江戸咲く花にて

暁エネル

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玄太の危機

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ここの暮らしにも慣れ お侍さん達にも 受け入れられて来た

そんなある日 とんでもない事がおきた




おいらは いつも通り かまどの後片付けを 水仙として

お侍さん達が入った 残り湯で 体を洗い

お侍さん達の居る 大広間を通り 一番奥にある部屋へ


ここは お侍さん達の居る大広間とは 離れているから とても 落ち着ける場所




(今日も 疲れた・・・ 水仙は まだ 何かをしてたなぁ~ 明日も 頑張ろう・・・)




おいらは 布団に入った








「おい もっと静かに 歩け」


「お前が 押すからだろう」


「おい 静かにしろよ 玄太が起きんだろう」



障子は ゆっくりと開いた


「おい 玄太」


玄太を ゆすって起こす


「誰? まだ 朝じゃないよ」


おいらは 誰かに起こされ 口に 布を詰められた




(何をするんだ 誰だ)




おいらの抵抗も虚しく 手足を持ち上げられ 運ばれた


おいらは か細い灯りを 目にした


そこは お侍さん達の居る 大広間


ほとんどのお侍さんは 眠っていた


「玄太 ここでの役割を 教えてやるよ」


おいらに またがり そう言ったのは 柳田さんだった




(酒くさい・・・ 役割ってなんだ・・・ おいらは もう用済みで もしかして 殺されるのか)




おいらは 大きな声を出した


けれども おいらの口には 布が加えられて うまく言葉にならない


「おい 持って来たか」


「柳田 持って来た・・・ 早くやろうぜ」


「そう 焦るなよ・・・ あとあと 使い物にならなくなってもいいのかよ こういうのは 始めが肝心なんだよ始めが」


柳田さんは おいらの帯をほどき 着ていた着物を パンと手ではじいた




(柳田さんは 何をするんだ)




「おい 暴れねぇ~様に 押さえとけ」


柳田さんの言葉に おいらの腕は 押さえられ 柳田さんは おいらの足を 持ち上げ


次の瞬間 おいらに痛みが 走った


おいらは 大きな声をあげるも 柳田さんの手は止まらず 

より どんどん おいらの中へと 入って来た



(嫌だ・・・ 痛い・・・ やめて・・・)



「こんなもんでいいだろう」


そう言って 柳田さんの手が おいらから 離れた




(いったい 何だったんだ・・・)




おいらは これで解放されるのだと思った 


柳田さんは 着ていた物を脱ぎ また おいらの足を持ち上げた 瞬間

おいらは 痛みと共に 気が遠くった



「おい 玄太の様子が おかしいぞ」


「そんな事 言ったって・・・ 止まらねぇ~よ」


「次 俺だからな」










「玄太 遅いなぁ~ いつもなら 起きて来るのに・・・」


私は 野菜を切り終え 玄太の寝ている部屋へ


障子が 開いていて 布団も 乱れていた




(玄太が 布団をたたまないなんて おかしい)




私は 嫌な予感がして お侍さん達の居る 大広間へ


「玄太」


私は 大きな声を出し 玄太の口に加えられている 布を取り 玄太をゆすった


「玄太 玄太」


玄太は ゆっくりと目を開け また 目を閉じた


私は 玄太のはだけた着物を 元へと戻た




(なんて事だ・・・ 私が もう少し 玄太に注意していれば・・・)




「なんだよ・・・ うるせーなぁ~」


柳田さんが 起きてこっちを向いた


「これはいったい どういう事なんですか」


私は 柳田さんに向かって 大きな声を出した


「なぁ~に 玄太に ここでの役割を 教えてやったんだよ・・・ もっと 早くするべきだったんだけどなぁ~ おかげで 溜まってた分 出せてスッキリだ」


私は 頭に来て 大広間で寝て居る みんなに聞こえる様に 大きな声を出した


「玄太が ここへ来たのは あなた達のうっぷんを晴らす為ではないです 私の手伝いをしてくれる為 玄太にこんな・・・ 私は 玄太が 元通りに回復するまで あなた達の面倒は一切みません そのつもりでいて下さい」


私は 玄太の腕を肩に乗せ 玄太を背負って 大広間を出た


私の 大きな声に 何人ものお侍さん達が起きていた




(どうしよう・・・ 玄太が ここを出て行きたいと言ったら・・・ こんな事をされて・・・ 体もそうだけど 心は相当 傷ついている)





私は 玄太を運び 布団の上へ


「玄太 私の声が聞こえますか?」


玄太は また ゆっくりと目を開けた


「玄太 お水を持って来ます 玄太は ゆっくりと休んでいて下さい」


私は 玄太の部屋を出た




(おいら・・・ 生きてる・・・ どこも 動かせないけど おいらは 生きてる)




私は かまどへ 切った野菜をそのままに 布を取り 煮沸消毒した




(玄太は 起き上がれない・・・ 布を 吸わせて 口元へ持っていくしかない)




私は お侍さん達に 話しかけられても 答えず 玄太の所へ急いだ


「玄太 のどが かわいたでしょう」


私は そう言って 玄太を少し起こし 布を 玄太の口元へ





(良さそうだ・・・ 玄太が 飲んでる・・・ それにしても たくさん泣いて 私に 助けを求めていたに違いない・・・)




私は 玄太を寝かせ 頭を下げた


「玄太・・・ すまなかった・・・ 私が・・・」


玄太の手が 私の手の上に


「玄太・・・」


私が 顔を上げると 玄太が 何か言っていた


私は 玄太の口元へ 耳を向けた


「おいらは 生きてるから 大丈夫」


その言葉を 聞いた瞬間 私の目からは 涙があふれてきた




(玄太 本当に すまない・・・ 私は 出来る限りの事するよ)




玄太は 目を閉じて 眠ってしまった




(玄太 ゆっくり休んでいて下さい)









私は 玄太の部屋を出て かしらの壮志郎さんの部屋へ



「失礼します」


そう言って 障子を明け 壮志郎さんの前へ


「どうしましたか・・・ あの者達が 騒がしい様ですが・・・」


「はい 昨夜 玄太が お侍さん達に 襲われました・・・ 私は 玄太が回復するまで 何もしないつもりです」


「そうだったのですか・・・ それで 今 玄太は・・・」


「眠っています」


「そうですか・・・ 水仙 すまない・・・ 玄太に 私からも 頭を下げていたと 伝えて下さい・・・ きっと玄太は 無理やりされたのでしょう」


「はい 布を口元へ 押し込まれていました」


「はぁ~ 水仙 すまない・・・ 私も あの者達に強くは言えない・・・ 同じ様な事を 私も 水仙にしている」


「壮志郎さん それは 違います」


「水仙・・・ ありがとう・・・ もうすぐ 萬斎寺に居る 雪菜(ゆきな)に会える それまで みなの者を頼む」


壮志郎さんは また 私に 頭を下げた 




(雪菜・・・ 雪菜に会える)




私は その名前を聞いて 一瞬にして 雪菜の笑った顔を 思い出していた




(いけない・・・ 今は 玄太の事を・・・)





「玄太が 良くなるまで あの者達は 私に任せて・・・ 水仙は 玄太を 頼みます」


「いいのですか?」


「あぁ~ 私しか あの者達をどうこう 出来ないだろう それに あの者達よりは 美味しくできる 水仙には 負けてしまうけど」


そう言って 壮志郎さんは 笑った









おいらは 目を覚まし 手を動かしてみた



(さっきよりも 手は動く だけど 痛い・・・ どこが痛いのか 分からないくらい・・・ おいらは どうしたんだ・・・ お侍達に 何をされた・・・ 油のニオイが 確かにした それから・・・ おいら・・・ 信じたくないけど まさかね・・・ そんな事あるはずがない おいらの勘違いだ・・・ だけど この痛みは いや 考えない やめよう 最悪な事を考えるのは・・・ やめよう)









私は お侍さん達の事は 放っておいて 玄太のおむすびを握った




(玄太は もう 起きているかなぁ~)




私は 玄太の部屋へ


(つづく)


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