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第零話
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「・・・第三小隊全滅、第二小隊被害甚大だってさ。」
「・・・で、俺たち第一小隊はあと二人、と。」
「そゆこと。で、どうする?」
「どうもしないさ。もう助かることもないだろうしな。」
「・・・。」
至極ごもっともだ。今僕たちが生き残っているのは本当にただの偶然でしかない。
馬鹿な司令部のせいで、特攻紛いのことをさせられ、そして多くの仲間が死んだ。体調が命を懸けて僕たちを逃がしてくれなければ、僕たちも地面に転がる屍の仲間入りを果たしていたに違いない。
「・・・ああ、もう一回だけ、会いたかったなあ。」
僕の隣で、久我がぼやく。その手には久我の彼女の写真があった。花が咲くような笑顔が写るそれは、血のにおいが漂うこの場所にはあまりにも不釣り合いだ。
「・・・。」
もう僕たちは死ぬ。ここは敵地だ。逃げたといっても、敵地で隠れる場所を見つけただけ。食料も何もない僕たちは、このままなら死ぬだけ。
「・・・どうせ死ぬなら。」
「何か言ったか、凱。」
「いや、そうだな。すこしだけ、格好つけようとでも思ってな。」
「は、誰にだよ。誰も見てないし、誰も知らないのに。」
「ああ、だから。」
ここは確かに敵地だが。もし、もし僕が敵の注意を数分引き付けることができれば。
一人ぐらいなら、逃げれるかもしれない。
「いつか、ここで笑う人たちにお前が伝えてくれよ。」
愛用の鎌を背負う。
「・・・なにするつもりだ、おい。」
「別に。単にゼロよりイチのほうがましだと思ったのさ。」
「じゃあ、お前じゃなくて俺が・・・。」
「阿呆。真紀ちゃんはどうするつもりだ。もう一回会いたいんだろう?」
「・・・だけど、それはお前を見捨てる理由には、ならないだろう。」
「は、いつ僕がお前に見捨てられたんだよ。うぬぼれんなよ。僕は勝手に親友の未来をつなぎに行くだけだ。」
「だけど。」
「うるさいな。早くいけよ。」
もう僕はあいつを見ない。
「・・・凱。」
「じゃあな、久我。ちゃんとかっこよく後世に伝えておいてくれよ?」
「・・・ああ。」
後ろを走る足音が聞こえる。その音とともに、僕は鎌を変形させて、銃型にする。
そして、空にその銃口を向けて、空砲を放つ。
ドオン、と大きな音が鳴る。魔獣は単純だ。考えて行動なんてしてこないのがほとんどで、こうして爆音がなればそこに集まってくる。
普通に考えれば、魔獣の波にのまれて、僕は数秒で死ぬ。でも、今だけはそういうわけにはいかない。そうなってしまえば、久我が気づかれる。
・・・足音が聞こえる。久我のものじゃない、もっと荒々しい、獣の足音。
地平線に黒い影が見える。ああ、僕はこれから死ぬ。
だが、だがせめて。
「この命、親友のために使ってやるっ!!」
意味のある死を。
「・・・で、俺たち第一小隊はあと二人、と。」
「そゆこと。で、どうする?」
「どうもしないさ。もう助かることもないだろうしな。」
「・・・。」
至極ごもっともだ。今僕たちが生き残っているのは本当にただの偶然でしかない。
馬鹿な司令部のせいで、特攻紛いのことをさせられ、そして多くの仲間が死んだ。体調が命を懸けて僕たちを逃がしてくれなければ、僕たちも地面に転がる屍の仲間入りを果たしていたに違いない。
「・・・ああ、もう一回だけ、会いたかったなあ。」
僕の隣で、久我がぼやく。その手には久我の彼女の写真があった。花が咲くような笑顔が写るそれは、血のにおいが漂うこの場所にはあまりにも不釣り合いだ。
「・・・。」
もう僕たちは死ぬ。ここは敵地だ。逃げたといっても、敵地で隠れる場所を見つけただけ。食料も何もない僕たちは、このままなら死ぬだけ。
「・・・どうせ死ぬなら。」
「何か言ったか、凱。」
「いや、そうだな。すこしだけ、格好つけようとでも思ってな。」
「は、誰にだよ。誰も見てないし、誰も知らないのに。」
「ああ、だから。」
ここは確かに敵地だが。もし、もし僕が敵の注意を数分引き付けることができれば。
一人ぐらいなら、逃げれるかもしれない。
「いつか、ここで笑う人たちにお前が伝えてくれよ。」
愛用の鎌を背負う。
「・・・なにするつもりだ、おい。」
「別に。単にゼロよりイチのほうがましだと思ったのさ。」
「じゃあ、お前じゃなくて俺が・・・。」
「阿呆。真紀ちゃんはどうするつもりだ。もう一回会いたいんだろう?」
「・・・だけど、それはお前を見捨てる理由には、ならないだろう。」
「は、いつ僕がお前に見捨てられたんだよ。うぬぼれんなよ。僕は勝手に親友の未来をつなぎに行くだけだ。」
「だけど。」
「うるさいな。早くいけよ。」
もう僕はあいつを見ない。
「・・・凱。」
「じゃあな、久我。ちゃんとかっこよく後世に伝えておいてくれよ?」
「・・・ああ。」
後ろを走る足音が聞こえる。その音とともに、僕は鎌を変形させて、銃型にする。
そして、空にその銃口を向けて、空砲を放つ。
ドオン、と大きな音が鳴る。魔獣は単純だ。考えて行動なんてしてこないのがほとんどで、こうして爆音がなればそこに集まってくる。
普通に考えれば、魔獣の波にのまれて、僕は数秒で死ぬ。でも、今だけはそういうわけにはいかない。そうなってしまえば、久我が気づかれる。
・・・足音が聞こえる。久我のものじゃない、もっと荒々しい、獣の足音。
地平線に黒い影が見える。ああ、僕はこれから死ぬ。
だが、だがせめて。
「この命、親友のために使ってやるっ!!」
意味のある死を。
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