江戸咲く花にて

暁エネル

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お侍②

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大きな声が聞こえ おいらは 思わず 水仙の後ろへ


「お~い 水仙 けが人 頼む」


お侍達の姿は まだ 見えないのに 凄い 迫力に おいらは 水仙の袖を掴んでいた


「玄太 大丈夫です・・・ 今 お侍達は 井戸で汚れを 落としています 私達は こちらから行きましょう」



水仙は 廊下を通り さっきの部屋へ

すでに 腕から 血を流している人 足を 抱えている人が居た


「玄太は 腕の人を・・・」


「分かった」


おいらは 腕をけがしてる人の方を見た


「あんた 見ない顔だなぁ~」


顔を ゆがめながら 腕を 押さえた お侍はそう言った


「はい 玄太と言います」


「玄太 頼む」


「はい ちょっと見せて下さい」




(どうしよう・・・ 血が止まらない・・・)




「玄太 どうですか」


水仙が 足の傷の手当を終え おいらの方へ来てくれた


「水仙 どうしよう・・・」


「これは 酷いですね 根本さん 今夜は 熱が出るかもしれません 安静にしてて下さい 玄太に 根本さんの世話を任せます いいですね 根本さん」


「あぁ~ 水仙に任せるよ 玄太 よろしく頼む」



おいらは 根本さんに 軽く 頭を下げられた


「谷口さんも 安静ですよ」


水仙は 少し大きな声で 足を手当した人に そう言った


「水仙には 誰も 逆らえないよ」


そう言って 谷口さんも根本さんも 笑っていた


水仙は 慣れた手つきで 素早く 布を巻き付けた


「玄太 しばらく 根本さんの腕を 押さえていて下さい」


おいらは 水仙に言われた通りに 押さえた




障子が 勢いよく 開いた


「居ないと思ったら ここに居たのか」


部屋に居る みんなの顔が同時に 声のする方へと向いた


「柳田さん なんです? ここは けが人を手当をする場所です 柳田さんも どこか けがをしているのですか それとも お手伝いに来てくれたんですか」


水仙が 強い口調で そう言った


「なんだよ・・・ ずいぶんと粋がってるじゃねぇ~か 水仙」


柳田さんと言う人も 水仙に負けずに言っていた





(この人 どっかで・・・)





おいらは 柳田さんと言う人の顔を どこかで見ていた 




(どこだ どこで会った・・・ 確かに 見覚えのある顔だ・・・)




「あっ」


おいらは 思い出し 思わず声を出し 口を手で押さえた




(思い出した・・・ 稲荷神社で お侍達に囲まれて おいらが見た お侍・・・ この人が 慎一郎と間違えて おいらをここへ・・・)




柳田さんと言う人は おいらの顔を 見ている




(おいらが 間違って連れて来た事 言った方がいいのか・・・ そうしたら 慎一郎が今度 危ない目にあう それは ダメだ・・・ おいらも 殺されてしまうかもしれない)




「新入り・・・ ここでの 役割を教えてやるよ そいつらは いいから 来い」


柳田さんが おいらに そう言った


すかさず 水仙が 答えた



「柳田さん けが人を ほおっておける訳がないでしょう そう言う事を言う 柳田さんには 手当をしませんよ」


水仙は また 強い口調で そう言った


柳田さんは 顔をしかめた



「水仙 いい気になるなよ・・・ 今日は けが人が居た事で 勘弁してやる・・・ だが 息抜きは させてもらうからなぁ~」


そう言って 柳田さんは 障子を思い切り閉めた




「さぁ~ 私は 根本さんと谷口さんの ご飯を持ってきます 玄太は ここに居て下さい」



そう言って 水仙は 部屋を出て行った



「玄太・・・ びっくりしたろう・・・」



そう言ったのは 足をけがした 谷口さん



「柳田は 腕が立つ・・・ かしら程ではないが みんなを助けたりもして・・・ うまく言えないが 責任を背負わせて居るんだ だから ここでは アイツの力になってやってほしい」



「こんな けがまでして する事なんですか?」


おいらは 根本さんの腕を押さえながら そう言った


「俺らみたいな ならず者を 壮志郎さんが世話してくれて・・・ 好き勝手に飲んで 寝られる場所を作ってくれた・・・ 本当に 俺らは 感謝しているんだ・・・」



根本さんも おいらを見て うなずいた






障子が 静かに開いた



「かしら」


そう言って 根本さんと谷口さんは 姿勢をただし座り直した


「あっ いいですよ そのままで・・・ 楽にして下さい」


優しい口調で そう言った




(この人が かしらの壮志郎さん 髪の毛が長く 軽く後ろで結んでいる・・・ とても 優しいそうで 整った顔をしている)



おいらは 目が離せなくなった



「あなたが 水仙が言っていた 玄太ですね」



壮志郎さんは おいらを 真っ直ぐ見た



「あっ はい 清水玄太です」



おいらは 頭を下げた



「私は ここで かしらをしています 小泉壮志郎と申します 玄太 ここでしばらくの間 水仙のお手伝いをして下さい 突然 ここに連れて来られて さぞ 怖い思いをしたと思います けれども 私達には 玄太が必要なんです どうか 私達を助けると思って ここに居て下さい」



そう言って かしらの壮志郎さんを始め 根本さんや谷口さんが 揃って頭を下げていた


おいらは どうしたらいいのか 分からず ただ あたふたしていたら 障子が開いた




「壮志郎さん 挨拶は済みましたか」


そう言って 水仙が 根本さんと谷口さんの前に ご飯を置いた


「水仙 いつもすまない」


壮志郎さんは 優しく水仙に言った


「いいえ これからは 玄太が居ます」


水仙は おいらを見て 笑った


「壮志郎さん 今夜 根本さんは 体調を崩すかもしれません 玄太に 居てもらってもいいですよね」


水仙の言葉に 壮志郎さんが答えた


「玄太 私の大切な仲間を よろしくお願いいたします」


また 壮志郎さんに 頭を下げられた


「あっ はい おいらで良ければ お手伝いします」



「じゃ~ 私は 布団を持って来ます 壮志郎さんは もう少し待っていて下さい」



「あぁ~ 私の事は 後回しで構わない」


「玄太は ここに居て下さい 根本さんが いつ体調を崩しても おかしくないので 私が 戻るまで ここを離れないで下さい」


そう言って 水仙と壮志郎さんは 部屋を出て行った








おいらが 根本さんのご飯を食べる お手伝いをする為 近づくと 



「本当に 水仙は 玄太が来てくれて 凄く喜んでいる」



ぽつりと根本さんが そう言った



おいらは 少し嬉しくなった





水仙は 3人分の布団を持って 戻って来た



「玄太は 真ん中で・・・ 谷口さんは もう大丈夫ですが 根本さんが・・・ あとで オケを持って来ます」


「水仙・・・ おいら 手伝うよ」


おいらが 立ち上がろうとすると 水仙に止められた


「玄太 玄太は 十分 手伝いをしてくれています 玄太が ここに居てくれる事で 私が 自由に動けるのです」


そう言って 水仙は 部屋を出て行った


おいらは 嬉しさをまぎらわす為に 声を出した


「それじゃ~ おいらは 布団を敷くよ」


おいらは 谷口さんに 肩を貸して 立ってもらい


おいらは 3人分の布団を敷いた





水仙の言った通り

根本さんは うなされ 谷口さんにも 手伝ってもらい 

根本さんが 落ち着くまで おいらと谷口さんは 根本さんの看病を続けた



翌朝 おいらが目覚めると 根本さんの熱は下がり 顔色も良くなっていた





ここの暮らしにも慣れ お侍さん達にも 受け入れられて来た そんなある日の事 とんでもない事がおきた



(つづく)



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