1 / 5
一話 婚約解消
しおりを挟む
「エシャロット。君には申し訳なく思うが、婚約を解消したい」
「はい...?」
それは、本当に唐突な申し出でした。婚約者である、エドワード=シーロード様との楽しみにしていた食事の席で、まるで宝石の様に美しい料理を口に運びながら、二人っきりの時間の幸せに浸っていたその時、いきなり、エドワード様が急に、険しい表情になったかと思うと唐突にそう、言葉を紡がれたのでした。
「本当にすまない。君のことを想う気持ちは本物だし、今でも君のことを愛している! 出来ることなら私が君を幸せにしてあげたい! でも...出来ないんだ」
エドワード様は大変悲しそうな顔で、声で私に謝罪の言葉を告げます。でも......
笑っているんです。エドワード様の目の奥は。上がっているんです。エドワード様の口角は。必死に笑いを堪え肩を震わせているように、そう見えてしまうのはわたくしがおかしいのでしょうか。
「では......どうして......?」
「私の幼馴染の、アクアはわかるかい......?」
理由を尋ねると、エドワード様が口にしたのは、この場にはいない、彼の幼馴染の女性の名前でした。わたくしは、彼女のことを良く知っています。彼女とは10年来の親友ですから。そのアクアがエドワード様とわたくしの婚約を解消することとなんの関係があるのでしょうか。そう思い、わたくしは言葉を続けます。
「はい。アクア......アクア嬢とは多少、交友がありますので......彼女がどうかなさいましたか?」
「実は、やっぱり、彼女のことが愛おしくて仕方がないんだ! 彼女の透き通るように、天使の如き白い肌が! 彼女の美しく澄んだ、海のように蒼い瞳が! 彼女の、絹糸のように繊細で、美しい髪が! その全てが、私には愛おしく、この世の全ての様に思えてしまうんだ!」
「はい......?」
思わず、そう口にしてしまいました。確かにアクアは、贔屓目に見なくても整った容姿をしているとは思いますが......
「だから! 彼女と婚姻を結びたい。本当に申し訳ないが、君との婚約は......」
「はい。わかりました。構いません」
そうでしたわね。エドワード様、いいえ、エドワードは初めからこんな人でした。直ぐに他の女性に色目を使っては何度も浮気を繰り返し、その度に甘い言葉を囁いてはなかったことにする。それが彼、エドワード=シーロードという男性でした。でも......
「そうか! わかってくれるかい! エシャロット!」
「はい。ですが、エドワード様? 彼女と婚姻を結びたいとおっしゃいますが、彼女の合意はとってあるんですか? この場には見えないようですが......」
「あぁ。それは用事があるとかなんとか。合意はとっていないが、私の求婚を断る道理はないだろう。それに私と彼女は幼馴染だしな」
あぁ......成程。どうやら、エドワードはアクアのことをあまり良く知らないみたいですね。ただ『幼馴染』であるだけですね。
彼女は恐らく、エドワードに見向きもしないでしょうが......自信満々のところに水を差すのも悪いですし、そこまで仰るなら見物しましょうか。
「そうですか。では、お幸せに」
そうしてわたくしは婚約者と、いいえ、元婚約者との最後のお食事を楽しみました。
「はい...?」
それは、本当に唐突な申し出でした。婚約者である、エドワード=シーロード様との楽しみにしていた食事の席で、まるで宝石の様に美しい料理を口に運びながら、二人っきりの時間の幸せに浸っていたその時、いきなり、エドワード様が急に、険しい表情になったかと思うと唐突にそう、言葉を紡がれたのでした。
「本当にすまない。君のことを想う気持ちは本物だし、今でも君のことを愛している! 出来ることなら私が君を幸せにしてあげたい! でも...出来ないんだ」
エドワード様は大変悲しそうな顔で、声で私に謝罪の言葉を告げます。でも......
笑っているんです。エドワード様の目の奥は。上がっているんです。エドワード様の口角は。必死に笑いを堪え肩を震わせているように、そう見えてしまうのはわたくしがおかしいのでしょうか。
「では......どうして......?」
「私の幼馴染の、アクアはわかるかい......?」
理由を尋ねると、エドワード様が口にしたのは、この場にはいない、彼の幼馴染の女性の名前でした。わたくしは、彼女のことを良く知っています。彼女とは10年来の親友ですから。そのアクアがエドワード様とわたくしの婚約を解消することとなんの関係があるのでしょうか。そう思い、わたくしは言葉を続けます。
「はい。アクア......アクア嬢とは多少、交友がありますので......彼女がどうかなさいましたか?」
「実は、やっぱり、彼女のことが愛おしくて仕方がないんだ! 彼女の透き通るように、天使の如き白い肌が! 彼女の美しく澄んだ、海のように蒼い瞳が! 彼女の、絹糸のように繊細で、美しい髪が! その全てが、私には愛おしく、この世の全ての様に思えてしまうんだ!」
「はい......?」
思わず、そう口にしてしまいました。確かにアクアは、贔屓目に見なくても整った容姿をしているとは思いますが......
「だから! 彼女と婚姻を結びたい。本当に申し訳ないが、君との婚約は......」
「はい。わかりました。構いません」
そうでしたわね。エドワード様、いいえ、エドワードは初めからこんな人でした。直ぐに他の女性に色目を使っては何度も浮気を繰り返し、その度に甘い言葉を囁いてはなかったことにする。それが彼、エドワード=シーロードという男性でした。でも......
「そうか! わかってくれるかい! エシャロット!」
「はい。ですが、エドワード様? 彼女と婚姻を結びたいとおっしゃいますが、彼女の合意はとってあるんですか? この場には見えないようですが......」
「あぁ。それは用事があるとかなんとか。合意はとっていないが、私の求婚を断る道理はないだろう。それに私と彼女は幼馴染だしな」
あぁ......成程。どうやら、エドワードはアクアのことをあまり良く知らないみたいですね。ただ『幼馴染』であるだけですね。
彼女は恐らく、エドワードに見向きもしないでしょうが......自信満々のところに水を差すのも悪いですし、そこまで仰るなら見物しましょうか。
「そうですか。では、お幸せに」
そうしてわたくしは婚約者と、いいえ、元婚約者との最後のお食事を楽しみました。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
あなた方の愛が「真実の愛」だと、証明してください
こじまき
恋愛
【全3話】公爵令嬢ツェツィーリアは、婚約者である公爵令息レオポルドから「真実の愛を見つけたから婚約破棄してほしい」と言われてしまう。「そう言われては、私は身を引くしかありませんわね。ただし最低限の礼儀として、あなた方の愛が本当に真実の愛だと証明していただけますか?」
それは本当に真実の愛なのかしら?
月樹《つき》
恋愛
公爵家の一人娘マルガリータと王太子エドワードは運命の出会いで結ばれた二人だった。
様々な人々の反対を押し切って、やっと婚約者になれた二人。
この愛こそが【真実の愛】だと信じて疑わなかった。
でも少しずつ自分から離れていくエドワード様…。
婚約してから10年の月日が経ち、もうすぐ結婚というのに、いつの間にか
2人の間には距離が出来ていて…
この作品は他サイトにも投稿しております。
あなたの思い通りにはならない
木蓮
恋愛
自分を憎む婚約者との婚約解消を望んでいるシンシアは、婚約者が彼が理想とする女性像を形にしたような男爵令嬢と惹かれあっていることを知り2人の仲を応援する。
しかし、男爵令嬢を愛しながらもシンシアに執着する身勝手な婚約者に我慢の限界をむかえ、彼を切り捨てることにした。
*後半のざまあ部分に匂わせ程度に薬物を使って人を陥れる描写があります。苦手な方はご注意ください。
あなたは愛を誓えますか?
縁 遊
恋愛
婚約者と結婚する未来を疑ったことなんて今まで無かった。
だけど、結婚式当日まで私と会話しようとしない婚約者に神様の前で愛は誓えないと思ってしまったのです。
皆さんはこんな感じでも結婚されているんでしょうか?
でも、実は婚約者にも愛を囁けない理由があったのです。
これはすれ違い愛の物語です。
婚約破棄は先手を取ってあげますわ
浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。
※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。
更新は飛び飛びになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる