ReFuse〜死に損ないの魔女は理不尽を許さない〜

矢凪來果

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待ち人達の昔話

魔法の鍵

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「そういえば、私たちが入ってきた時は一階の鍵はどうなってたの?」

2階の扉の鍵がかかっていたことが気になったシンは、御飯を食べながら、4人に問いかける。
すると扉の横にかけている、神官服の中にあった鍵を4人が指さした。
「シンの鍵を差し込んでカチャカチャしたら開いた!」
「絵本で悪者がやってたの!」
「見様見真似でやったら、開いてびっくりしたの」

なるほど、キチンとピッキング<不法侵入>していたのか。
「君たちは、本当に逞しくて頼もしいよ」
よく、この家に絞められなかったなと、秘密を知った今は思う。

だが、サラはテーブルから離れて、フヨフヨと扉にかけている鍵に近づく。そして、じいっと顔を近づけてしばらく眺めたあと、やっぱり、と納得したように呟いた。
「これはシンの力だ」
「わた…ぼく?」
思いがけない指名に、シンは食べかけていた肉を落としてしまった。

サラが呆れたような、嬉しいような様子で尻尾で数回鍵をつつくと、鍵がチャリ…と音を立ててゆれる。
「無茶苦茶だなぁ、これ全部、なんでも開く鍵になっている。心当たりは?」

「えー…と」
シンは唸りつつも、落としたお肉を(この机、朝拭いたばっかだし食べられるよね…)と拾いながら、記憶をたどる。
あの鍵を使ったときは、確か子供達の手錠がなかなか開かなくて、『これで開かなかったら許さない!』と脅しのような言葉をかけながら何本目かの鍵を手錠に差し込んだら開いたんだっけ…。
「え、あの神官が持ってたの手錠の鍵だよね?」
シンは目を丸くして周りに問いかけた。

「僕たちの手錠の鍵は一つだけだし、もっと小さかったよ。ひとさしゆびくらい。」
セルが自分の小さな人差し指を見せてくれた。扉にかかっているのはセルの手のひらいっぱいの大きさで、シンはあの日、どうやら2倍近く違うサイズの鍵を押し込んでいたようだ。
「だから、サンが変な顔をしてたのか」
サンがこくりと頷く。
「でも、スペアだと思ってた」
「俺もー」
レナードがうんうんと同意する。

「なるほど…気づかなかった」
これまで自分の周りで起きた現象を改めて頭の中で並べてみたが、どうにも共通点がわからない。
「うーん、自分の力がますますわからない…」思わずシンは頭を抱え込んだ。
すると、セルが、またシンを見つめようとしたので、えずく前に頭の向きを強引に変えさせる。

と、テーブルに戻ってきた、サラがぽつりと話してくれた。
「昔にな、シンの力は『在るべき姿』に戻す能力って聞いた」
「在るべき姿…」
「そう、理不尽を否定する力ともいっていた。ただな…」
サラが首を傾げながら話を続ける
「この家を作ったあいつと、シンが持ってる力は変わってて、サラはずっと見てたけど、説明は難しい…」

無いはずの眉毛が下がったような表情で話すサラの頭を、シンは優しく撫でる。
「サラ、十分なヒントだよ」
「そう?」
「うん、理不尽を否定する…にしては、無理矢理なことも多い気がするけど。前よりはなんかしっくり来る気がする!」

逃げるためには力を早く使いこなしたいが、分からないなら仕方ない。
まだ、不完全な力だと理?も言っていたし、セルがえづかなくなれば、力も見てもらえるだろう。
ひとつづつ分かることから整理して慣れていこう。

シンはサラを撫でていた手を握ったり開いたりしながら、最後のお肉を飲み込んだ。
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