両片想いは気づかれない

羽田京

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一章

入学式

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 県立桜岸東さくらぎしひがし高校。県内では偏差値上位に入っている高校だ。同じ中学校から入学したのは、俺—須田佳祐、片想いの相手—星野美花、俺と美花の共通の友人—宇田うつた奈都なつ、奈都の恋人—浜嵜はまさき勇樹ゆうき。の計4人だ。その内、俺と美花、奈都と勇樹がそれぞれ同じクラスだ。
—このチャンスを必ず生かす。期待と不安と恋心を胸に、入学式に臨む。
 
一年生、総勢287人が体育館に集結する。制服がない学校であるが、女子を中心に制服風の服を着ている生徒が多くいる。美花と奈都も同様だ。中学の時の制服とはまた別の物だ。そんなよそ見をしつつ、全国同様であろう、長い校長等々の話は続く。もっとも、目線のみ動かしているから注意の心配はない。恐らく。そんな感じで話を聞き流すこと数十分、ようやく入学式が終了し、自分たちの教室、1年7組に移動する。しかしまだ美花とは話せそうにもない。時間がない。早く話したい。早く一連の式典などもろもろ終われ。今はいわゆる“ホームルーム”が行われている。担任の岩倉隆司先生が自己紹介もろもろをしている。さて・・・いつ終わるものか。

                   *

 入学式が終わって初めてのホームルームが行われている中、頭の中はいつ終わるかでいっぱいだった。何せ、せっかく同じ学校にいるのにまだ佳祐と話せていないからだ。早く話した過ぎて、担任の話がまったく入ってこない。はぁ・・・話はいつ終わるんだろ。
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