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プロローグ
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「貴女なんて、わたしの子供じゃないわ...!」
そう、何度も言われながら、わたくし__男爵令嬢アリエル=ニュートピアは育てられた。母であるシャロルが他界した直後、父は直ぐに、シャロルという女性と結婚した。彼女にはわたくしより二つ歳下の連れ子が居て、名をミーシャといった。彼女はわたくしの義妹となり、シャロル、ミーシャと父の四人で新たな暮らしをすることになったのだが__そこに、わたくしの幸せはなかった。
「お姉様! このお洋服! 頂きますわね!」
「え...? それは、わたくしの...」
「アリエル。貴女はお姉さんでしょう? ミーシャに譲ってあげなさい」
「でも......」
「うるさいわね。さっさと譲りなさい。貴女なんかわたしの子じゃないのに。この家にいることすら、腹が立つわ。全く、前の奥様は一体、どんな教育をされてたんだか」
「はい......ごめんなさい。ミーシャ」
「ありがとうお姉様!」
こんなふうに、ミーシャはわたくしから何もかもを奪っていった。断ろうとすると、シャロルは亡くなった最愛の母を侮辱した。それが、どうしても聴いていられなくて、わたくしは従うしかなかった。奪っていったのは、勿論、物だけではなくわたくしの、人として、女としての幸せも__
父も、シャロルと結婚してから、人が変わったようになってしまった。かつてはあれほど優しかったというのに、今では、わたくしが邪険に扱われているのを知っていながら、見て見ぬ振り。いや、父は何も変わってないのかもしれない。ただ、その時愛している女性に対してだけ、最大限の愛を注いでいる。ただ、今の彼にとって、わたくしが邪魔だという、ただそれだけ____
そんな、地獄のような毎日をわたくしが送っている中、ミーシャにある縁談の話が舞い込んだ。
相手の男性は、まるで『養豚』と噂されるジャック=バートン侯爵。当然、ミーシャがそんな縁談を受けるはずもないのだが、ミーシャは思いついたように口を開いた。
「そうだ! この縁談、お姉様にお譲りいたしますわ! 今まで、色んなものをお姉様から頂いて、なにかお返しができないかと思っておりましたの! お姉様には幸せになっていただきたいですし...」
「え、そんな、わたくしは......」
「アリエル。優しいミーシャがそう言っている間に、さっさと荷物をまとめなさい! いい? わたし達は貴女が邪魔で仕方がないの。二度と戻ってきては駄目よ。それとも、今、この場で着の身着のまま放り出される方がいいのかしら?」
「わかりました......わたくしが、その縁談をお受けします」
わたくしには、もう反論する気力も残っていなかった。例え、養豚男爵のもとであろうと、この家を離れられるのであれば、それでいい。
そう思い、わたくしは半ば自暴自棄になって、荷物をまとめ、バートン領へ向かった。
バートン邸についたところで、馬車を降りる。
そうして、わたくしは、ジャック侯爵と対面し、息を呑む。
彼の醜い顔を見てではない。彼の、肥え太った腹を見てではない。いや、そんなものは存在しなかった。
「初めまして。よく来てくれたね。ジャック=バートンだ。どうぞよろしく」
噂とは違う、彼の透き通るような肌に瞳に、美しい髪に、整った顔立ちに、見惚れてしまったのだ。
そう、何度も言われながら、わたくし__男爵令嬢アリエル=ニュートピアは育てられた。母であるシャロルが他界した直後、父は直ぐに、シャロルという女性と結婚した。彼女にはわたくしより二つ歳下の連れ子が居て、名をミーシャといった。彼女はわたくしの義妹となり、シャロル、ミーシャと父の四人で新たな暮らしをすることになったのだが__そこに、わたくしの幸せはなかった。
「お姉様! このお洋服! 頂きますわね!」
「え...? それは、わたくしの...」
「アリエル。貴女はお姉さんでしょう? ミーシャに譲ってあげなさい」
「でも......」
「うるさいわね。さっさと譲りなさい。貴女なんかわたしの子じゃないのに。この家にいることすら、腹が立つわ。全く、前の奥様は一体、どんな教育をされてたんだか」
「はい......ごめんなさい。ミーシャ」
「ありがとうお姉様!」
こんなふうに、ミーシャはわたくしから何もかもを奪っていった。断ろうとすると、シャロルは亡くなった最愛の母を侮辱した。それが、どうしても聴いていられなくて、わたくしは従うしかなかった。奪っていったのは、勿論、物だけではなくわたくしの、人として、女としての幸せも__
父も、シャロルと結婚してから、人が変わったようになってしまった。かつてはあれほど優しかったというのに、今では、わたくしが邪険に扱われているのを知っていながら、見て見ぬ振り。いや、父は何も変わってないのかもしれない。ただ、その時愛している女性に対してだけ、最大限の愛を注いでいる。ただ、今の彼にとって、わたくしが邪魔だという、ただそれだけ____
そんな、地獄のような毎日をわたくしが送っている中、ミーシャにある縁談の話が舞い込んだ。
相手の男性は、まるで『養豚』と噂されるジャック=バートン侯爵。当然、ミーシャがそんな縁談を受けるはずもないのだが、ミーシャは思いついたように口を開いた。
「そうだ! この縁談、お姉様にお譲りいたしますわ! 今まで、色んなものをお姉様から頂いて、なにかお返しができないかと思っておりましたの! お姉様には幸せになっていただきたいですし...」
「え、そんな、わたくしは......」
「アリエル。優しいミーシャがそう言っている間に、さっさと荷物をまとめなさい! いい? わたし達は貴女が邪魔で仕方がないの。二度と戻ってきては駄目よ。それとも、今、この場で着の身着のまま放り出される方がいいのかしら?」
「わかりました......わたくしが、その縁談をお受けします」
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