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新しい栽培
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先日の宴会で野崎さんに話を聞き、追加で白菜を植えることに決めた俺は今、軽トラでホームセンターに来ていた。
白菜の苗を見てこようと考えたのだ。
レムネアは家に置いてきた。
例の三人娘と遊ぶ約束をしていたらしい。まあ今は暇な時期だ、いつもいつも俺に付き合わせるのもなんだと思い、今日は別行動としたのである。
「やあ目利きのあんちゃんじゃないか。今日は何の用事だい?」
「ああ、店員さん」
俺が園芸・農業コーナーで色々と眺めていると、このスペースを管理していると言っていた店員さんが声を掛けてきた。
作業着に長靴、少し小太りなこのおばちゃんは、俺の種芋選びを褒めてくれた豪快な人だ。
「白菜の苗を見に来たのですが、見当たらなくて」
「え、白菜の苗? ありゃあもうちょい先じゃないと出さないぞ」
「そうなんですか?」
「今はまだ暑いからな、白菜は8月下旬から9月に掛けてが植えるシーズンだよ」
それは下調べをしていたのだけれども、こういう店なら少し時期がズレてても扱っているかと思っていた。
俺がそういうと、
「ハウス栽培するような作物でもないからね。シーズン以外は売らん売らん」
手をヒラヒラさせて笑う。
その後、苦笑しながら俺の顔を見た。
「なるほど。いくら芋の目利きが凄くても、本当に農作業一年生なんだな。ちょっとホッとしたよ」
「そうですよ初心者です。納得して頂けましたか?」
「したした、安心した」
そもそも種芋の目利きだって、レムネアの魔法の力を借りたものだったわけで。
妙な誤解をされたままだと気が気でなかったので、こうしてちゃんと初心者として認知されるのはホッとする。あーよかった。
「苗、買うつもりだったのかい?」
「初心者ですから、最初はそれが手堅いかと思いまして」
「ふーん」
「なんですか、その含みありげな言い方は」
少し肩を竦めたように見えたおばさんに、俺はジト目を向けた。
割とフレンドリーに接してくる店員さんなので、こっちも態度が自然とラフになってしまう。
話しやすそうという意味では、店員さんの人徳なのかもしれない。
「あんた、職業として農業を営むんだろ? だったら、苗を買ったりしないで自分で苗作りをして早く慣れた方がいいんじゃないかと思ってさ」
「苗作りですかぁ……」
その辺も調べた。
ただ。
「まあ確かに白菜はアブラナ科で害虫も付きやすいしな。少し難しいっちゃー難しいのだけど」
そうなんだよな、結構難しそうだったんだ。
だから日和ってたというのはある。でも……。
「でも、そうか。どうせいずれは種から苗作りしたいわけだから、今回それを始めても同じと言えば同じですかね」
「そうそう。誰でも最初は初めてだってね」
確かに。
店員さんの言葉に背中を押される形で、俺は決心した。
ちゃんと種から育ててみよう。
その方が単純に儲けも多くなるはずだからな。
労働も増えるけど、それは経験値になる。
経験を積みながら儲けが増えるなら、これはもうお得さ極まれりと言えなくない。
お得なのは良いことだ。
「わかりました。種を買って苗作りから始めてみようかと思います」
「よっしゃ。それじゃあたしが、苗作りに便利なモノを見繕ってやるよ!」
こうして俺の初葉物は、苗作りから始めることになったのだった。
◇◆◇◆
その後、他の用事を済ませ、家に帰ってきたのは夕方だ。
軽トラから下ろした荷物を抱えて玄関へと向かうと、新聞紙の上に並べた種芋たちの前にレムネアがしゃがみ込んでいた。
なにをしてるんだろうと思い眺めていると、ブツブツと種芋に話し掛けている。
『種芋さーん、今日もお元気そうでなによりですー』
『私は美津音ちゃんたちと遊んできましたよー』
『とても楽しかったです。それにですね、なんとリッコちゃんが――」
魔法でも使って話し込んでるのかな?
でもあれ、物の声が聞こえるほどの効果は万人に一人って言ってたような。
「なにしてるのレムネア?」
「あ。ケースケさま」
声を掛けると、彼女は立ち上がってこちらを見た。
「種芋さんたちに今日の出来事をお話ししておりました」
「それ、魔法の儀式かなにか?」
「いえ、全くそういうものでなく」
じゃあまたどうして。
俺の頭の中にハテナがいっぱい浮かぶ。
たぶん変な顔をしてしまったのだろう、レムネアはクスクス笑いをしながら続けた。
「美津音ちゃんたちと遊んだ帰りがけ、野崎さんにお聞きしたんですよ。作物をうまく育てる秘訣はなんですかって」
「ほうほう」
興味深い。
「そうしたら野崎さんは『愛情を込めることじゃよ』って」
「……それだけ?」
「はい、それだけです」
うーん、精神論で来たか~。
まあでも確かにレムネアには理屈を捏ねるよりも効果的なのかもしれない。
具体的な技術は俺が担当すればいいわけだしな。
「なので、まずは種芋さんとお友達になるために、おはなしするところから始めたらどうかなと」
「そういうことね」
納得さえしてしまえば、あっさり腑に落ちた。
愛情を注ぐ。
それはひと言で簡単に言えちゃうものだけど、本当にそこまでの心を作るには対象への思い入れが大切だろうと思う。
彼女にとっては話し掛けることが、思い入れをつくるため重要だったに違いない。
心の整え方は人それぞれだからな。
「ところで」
と俺はそこで話題を変えた。
さっきから気になっていたものがある。それは。
「そのバッグ、なんなの?」
彼女が肩から掛けていた少し大きめのバッグだ。
最初、お給料で私物を買ってきたのかなとも思ったのだけれども、それにしちゃ(こういってはなんだけど)薄汚い。
動物の皮を加工して作ったようなバッグだった。
丈夫そうだけど、見た目はお世辞にも良いものと言えない。
「これですか? はい、私のバッグです」
「レムネアの……?」
「覚えていませんか。この世界に私が来た初日、倒れていたという場所でバッグが落ちてないか聞いたことを」
……そんなことあったっけ?
「すまん覚えてないや。えっと、てことはそのバッグは、レムネアの世界のモノってことになる?」
「そうですそうです。リッコちゃんが見つけてくださってました」
なんで? どこで?
話が見えない。
どういうことかと深堀りしていくと、こういうことだった。
バッグは何故か裏山に落ちていて、リッコはそこで拾ったのだという。
年季が入っていて、中を開くこともできない。
警察に届けようかとも思ったが、汚くてただ捨てられているように見えたので、なんとなく家に持ち帰ってしまった。
「開かない?」
「私以外は開けないようになっているんです。魔法のバッグというものですね」
バッグをポンと叩きながら、ふふふと胸を張る。
どこか得意げなレムネアは、ちょっとかわいらしい。
魔法の世界には、魔法の世界なりのセキュリティがあるものなんだな。
「今日は、なんとかしてこのバッグを開けようの会だったようでして」
三人がアレコレ試し諦めてたところにやってきたレムネアが、パカっと開いたそうである。中に入れてあったのは、補填石という魔力を補充するための石とのこと。
「魔力の補充?」
「はい。これは私用にチューニングした、魔力の補填石です。例えばケースケさまがこれを握って祈ると、ケースケさまの中にある魔力が私に補充されます」
「へえ? 俺にも魔力なんてものがあるんだ」
「あると思いますよ、これまでも魔法に反応していますしね。それは魔力が体内に存在する証です」
なら俺も魔法を使えるようになれるのかな。
訊ねてみるがそれはまた別の話だそうで、たぶん無理とのこと。
残念、ちょっとワクワクしてしまった。
「にしても綺麗な石だな。青が深くて夏の空みたいだ」
「よかったらそのまま持っていてください。いざというときに、ケースケさまから魔力を融通して頂けますし」
「いいけど、魔力ってそんな枯渇するようなものなの?」
「うーん。この世界だと、そこまで魔力を酷使することはない気がしますね」
平和だしな。
でもまあ、持っておくか。いざとなったら使えるのは悪くない。
「一個しかないんだ?」
「他はリッコちゃんたち三人に差し上げてしまいました」
なんでまた。
聞いてみると、彼女たちへのお礼だと言う。
リッコ、ナギサ、美津音ちゃん。
三人は、俺たちが地域に馴染むために力を貸してくれた。
彼女たちが喜びそうだったので、ただの綺麗な石として、感謝の気持ちを込めてプレゼントしたとのことだった。
「喜んでた?」
「宝物にします、って、皆さんが」
女の子って綺麗な石とか好きだもんな。
笑顔のレムネアを見てると、今日も三人と楽しく過ごしてきたみたいだし、俺もあの子たちには頭が上がらない。
今度俺もなにかお礼しなきゃ。
「長話になってしまいましたね。ケースケさまの方は、首尾良く行きましたか?」
「俺か。白菜を種から苗まで育てるために必要なものを買ってきたよ」
「種? 確か今日は苗を見に行くと……」
「そのつもりだったんだけどね。遅かれ早かれ種からの苗作りもすることになるんだから、今回やってもいいか、って」
俺がそう頭を掻いていると、レムネアの目が輝きだした。
興奮気味に両手を握りしめて、俺の方を見る。
「いいですね。挑戦というのは『冒険』です! 元冒険者として、私も精一杯手伝わせて頂きます!」
レムネアさん、なんでも冒険と結びつけたがる問題。
俺は思わず微笑ましい気持ちになってしまい、苦笑してしまった。
「頼むよ。この種にも愛情あるひと声を掛けてやってくれ」
「ようこそ白菜の種さん、これからあなたたちのお世話をさせて頂くレムネアです。頑張りますから、すくすく育ってくださいね!」
彼女が種の入った袋に向かって頭を下げる。
「ほら、ケースケさまも。ご挨拶、ご挨拶」
「え?」
うーん。
ちょっと恥ずかしかったので、種にともレムネアにともつかない感じにあやふやな挨拶をする俺。
「よろしくな」
――さて、苗作りだ。
白菜の苗を見てこようと考えたのだ。
レムネアは家に置いてきた。
例の三人娘と遊ぶ約束をしていたらしい。まあ今は暇な時期だ、いつもいつも俺に付き合わせるのもなんだと思い、今日は別行動としたのである。
「やあ目利きのあんちゃんじゃないか。今日は何の用事だい?」
「ああ、店員さん」
俺が園芸・農業コーナーで色々と眺めていると、このスペースを管理していると言っていた店員さんが声を掛けてきた。
作業着に長靴、少し小太りなこのおばちゃんは、俺の種芋選びを褒めてくれた豪快な人だ。
「白菜の苗を見に来たのですが、見当たらなくて」
「え、白菜の苗? ありゃあもうちょい先じゃないと出さないぞ」
「そうなんですか?」
「今はまだ暑いからな、白菜は8月下旬から9月に掛けてが植えるシーズンだよ」
それは下調べをしていたのだけれども、こういう店なら少し時期がズレてても扱っているかと思っていた。
俺がそういうと、
「ハウス栽培するような作物でもないからね。シーズン以外は売らん売らん」
手をヒラヒラさせて笑う。
その後、苦笑しながら俺の顔を見た。
「なるほど。いくら芋の目利きが凄くても、本当に農作業一年生なんだな。ちょっとホッとしたよ」
「そうですよ初心者です。納得して頂けましたか?」
「したした、安心した」
そもそも種芋の目利きだって、レムネアの魔法の力を借りたものだったわけで。
妙な誤解をされたままだと気が気でなかったので、こうしてちゃんと初心者として認知されるのはホッとする。あーよかった。
「苗、買うつもりだったのかい?」
「初心者ですから、最初はそれが手堅いかと思いまして」
「ふーん」
「なんですか、その含みありげな言い方は」
少し肩を竦めたように見えたおばさんに、俺はジト目を向けた。
割とフレンドリーに接してくる店員さんなので、こっちも態度が自然とラフになってしまう。
話しやすそうという意味では、店員さんの人徳なのかもしれない。
「あんた、職業として農業を営むんだろ? だったら、苗を買ったりしないで自分で苗作りをして早く慣れた方がいいんじゃないかと思ってさ」
「苗作りですかぁ……」
その辺も調べた。
ただ。
「まあ確かに白菜はアブラナ科で害虫も付きやすいしな。少し難しいっちゃー難しいのだけど」
そうなんだよな、結構難しそうだったんだ。
だから日和ってたというのはある。でも……。
「でも、そうか。どうせいずれは種から苗作りしたいわけだから、今回それを始めても同じと言えば同じですかね」
「そうそう。誰でも最初は初めてだってね」
確かに。
店員さんの言葉に背中を押される形で、俺は決心した。
ちゃんと種から育ててみよう。
その方が単純に儲けも多くなるはずだからな。
労働も増えるけど、それは経験値になる。
経験を積みながら儲けが増えるなら、これはもうお得さ極まれりと言えなくない。
お得なのは良いことだ。
「わかりました。種を買って苗作りから始めてみようかと思います」
「よっしゃ。それじゃあたしが、苗作りに便利なモノを見繕ってやるよ!」
こうして俺の初葉物は、苗作りから始めることになったのだった。
◇◆◇◆
その後、他の用事を済ませ、家に帰ってきたのは夕方だ。
軽トラから下ろした荷物を抱えて玄関へと向かうと、新聞紙の上に並べた種芋たちの前にレムネアがしゃがみ込んでいた。
なにをしてるんだろうと思い眺めていると、ブツブツと種芋に話し掛けている。
『種芋さーん、今日もお元気そうでなによりですー』
『私は美津音ちゃんたちと遊んできましたよー』
『とても楽しかったです。それにですね、なんとリッコちゃんが――」
魔法でも使って話し込んでるのかな?
でもあれ、物の声が聞こえるほどの効果は万人に一人って言ってたような。
「なにしてるのレムネア?」
「あ。ケースケさま」
声を掛けると、彼女は立ち上がってこちらを見た。
「種芋さんたちに今日の出来事をお話ししておりました」
「それ、魔法の儀式かなにか?」
「いえ、全くそういうものでなく」
じゃあまたどうして。
俺の頭の中にハテナがいっぱい浮かぶ。
たぶん変な顔をしてしまったのだろう、レムネアはクスクス笑いをしながら続けた。
「美津音ちゃんたちと遊んだ帰りがけ、野崎さんにお聞きしたんですよ。作物をうまく育てる秘訣はなんですかって」
「ほうほう」
興味深い。
「そうしたら野崎さんは『愛情を込めることじゃよ』って」
「……それだけ?」
「はい、それだけです」
うーん、精神論で来たか~。
まあでも確かにレムネアには理屈を捏ねるよりも効果的なのかもしれない。
具体的な技術は俺が担当すればいいわけだしな。
「なので、まずは種芋さんとお友達になるために、おはなしするところから始めたらどうかなと」
「そういうことね」
納得さえしてしまえば、あっさり腑に落ちた。
愛情を注ぐ。
それはひと言で簡単に言えちゃうものだけど、本当にそこまでの心を作るには対象への思い入れが大切だろうと思う。
彼女にとっては話し掛けることが、思い入れをつくるため重要だったに違いない。
心の整え方は人それぞれだからな。
「ところで」
と俺はそこで話題を変えた。
さっきから気になっていたものがある。それは。
「そのバッグ、なんなの?」
彼女が肩から掛けていた少し大きめのバッグだ。
最初、お給料で私物を買ってきたのかなとも思ったのだけれども、それにしちゃ(こういってはなんだけど)薄汚い。
動物の皮を加工して作ったようなバッグだった。
丈夫そうだけど、見た目はお世辞にも良いものと言えない。
「これですか? はい、私のバッグです」
「レムネアの……?」
「覚えていませんか。この世界に私が来た初日、倒れていたという場所でバッグが落ちてないか聞いたことを」
……そんなことあったっけ?
「すまん覚えてないや。えっと、てことはそのバッグは、レムネアの世界のモノってことになる?」
「そうですそうです。リッコちゃんが見つけてくださってました」
なんで? どこで?
話が見えない。
どういうことかと深堀りしていくと、こういうことだった。
バッグは何故か裏山に落ちていて、リッコはそこで拾ったのだという。
年季が入っていて、中を開くこともできない。
警察に届けようかとも思ったが、汚くてただ捨てられているように見えたので、なんとなく家に持ち帰ってしまった。
「開かない?」
「私以外は開けないようになっているんです。魔法のバッグというものですね」
バッグをポンと叩きながら、ふふふと胸を張る。
どこか得意げなレムネアは、ちょっとかわいらしい。
魔法の世界には、魔法の世界なりのセキュリティがあるものなんだな。
「今日は、なんとかしてこのバッグを開けようの会だったようでして」
三人がアレコレ試し諦めてたところにやってきたレムネアが、パカっと開いたそうである。中に入れてあったのは、補填石という魔力を補充するための石とのこと。
「魔力の補充?」
「はい。これは私用にチューニングした、魔力の補填石です。例えばケースケさまがこれを握って祈ると、ケースケさまの中にある魔力が私に補充されます」
「へえ? 俺にも魔力なんてものがあるんだ」
「あると思いますよ、これまでも魔法に反応していますしね。それは魔力が体内に存在する証です」
なら俺も魔法を使えるようになれるのかな。
訊ねてみるがそれはまた別の話だそうで、たぶん無理とのこと。
残念、ちょっとワクワクしてしまった。
「にしても綺麗な石だな。青が深くて夏の空みたいだ」
「よかったらそのまま持っていてください。いざというときに、ケースケさまから魔力を融通して頂けますし」
「いいけど、魔力ってそんな枯渇するようなものなの?」
「うーん。この世界だと、そこまで魔力を酷使することはない気がしますね」
平和だしな。
でもまあ、持っておくか。いざとなったら使えるのは悪くない。
「一個しかないんだ?」
「他はリッコちゃんたち三人に差し上げてしまいました」
なんでまた。
聞いてみると、彼女たちへのお礼だと言う。
リッコ、ナギサ、美津音ちゃん。
三人は、俺たちが地域に馴染むために力を貸してくれた。
彼女たちが喜びそうだったので、ただの綺麗な石として、感謝の気持ちを込めてプレゼントしたとのことだった。
「喜んでた?」
「宝物にします、って、皆さんが」
女の子って綺麗な石とか好きだもんな。
笑顔のレムネアを見てると、今日も三人と楽しく過ごしてきたみたいだし、俺もあの子たちには頭が上がらない。
今度俺もなにかお礼しなきゃ。
「長話になってしまいましたね。ケースケさまの方は、首尾良く行きましたか?」
「俺か。白菜を種から苗まで育てるために必要なものを買ってきたよ」
「種? 確か今日は苗を見に行くと……」
「そのつもりだったんだけどね。遅かれ早かれ種からの苗作りもすることになるんだから、今回やってもいいか、って」
俺がそう頭を掻いていると、レムネアの目が輝きだした。
興奮気味に両手を握りしめて、俺の方を見る。
「いいですね。挑戦というのは『冒険』です! 元冒険者として、私も精一杯手伝わせて頂きます!」
レムネアさん、なんでも冒険と結びつけたがる問題。
俺は思わず微笑ましい気持ちになってしまい、苦笑してしまった。
「頼むよ。この種にも愛情あるひと声を掛けてやってくれ」
「ようこそ白菜の種さん、これからあなたたちのお世話をさせて頂くレムネアです。頑張りますから、すくすく育ってくださいね!」
彼女が種の入った袋に向かって頭を下げる。
「ほら、ケースケさまも。ご挨拶、ご挨拶」
「え?」
うーん。
ちょっと恥ずかしかったので、種にともレムネアにともつかない感じにあやふやな挨拶をする俺。
「よろしくな」
――さて、苗作りだ。
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