2 / 2
一話 罪悪感
しおりを挟む
「初めまして。よく来てくれたね。ジャック=バートンだ。どうぞよろしく」
目の前に立つジャック=バートンを名乗る男性を前に、わたくしは困惑する。が、相手が名乗ったのなら自分も名乗るべきだろうと思い直し、わたくしは口を開く。
「え? あ、いえ...アリエル=ニュートピアです」
「ふふっ。驚いてるみたいだね。大方、噂との違いに驚いていたようだけど......」
「いえ、あ、はい......その、お噂を鵜呑みにしていたわけではありませんが、わたくしの想像していた殿方とは少々ギャップがございまして......その......ほんとにジャック様なんですか?」
「ははっ。僕が偽物だと思うのかい? まぁいいさ。あの噂は、僕があえて流しているものだからね」
偽物ではないとわかり、少しだけ安堵する。しかし、社交界では、自分の良い噂を流すことはあれど、悪い噂をあえて流すというのは、珍しい。不思議に思い首を傾げるとジャック侯爵は何かを察したように、少年のようなあどけなさが残る表情で微笑んだ。
「容姿だけで、判断してほしくなかったんだ。ほら、君の周りにも居ないかい? 美しいことを鼻にかけて周りを見下しているような人」
そう言われ、ミーシャの顔が思い浮かぶ。ミーシャは可愛らしく、周りからも常にちやほやされていたが、その裏で、殿方や他の令嬢のことを散々酷く言っていた覚えがある。
「僕は、自分の中身、内面を見て評価してほしいんだ。そのために、少しでも容姿で選ぶような令嬢が近寄らないように、敢えて表にはあまり姿を表さず、裏で噂だけを流していたんだ。バートン家の侯爵は豚のように肥えていて見ていられないほど醜いってね」
そう言ってウインクをするジャック侯爵を見て、わたくしは罪悪感に心が飲まれそうになる。わたくしは、自分で彼を選んだわけではい。それどころか、最初はこの縁談をあり得ないものだと思っていたのだ。容姿で選んでしまっていたのは他ならぬ自分自身だ。わたくしは、なんて醜い女なのだろうか。
それでも、ジャック侯爵は笑顔でわたくしを見つめている。その穏やかな表情を見ていると、心が安らぐ。
「よろしく。アリエル」
「はい......ジャック様」
「うーん。アリエルは今から、僕のこと様つけて呼ぶの無しにしよっか。これから婚約者になるんだし、もっと親しくなりたいから」
「え......? あ、ジャックさ......じゃなくて! ジャック......?」
「ふふっ。良く出来ました! あ、僕の両親を紹介するね。ふたりとも、アリエルに会うのをすごく楽しみにしてたから」
そう言われ、わたくしはジャックの後ろを歩き始める。ある部屋の前で立ち止まると、そこには、わたくしの両親より少し若いように思える、夫婦が椅子に座って待っていた。
目の前に立つジャック=バートンを名乗る男性を前に、わたくしは困惑する。が、相手が名乗ったのなら自分も名乗るべきだろうと思い直し、わたくしは口を開く。
「え? あ、いえ...アリエル=ニュートピアです」
「ふふっ。驚いてるみたいだね。大方、噂との違いに驚いていたようだけど......」
「いえ、あ、はい......その、お噂を鵜呑みにしていたわけではありませんが、わたくしの想像していた殿方とは少々ギャップがございまして......その......ほんとにジャック様なんですか?」
「ははっ。僕が偽物だと思うのかい? まぁいいさ。あの噂は、僕があえて流しているものだからね」
偽物ではないとわかり、少しだけ安堵する。しかし、社交界では、自分の良い噂を流すことはあれど、悪い噂をあえて流すというのは、珍しい。不思議に思い首を傾げるとジャック侯爵は何かを察したように、少年のようなあどけなさが残る表情で微笑んだ。
「容姿だけで、判断してほしくなかったんだ。ほら、君の周りにも居ないかい? 美しいことを鼻にかけて周りを見下しているような人」
そう言われ、ミーシャの顔が思い浮かぶ。ミーシャは可愛らしく、周りからも常にちやほやされていたが、その裏で、殿方や他の令嬢のことを散々酷く言っていた覚えがある。
「僕は、自分の中身、内面を見て評価してほしいんだ。そのために、少しでも容姿で選ぶような令嬢が近寄らないように、敢えて表にはあまり姿を表さず、裏で噂だけを流していたんだ。バートン家の侯爵は豚のように肥えていて見ていられないほど醜いってね」
そう言ってウインクをするジャック侯爵を見て、わたくしは罪悪感に心が飲まれそうになる。わたくしは、自分で彼を選んだわけではい。それどころか、最初はこの縁談をあり得ないものだと思っていたのだ。容姿で選んでしまっていたのは他ならぬ自分自身だ。わたくしは、なんて醜い女なのだろうか。
それでも、ジャック侯爵は笑顔でわたくしを見つめている。その穏やかな表情を見ていると、心が安らぐ。
「よろしく。アリエル」
「はい......ジャック様」
「うーん。アリエルは今から、僕のこと様つけて呼ぶの無しにしよっか。これから婚約者になるんだし、もっと親しくなりたいから」
「え......? あ、ジャックさ......じゃなくて! ジャック......?」
「ふふっ。良く出来ました! あ、僕の両親を紹介するね。ふたりとも、アリエルに会うのをすごく楽しみにしてたから」
そう言われ、わたくしはジャックの後ろを歩き始める。ある部屋の前で立ち止まると、そこには、わたくしの両親より少し若いように思える、夫婦が椅子に座って待っていた。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
公爵家の伝統だと思っていたら、冷徹公爵様の溺愛でした
星乃和花
恋愛
(毎日21:30更新ー全8話)
家族にも周囲にもあまり顧みられず、
「私のことなんて、誰もそんなに気にしない」
と思って生きてきたリリアナ。
ある事情から、冷徹と噂されるヴァレントワ公爵家で働くことになった彼女は、
当主エドガーの細やかな気づかいに驚かされる。
温かいお茶、手袋、外出時のエスコート。
好みの食事までさりげなく用意されて――
けれど自己評価の低いリリアナは、それらすべてを
「これが公爵家の伝統……!」
「さすが名門のお作法……!」
と盛大に勘違い。
一方の冷徹公爵様は、そんな彼女にだけ少しずつ甘さをこぼし始めて……?
これは、
“この家の作法”だと思っていたら、
どうやら冷徹公爵様の溺愛だったらしい
やさしくて甘い勘違いラブコメです。
聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!
甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。
唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……
イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在
唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話
中山加恋(20歳)
二十歳でトオルの妻になる
何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛
中山トオル(32歳)
17歳の加恋に一目ぼれ
加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する
加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる
会社では群を抜くほどの超エリートが、
愛してやまない加恋ちゃんに
振り回されたり落ち込まされたり…
そんなイケメンエリートの
ちょっと切なくて笑えるお話
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる