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追放どころじゃなくなった
しおりを挟むふたりきりで、隣にいるのは使えないポーター。
「ええい! 貴様は追放したんだ!! いっちょ前にバディ面するんじゃない! そのマジックバッグから必要なモノを寄越せ!」
「強がりだなぁ、アマミヤくんてば」
「馴れ馴れしく名前呼びをするな!」
「今日はその辺で野営にしましょう」
「シカトかよ!」
使えないポーター・ジュゲムだが、何故か野営にいい場所にだけは目敏い。
アマミヤは『お前はピクニックに来てんのか?』と過去に何度かツッコんでいる。
「アマミヤくん! ご飯できたよ~♪」
使えないポーター・ジュゲムだが、何故か野営にだけは特化して使える。飯も美味い。
アマミヤは『お前職業間違えてないか?』と過去に何度かツッコんでいる。
しかし、彼等は冒険者であり、ここは(まだ見ぬ)ダンジョンがある(筈の)瘴気の濃い森。
ウッカリ〇兵衛ばりにウッカリ予期せぬアクシデントを引き起こすジュゲムといて、なにも起こらないワケがなかった。
野営のテントを手際よく張ったあと、食事に取り掛かったジュゲムの少し離れた場所。
アマミヤは体育座りで不貞腐れていた。
「アマミヤくん、いつまで拗ねてんのさ? ご飯食べよ~よ」
「うるせえ! いつの間にかタメ口ききやがって!!」
「アマミヤくん、空腹は身体に毒だよ!」
「ほっといてくれ! つーかお前は追放したんだっつーの!」
「アマミヤくん……」
(……流石に言い過ぎたか?)
「……」
「ジュゲム?」
声を落とした後、黙ってしまったジュゲムに罪悪感が芽生えたアマミヤが振り向く。
しかし、いつの間にか近付いていたジュゲムは、アマミヤの肩にそっと手をのせた。
「……なら、最初からやり直せばいいじゃないか(ニッコリ)」
「なんで上から目線なんだよ?!」
ジュゲムはやっぱり強メンタルなのであった。
「アマミヤくん! さあさあご飯を!」
「いいからもう俺に構うな!!」
そして強メンタルだけに、とにかくウザい。
空腹より無駄に高い自尊心が勝った拗らせ弱メンタル勇者・アマミヤは、彼から離れるべく歩き出した。
「待ってよアマミヤくん!」
「うるせー! ついてくんな!」
「アマミヤくん!」
「しつこい!」
「アアアアアマミヤく~ん!!」
「うるせえっってんだろー……が……」
「アマミヤくぅぅ~ん!!!!」
「──」
振り向くとジュゲムは、瘴気に侵され変異を遂げたクレマチス……蔓植物系魔物の触手に囚われていた。
「たしゅけてぇぇ~!」
「……ちいっ!!」
アマミヤはそれをぶった斬った。
ぶっちゃけ、魔クレマチスはそんな強い魔物ではない。
それだけに、本体を叩かないとしつこく追い回して弱らせてから捕える。
獲物になるのは傷を負った下級兵士か、迷った女子供くらいである。
「お前……どんだけ鈍臭いんだ……」
よもや冒険者とは思えない。
アマミヤは『お前職業間違えてないか?』ともう何度目になるかわからないツッコみを入れずにはいられなかった。
「流石勇者・アマミヤ様! 一生ついて行きます!!」
「ば、馬鹿言え……魔クレマチス一体如きで……」
「なにを仰います! 命の恩人! よっ大陸一の勇者!! 男前! カッコイイ!」
「うぜぇ」
うっとうしそうな顔をするものの、実は満更でも無い様子。事実、アマミヤの自尊心はこれで大分回復していた。
彼のメンタルは弱いが、褒められると案外簡単に回復する。
要はチョロいのである。
なんやかんやで今回の依頼は無事終了したが、実際は『無事(?)終了した』と言ったところ。
それもこれも、ジュゲムがポンコツぶりを遺憾無く発揮してくれやがった為。
ふたりパーティーで戦えるのはアマミヤだけだと言うのに、罠にかかるわ毒を喰らうわで傷薬やポーション等を使用するのはジュゲムという体たらく。
しかも迷ったせいで倍の時間を要した為、報酬は減額を余儀なくされていた。
「それでも依頼を成功しちゃうんですからね! 流石はアマミヤくん!!」
「お前……褒めれば許されると思ってんな?」
「……えへ♡(※思ってる)」
「思ってんなぁぁぁ!?!?」
(だが、貴様とはコレでお別れだ!)
ギルドで報酬を受け取ったのだ。
そう、ここはもう街。
流石に危険なダンジョン内に置いて行くことは憚られたが、ここならそれなりに安全。ちょっと色をつけて報酬を分け与えれば、当面食うに困ることはないだろう。
「ジュゲム! 貴様とは……ッ」
「ああー! アマミヤぁぁぁぁっ!!」
「ふぐっ?!」
決別の言葉をアマミヤがジュゲムに言い渡そうとしたその時、駆け寄ってきた屈強な男性が彼を抱き締めた。
「──ギネス?!」
この男こそいなくなった仲間のひとり、剣士ギネスであった。
「すまん……!」
事情を細かく聞くために移動した酒場。
道すがらに何度も聞いていた謝罪から始まった、ギネスの話はこうだ。
なんでも森の途中でルイーズの調子が悪そうなのに気付いたのだそう。
『大丈夫』とは言うが、心配で症状を聞くと『なんだか貧血気味で』と言う。もしや月のものだろうか、と尋ねたところ、彼女はハッと息をのんで黙ってしまった。
もしや……と思いしつこく再度、今度は詰問するように尋ねたギネスに対し、言いづらそうにルイーズは小声で告げた。
──「まだ……きてないの」と。
それを聞いたギネスはルイーズを担ぎ、事情どころか『一旦抜ける』という一言すら告げるのも忘れ、一心不乱に麓の町医者まで向かい、走った。
「妊娠三ヶ月だった」
「そ、ソウナンダ……」
「わ~、おめでとう!」
元々お坊ちゃまなだけあって、アマミヤは割と潔癖であったので色事デビューはしていない。
そんな絶賛思春期の少年としては飲み込みにくい色々もあるけれど、ギネスは申し訳なさそうにしながらも『おめでとう』と言っても差し支えない感じで嬉しさが滲み出ているのが幸い。
空気を読まないジュゲムは、最初から気にしていなかったが。
冒険者同士で結ばれた場合婚姻しないことも多いそうで、ルイーズも『別にいい』と言ったようだ。
ギネスはそんな彼女を口説き落とし、ちゃんと婚姻もしたらしい。
心配症なギネスがここには連れて来なかったものの、ルイーズの体調も問題ないらしかった。
安堵したアマミヤは、改めてギネスとルイーズの婚姻と懐妊を祝って乾杯した。
「じゃあ頑張って稼がなきゃだな!」
「そそれなんだが…………すまんッ!!」
「えっ」
──ギネスは冒険者を辞めるつもりだそう。
生活の安定、滅法大事。
ギネスはいいパパになりそうである。(※他人事)
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