君への想い

暁エネル

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突然の死

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「お母さん」


「何さつき」


お母さんは椅子に座り病室で本を読んでいた


「ごめん レターセット買って来てくれる」


「あら手紙・・・ 手紙を書きたい人が居るの?いったい誰にかしら・・・」


お母さんは笑ってそう言った




入院して3日たち 病室での僕はもう歩き回る事が出来ず 


急速に僕の身体は動かなくなり 起き上がる事がやっと出来るくらいになっていた




(僕の身体もう少しだけ待って・・・ 僕の気持ちを薫さんに伝えたい・・・)




僕はボールペンを持ち書き進めた






(今日で1週間だ・・・ 今日はいくら何でも片岡の姿があるはずだ・・・ 携帯電話にも返信無しの既読も付かねぇ~ 会社へ来てたらとっちめてやる・・・)




俺は片岡の驚いた顔を想像しながらオフィスへと向かった




経理部部長の鈴木部長が 慌てた様子でオフィスの中へ入って来て 営業部長の森本部長の所へ


ただ事ならない様子の鈴木部長に オフィスのみんなが注目していた



「森本 溝口君頼めるか」


「鈴木まさか・・・」


鈴木部長が森本部長にうなづいた


「わかった 佐々木溝口の今日の仕事引き継げ・・・」


「えっ 全部は無理です さすがの俺でも・・・」


「俺が行ける半分よこせ・・・」


そう言って森本部長は佐々木のデスクへ



俺は佐々木と森本部長のやり取りに納得がいかず 立ち上がっていた



「ちょっと待って下さいよ いったい何なんですか」


「溝口君すまないね タクシーを待たせているんだ 私と一緒に来てくれないか・・・」


俺は鈴木部長にそう言われ訳がわからず 同僚の佐々木にカバンを持たされた


「溝口とりあえず行って来い こっちは俺と森本部長で何とかしておいてやるよ」


そう佐々木に言われ 俺はカバンを持たされたまま立っていた


「森本すまない 佐々木君も悪いね」


「鈴木部長大丈夫です 溝口の仕事ぐらい森本部長と俺とでどうとでも出来ますよ」


「言ったなぁ~佐々木」


「溝口この埋め合わせはしてもらうからなぁ~ ビール1杯じゃ~すまねぇ~ぞ覚悟しておけよ」


佐々木は笑ってそう言った


「溝口君急ごう」


「はい」


俺は鈴木部長にそう言ってオフィスを出た





(それにしてもいったい何なんだ・・・ 朝からこんなに慌てて 片岡の顔もまだ見てねぇ~のに・・・ 待てよ鈴木部長が俺に用事? もしかして片岡がらみなのか・・・)




俺は嫌な感じを覚えながら 鈴木部長のあとを追った




鈴木部長が待たせていたタクシーに手をあげた


「手塚総合病院へお願いします」


「鈴木部長 総合病院って・・・」


「溝口君悪いね さつきがね・・・」




(やっぱり片岡がらみだ・・・ 病院?入院して携帯電話を見られなかったのか・・・ よ~し会ったらいろいろとっちめてやる・・・)





「片岡元気なんですよね」


鈴木部長は何も言ってはくれなかった




病院に着くと鈴木部長は正面玄関ではなく ひとけのないドアを開けた


「すいません 片岡です」


受付の人にそう言って 鈴木部長は奥へと進んだ


「鈴木部長ここは・・・」




(何だよここ・・・ まるで・・・)


 


長椅子には男性と女性 学生らしい人が座り 俺を見て立ち上がり頭を下げた


俺は鈴木部長と共に重い扉の向こうへ


「さつき 溝口君が来てくれたよ」


俺の目に飛び込んで来たのは 白い布で覆われていたものだった


「ちょっと鈴木部長 冗談はやめましょうよ」


俺がそう言うと 鈴木部長は顔にかかっていた布を取った


「溝口君 見てやってくれ・・・」


俺は片岡の顔を見た瞬間 その場で倒れてしまった






俺が目を覚ますとそこは病院のベッドの上だった


「溝口君 気が付いたね」


「鈴木部長」


「あぁ~起きなくていいよ 今日はここでゆっくりして居なさい」


「俺が見たのって・・・ 片岡は・・・」


「すまないねぇ~びっくりさせてしまって・・・」


鈴木部長は椅子に座り話をしてくれた


「さつきは小さい頃から身体が弱い子でねぇ~ みんなに心配をかけまいと いつも笑顔でいる優しい子だったよ 学校も休み休みでね さつきの明るい性格も手伝って 小学校の卒業式は友達と先生方が病室へ来てくれたりもして さつきなりに学校生活を楽しんでいたんだ さつきにも社会人として立派に仕事が出来るんだと 自信を持ってほしくて 私がさつきにうちの会社へと採用してくれと周りに頼んだんだ さつきは経理部でとても楽しそうに仕事をしてくれた 実を言うとね 溝口君との旅行は妹がとても反対していたんだよ でもさつきが最後のわがままだからってね 妹を押し切った形になってね 凄くさつきが楽しみにしていたんだよ 溝口君との旅行 妹からさつきが あんなに楽しそうに話をしてくれたの見たのは初めてだと言っていたよ 本当に溝口君との旅行は楽しかったんだね」


「俺は何も・・・」


「さつきが倒れたのは そんな楽しかった旅行から帰って来たその日だった・・・ さつきは元気になってまた あの笑顔が見られると私は思っていたんだけれど 私がお見舞いに行った時 さつきの中では覚悟が出来ていた様だった さつきはまだ23歳だと言うのに・・・ まだこれからいろんな楽しい人生が待っていたと言うのに・・・ さつきは・・・」


鈴木部長は泣き崩れていた


俺の目からも涙がこぼれていた




「鈴木部長 俺が見たのは間違いなく 片岡だったんですね」


「溝口君にはショックだったね」


「俺 片岡が初めてだったんです 身体も大きいし見た目も怖いって良く言われてて 片岡があんなに親しく俺に接してくれて かわいい後輩が出来たと思っていたんです 本当にかわいい・・・」


俺の目からまた涙がこぼれ落ちた


「私も妹夫婦も 溝口君にはとても感謝しているよ さつきがあんなに嬉しそうにしていたのを 目の当たりにしていたからね 本当に最後にいい思い出が出来たと思う・・・」 


鈴木部長は椅子から立ち上がった


「鈴木部長・・・」


「溝口君はここで休んでいてくれ 会社へもしばらく休める様に森本に言ってあるから・・・ 私はこれで失礼するよ」


俺は座ったまま 鈴木部長に頭を下げた




(片岡・・・)




俺は布団で顔を押し付けて泣いた



(つづく)


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