君への想い

暁エネル

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見知らぬ駅

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俺は何とか片岡の葬儀へ行く事が出来た


片岡の笑った優しい笑顔の写真に 俺はまた涙がこぼれていた




(片岡 また一緒にあの旅館に泊まるんじゃなかったのか・・・ 今度は風呂入るって言ってただろう・・・ あぁ~ダメだ・・・ 片岡に言いたかった事が こんなにもたくさんあったのに・・・)




俺はお焼香を済ませた




片岡の家族に頭を下げた時 何かを俺に言おうとしていた母親に父親が止めていた


何を俺に伝えようとしていたのかは 今の俺にはわからず 俺は同僚とその場を去った




「溝口 大丈夫な訳がない事はわかっているんだが・・・」


「あぁ~正直スゲ~キツイよ」


「そうだよなぁ~ なんたって初めてだよなぁ~ あんなになついていたの・・・ 正直うらやましかったんだよなぁ~俺」


「佐々木・・・」


俺は佐々木の言葉にまた涙が出ていた




有給休暇を使い 会社をしばらく休む事にした


俺は自分でも思っていた以上にダメージがあり


俺の事を心配してくれていた 会社の人達の優しい言葉に 俺はまた肩を落としていた




(俺はこのままもう立ち直れないのかもしれない・・・)




俺はそう思いながら あてもなく電車に乗り 足の向くまま知らない駅へと降りていた




(俺はいったいどこへ行きたいんだ・・・)




俺はそう思いながら どっぷりと日が暮れた 夜の街へとやって来た


あたりは静まり返り 駅から続く商店街は皆 シャッターが下りていた




(昼間は賑やかなんだろうなぁ~)




俺はそう思いながら商店街を抜けると 真っ暗な中に小さな灯りが見えた




(あんな遠くに何があるんだ?)




俺はその灯りに導かれる様に歩いていた





(メトロポリタン・・・)




光る灯りにそう書かれていた




(ここは何だ?)




1階はシャッターが閉まっていて その脇に細い階段があり 俺は階段を見上げた


とりあえず俺はその階段をあがってみる事にした




(メトロポリタン開店祝い)




ドアの前には開店祝いのお花があった


俺はそのドアをゆっくりと開けた


俺の目に飛び込んで来たのは カウンターに立っていたバーテンダーだった 


モデルの様ないで立ちで グレーの長い髪が背中まであるバーテンダーだった




「いらっしゃいませ お好きな席へお座り下さい」


バーテンダーにそう言われるまでの数秒 俺はそのバーテンダーから目が離せなくなっていた




(お人形かモデルかと勘違いしそうな バーテンダーだなぁ~)




俺はバーテンダーから店内を見渡した


カウンター席に2人掛けの席が4つ とてもこじんまりした落ち着きのある店内だった


BGMには静かなクラッシックが流れいた


俺は2人掛けの席の1番隅の椅子へと向かった


小さなテーブルにだけ照明が当たる様になっていて カウンターがこちらから良く見える様になっていた




(おもしろい・・・ こんな照明の使い方もあるんだ・・・)




俺はお店雰囲気と心地良さに感動していた




グレーの長い髪のバーテンダーが俺の席へ


「いらっしゃいませ メトロポリタンへようこそ」


そう言ってバーテンダーはお辞儀をし 俺の前におつまみを出し膝を付いていた



「あっすいません 俺こういう所初めてで・・・」




(スゲ~ 近くで見るとキレイな顔立ちが凄く良くわかる・・・)




俺はバーテンダーから目が離せなくなっていた


「それはそれは メトロポリタンを選んでいただきまして ありがとうございます」


そう言ってバーテンダーは 俺にまた頭を下げた


グレーの長い髪が揺れ 俺はますますバーテンダーを見入ってしまっていた



「差し支えがなければ ぜひお名前を教えていただけないでしょうか」


「あっ俺は溝口薫って言います」


「ありがとうございます溝口様 当店は今日オープンしたお店になりまして 当店の初めのお客様溝口様に 今座って居るこのお席を溝口様専用の予約席とさせていただきます」


「えっちょっと待って・・・」


俺はカウンター席に座って居る 男性に目を向けた


その男性はコップにビールを注ぎ 俺に向かってそのコップを持ち上げていた


「あぁ~ あれはお客ではありません」


バーテンダーも振り返りそう言った


「予約席にしてもらっても俺 そんなに来られるかわからないし 第一この駅に降りたのも初めてで・・・」


「溝口様は何も気づかいは不要なのです 当店のシステムだとそうご理解下さい」


バーテンダーはそう俺に優しく言ってくれた


「あっありがとう」


俺はふとバーテンダーにそう言っていた


俺に落ち着ける居場所が出来たとそう思ったからだ



「溝口様 何をお召し上がりになりますか?」


「あっ俺こう言うお店も初めてで・・・」


「でしたら 2・3質問させていただいてもよろしいでしょうか」


バーテンダーは俺にいくつかの質問をし また俺に頭を下げカウンターへと戻って行った





(静かでいい店だ・・・)




俺は顔に照明が当たらない事のいい事に 目をつぶり静かに流れるBGMを聞いていた


たまにバーテンダーとカウンター席に座って居る 男性との話もおもしろく聞こえた




「溝口様お待たせしました」


そう言ってバーテンダーは 俺のテーブルにグラスを置いた


それは細長いグラスの中に 底の方は赤くオレンジに黄色へとキレイな3色になっていた


「これは何と言う名前の飲み物ですか?」


「すみません名前は無いのです 溝口様のお顔がすぐれない様に 見受けられましたので 少しでもお力添え出来ればと思いまして・・・ 作ってみました」


「そうでしたか 凄くキレイですね」


「ありがとうございます 溝口様のお口に合えばいいのですが・・・」


「実は凄く落ち込んで・・・ かわいいかった後輩が突然この世から居なくなってしまって・・・」


「そうだったんですか それはお辛かったですね」


「はい でもこのキレイな色を見て このお店に来て良かったと思います ありがとうございます」


「いいえ溝口様 こちらからありがとうございます どうぞごゆっくりなさって下さい 失礼します」


そう言ってバーテンダーは俺に頭を下げた




(この色はまるで片岡と旅館で見た あかね色の空の様だなぁ~)




俺はグラスをながめながらそう思っていた



(つづく)


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