江戸咲く花にて

暁エネル

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会合

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おいらが ここへ来て 5年の月日が流れた


おいらの背も 髪も伸び 体力もそれなりにつき

反対に お侍さん達は おとなしくなっていた


お侍さん達は 出払う事も 少なくなり

くつろぐ事が 多くなった





「玄太 どうしよう・・・」


そう言いながら 柳田さんは おいらの部屋へ


柳田さんは 時々 おいらの部屋へやって来て 愚痴を言う

おいらは それを ただ聞いてあげていた





「柳田さん 今日は 何ですか?」


「玄太 大変なんだよ・・・ 聞いてくれよ」


「いつも 聞いてあげてるじゃないですか」


「いつもはどうでもいい話・・・ 今日は どうでもいい話とは 違うんだよ」


柳田さんは ちょっと 困った様な顔をして座った


「いったい どうしたんです?」






(そう言えば・・・ 水仙が 凄く 嬉しそうにして あとでおいらの部屋へ来ると 言っていた・・・ その事と関係があるのかぁ~?)





「玄太・・・ 明日 かしらとスゲー人達との会合に 俺が・・・ かしらは 何を考えているんだか・・・ 俺なんかが 行ってどうするんだ・・・」


「壮志郎さんと二人で・・・」


「そうなんだよ・・・ 会合なんだ 会合・・・ ただの集まりじゃ~ねぇ~ 名前を聞くだけで 怖ろしい 連中ばかりなんだよ・・・」


「でも その会合とやらに 壮志郎さんが 柳田さんを選んだ訳なんでしょう・・・ 柳田さんは 自信を持って胸張って 行けばいいんじゃないですか」


おいらが そう言うと 柳田さんは 目を見開いた


「バカ言っちゃ~いけねぇ~よ・・・ 玄太は 何も知らねぇ~から そんな事が言えんだよ・・・ かしらだって・・・ 俺は 恐れ多くて まともに話が 出来ねぇ~のに 会った事なんかねぇ~ 名前が 有名人ばっかの所へ 放り込まれる 俺の気持ち・・・ 玄太には 分かんねぇ~よ」


そう言って 柳田さんは おいらに 背中を向けた


「あれ~ 柳田さん 今さら 小心者ぶっても ぜんぜん効果ないですよ」


おいらは そう言って笑うと 柳田さんは おいらの方を向いた


「言ってろよ・・・」


柳田さんは ふてくされた顔に おいらは また 笑った






(柳田さんが こんなに 真剣に・・・ よっぽど 困ってるのか・・・ けど・・・ いつもの柳田さんなら なんの問題もないと思うんだけど・・・)






「なぁ~ 玄太・・・ かしらは 何で 俺なんかを選んだんだと思う?」


柳田さんは ポツリと そう言った


「おいらが 壮志郎さんだとしても・・・ 柳田さんを選ぶと思う」


「何でだよ・・・」


柳田さんは 驚いた様子で おいらを見た


「柳田さんは 口がうまいし・・・ みんなをまとめる力もある・・・ 何より 柳田さん 強いし もし 切り合いになっても かしらと同等に 戦える」


おいらは 言い切った


柳田さんは 何やら 考えている様子だった





(本当の事を 言ったんだけど・・・ ウソ臭かったかなぁ~ 壮志郎さんも おいらと同じ様な 考えだと思うんだけどなぁ~)







そこへ 水仙が おいらの部屋へ


「玄太 入るよ」


水仙と柳田さんは 目を合わせた


「また 柳田さんは 玄太に 愚痴をこぼしに来たんですか・・・ 玄太は いい迷惑なんですよ」


「そんな事ないよ・・・ 柳田さん また いつでも来てよ」


おいら 慌てて 柳田さんに そう言った


「あっ ちょうど良かった 柳田さん 壮志郎さんが 呼んでましたよ」


「かしらが・・・」


水仙の言葉に 柳田さんは 慌てておいらの部屋を 出て行った





「玄太も 人がいい・・・」


「柳田さんも 大変みたいだね・・・ 壮志郎さんと明日 会合に行くんだって・・・」


「はい 私も そう聞いてます」


水仙の様子が いつもと違っていた





「玄太・・・」

水仙は おいらの前に座った


「どうしたの 改まって・・・」


いつもの 水仙なら あぐらをかき 座る けれども おいらの前に 正座した


おいらも 水仙に習って 正座をした





「玄太・・・ 壮志郎さんが・・・」


水仙が 顔を上げると 水仙の目から 涙がこぼれ落ちていた


「水仙 どうしたんの?」


「壮志郎さんに 何かあったの?」


水仙は 首を振っていた






(あれ・・・ 今 柳田さんが 壮志郎さんに呼ばれて行った・・・ えっ どういう事・・・)





水仙は 涙を袖でふき 話し始めた


「玄太・・・ やっと 帰れるんだよ・・・ 雪菜の所へ・・・」


そう言って 水仙の目から また 涙がこぼれ落ちた





(あれ・・・ 雪菜って 誰だっけ・・・ 前に聞いた様な・・・ 帰る・・・ そうだ・・・ 思い出した 水仙が 育った場所 お寺だって言ってた お寺の名前は 忘れたけど 水仙が 帰りたかった場所 水仙は やっと 帰れるんだ・・・ 前にも 帰るって話があったけど そんな雰囲気じゃ~なかったし 今は あの時に比べて かなり落ち着いてる・・・ 今度こそ 本当に 水仙は 帰れるんだ・・・)






おいらは 水仙が 落ち着くまで待った


「玄太・・・ ごめん・・・」


「水仙 ゆっくりでいいから・・・」


「うん」


水仙は 鼻をすすり 何度も 涙をふいた







(水仙・・・ 嬉しそうだ 泣いてるけど・・・ 嬉しいんだ・・・ 良かった 本当に)







「玄太・・・ 玄太も 一緒だよ・・・」


そう言って 水仙は 顔を上げた


「えっ おいらも」


「うん 玄太も・・・ 明日 壮志郎さんと柳田さんを 送る出したあと・・・ 私と玄太は 早カゴで・・・」


「えっ おいら カゴなんか 乗った事ないよ・・・」


おいらが そう言うと 水仙は笑って こう言った


「大丈夫ですよ 玄太・・・ 玄太はただ カゴに乗るだけでいいんです 道のりは長いです 明日は おむすびを持って 行きましょう・・・ 玄太 今日のうちに 荷物をまとめて置いて下さいね」


水仙は 笑顔でそう言った

  
「おいらの荷物は そんなにないけど 水仙・・・ おいらが行ってもいいの?」


「はい・・・ ここに残っても 玄太は もうする事がないので・・・ 壮志郎さんも そうして下さいって」


「じゃ~ここは どうなちゃうの?」


「分からないけど・・・ 明日の会合で どうなるのか決まるんじゃないかなぁ~ どっちにしろ 私と玄太には 関係がないんだよ・・・ それに 玄太・・・ 雪菜に 会ってほしい」


「どうして・・・」


「雪菜は 私の大事な人だから・・・」


水仙の瞳が キラキラとしていた





おいらは 柳田さんが また 愚痴をこぼしに来ると思い 待っていた

けれども 柳田さんは おいらの所へは来なかった






(柳田さんとも お侍さん達とも 明日で お別れだ・・・ みんなには 良くしてもらった 明日 ちゃんとお礼を言わないと・・・)




おいらは 眠りについた


(つづく)



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