに動けるやつなんてな」
「あの……やませ迷宮って?」
完全に置いていかれつつあるルイスがそう聞くと、「ああ。ルイスは知らないか」と言って、ダグラスが説明してくれる。
「まず、迷宮って言うのは、洞窟や、昔の建物とかに魔素が集まって、異空間になった場所のことだ。やませ迷宮っていうのは、山の洞窟にある迷宮だな。十階層の迷宮で、小さめなところだ」
山と聞いて、ルイスは街から見える山を思い浮かべる。あの場所には、ダグラスから紹介された魔物の退治の一環で行った覚えがあるが、迷宮があるのは知らなかった。
「階層って?」
「迷宮はな、階層が積み重なっているんだ。ルイスの家にも、一階と二階があるだろ?あんな感じで、空間が上下に重なっていることを階層って言うんだ。十階層と言うのは、空間が十個あるってことだな」
ルイスは、自分の家を思い浮かべる。
家の一階と二階は、階段で繋がってはいるものの、天井で区切られている。
(それなら、僕の家は二階層ってことになるのか)
ある程度迷宮の特性を理解できたルイスは、一番重要なことを尋ねる。
「なんでそこに僕が行くの?」
「一つのパーティーが、依頼でしくじって怪我しちまってな。戦闘の主軸となってたやつが使い物にならなくなっちまったから、代わりを探してるんだ」
「それなら、その人が治るまで待てばいいんじゃないの?」
「それがな、そのパーティーはまだ駆け出しだから、家も持ってねぇし、依頼を受けて生活費を稼がなきゃならねぇんだ。そいつの治療費の問題もあるしな」
「それなら、僕は意味ないんじゃ……?」
ルイスの魔法や拳は、素材の形がろくに残らないほど強い。ルイスが迷宮で魔物を倒したところで、大した稼ぎにならないのはわかりきっていた。
「問題ねぇよ。さっき、迷宮は異空間になってるって言っただろ?魔物を倒したら、その死体は迷宮に吸収される。その代わりに、ドロップアイテムと呼ばれるものが現れるんだ。だから、仲間さえ傷つけなかったら、遠慮なく吹っ飛ばしても問題ない。それを回収すればいいわけだからな」
「なんで、ドロップアイテムが出るの?」
「そんなのは知らねぇよ。迷宮は、よくわかってないことが多いんだ。迷宮自体は千年以上前から各地で目撃されていたが、迷宮が作られる経緯は、わかったのは十年くらい前のことなんだからな」
「そうなんだ。でも、それならそこに僕を入れてくれてもよくない?」
威力が関係のないのならば、そこで素材を稼げば、楽々にお金が稼げて、等級も簡単に上がっただろう。それに、ダグラスが気づかないはずもない。
ルイスがダグラスをじとっと見ると、ダグラスはフッと笑う。
「迷宮は、いくら初心者向けでも、ソロでは8級からしか入れねぇんだよ。魔物を倒せなくちゃならないからな。残念だったな、9級のルイス」
「えぇ~!!じゃあ、おじさんが上げてくれればいいじゃん!」
「無理に決まってるだろ!」
ルイスがダグラスの服を掴み揺さぶる。ダグラスは、それを引き離そうとしているのを見て、受付嬢のニナは呆れ顔で見る。
(マスターならできるでしょうに。なんで隠すんですかね?)
ダグラスは、冒険者ギルドのギルドマスターだ。
ギルドマスターには、様々な特権が与えられている。等級の昇格もその一つだ。
だが、ダグラスはそれを使おうとはしない。そもそも、ルイスにギルドマスターだというのも秘密にしている。受付嬢たちにも、ルイスには話すなと周知させているほどだ。
先ほど、ニナがマスターと言いかけて呼び直したのもそれが理由だ。
そうは思ったものの、こんな馬鹿らしいことに関わりたくはなかったので、特に指摘もせずに、仕事に戻った。
◇◇◇
一週間後、ルイスは約束していたパーティーと合流する。
ダグラスからは、待ち合わせ場所とパーティーの名前、人数しか教わらなかったため、どんなパーティーなのかわからない。
「えっと、ここ……だよね?」
ルイスが指定された待ち合わせ場所付近でキョロキョロとしていると、それっぽい人たちを見かける。
ルイスは、その人たちの側に寄り、おそるおそる尋ねた。
「あの……もしかして、『蒼風の刃』さんたちですか?」
「そうだけど……どうしたの?」
答えてくれたのは、大盾を持った女性。
「ダグラスさんから頼まれて来たんですけど……」
ルイスがそう言うと、全員がぎょっとした。
「あなた、魔物が倒せないっていうルイスくんでしょう!?確かに、子どもだって言うのは聞いてたけど、でも……」
「だ、大丈夫です。倒せますから。駆け出しなのに、僕のこと知ってるんですね」
「そりゃあ、あなたはギルドの有名人だもの。知らない人はいないんじゃない?」
「そんなに有名ですか?僕って」
まったく自覚のないルイスは首をかしげるが、蒼風の刃たちは呆れたようにルイスを見る。ルイスは、ますます訳がわからなかった。
一人の女性が、ため息をつきながらも説明する。
「だって、ルイスくんって、ちゃんと両親がいるんでしょう?それなのに冒険者をやって、しかも魔物を倒せなかったって、いつもあの男の人に泣きついてるじゃない。気づくなってほうが無理があるわ」
「泣きついてなんてーー」
そこまで言ったところで、言葉は出なくなった。思い返してみれば、心当たりしかなかったからだ。
「まぁ、ちゃんと戦力になるなら問題ないわ。ダグラスさんからの紹介なら間違いはないと思うし、行きましょう」
「は、はい」
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