僕だけ個別で異世界召喚

一章

２年後

 窓からの光が天音をてらす。それを合図に起き、立ち上がり、外に使い古した木刀をもちだす。最初の修行で死ぬように寝た記憶がある日から今日まで丁度２年たった。天音は15歳になっていた。黒に近い紫色の髪、その髪と同じ色の瞳は2年前とかわらない。でも、顔つきは少し幼さは残っているが大人になっていた。体格も以前とは変わりほっそりとしているが無駄な肉のないバランスのとれた体をしている。髪型も全体的に伸びていた。今日を最後にこの家を出なければならない天音はいつも道理素振りを始めた。
  ｢ふっ....ふっ....ふっ｣
 素振りを初めて1時間ぐらいたった頃声がかけられた。
  ｢ほう、随分形になってきたじゃないか｣
  ｢.....マルクさん!おはようございます!｣
 木刀を下ろし声のした方へ向き挨拶をした。
  ｢おはようのぅ。最初の頃と比べるとすんごい変わったのぅ。だが、まだまだだのぅ。学園に行っても練習を怠るんじゃないぞぉ｣
  ｢はい!マルクさん相手に未だに一本も取れてない僕はまだまだ未熟です。これからさらに自分の腕を磨き続けます!｣
 マルクさんは満足気に笑った。
  ｢なに言っとるんじゃ。妖狐になったらわしはｷﾞｯﾁｮﾝｷﾞｯﾁｮﾝだわい。さて、わしはおぬしを呼びに来たんじゃ。マリアが準備が整ったから来なさい言うてたぞ｣
  ｢わかりました。今向かいます。｣
 そう言って今まで修行をしていた広場を見渡し、マルクさんの後に続いた。途中で自分の部屋に戻り着替えた。白のズボンをはいて、シャツを着てネクタイをして、その上から白の生地に所々黒のラインが入ったブレザーをきた。扉を開けるとマルクさんが待っていてくれた。
  ｢マリア、つれてきだぞい｣
  ｢あら坊や、中々似合ってるじゃないか。準備はできたよ｣
 そう言うマリアさんは縦1m、横1mのでっかいバックをビシバシ叩いていた。
  ｢マリアさん....一体なに入ってるんですか.....｣
  ｢それは開けてからの楽しみさね。必要な物は全部入れたから困った時に開けるといいわ｣
  ｢わざわざありがとうございます。まさかここまで準備してくれるとは思いませんでした｣
  ｢なにいってるさね。2年の短い付き合いだけど坊やは私達の息子同然よ、その息子が困らないように準備するのは当たり前よ｣
  ｢マリアさん.....本当にありがとう.....｣
 今のマリアさんの言葉で泣きそうになった天音にさらにマルクさんが追い討ちをかける。
  ｢そうじゃのぉ、息子同然じゃのぉ。その息子の旅たちか....寂しいもんじゃのぉ。ほれ。これやるわい｣
 そう言って渡されたのは僕の刀｢空｣と同じ形の綺麗な木刀だった。
  ｢こ、これは?｣
  ｢おぬしの木刀もうボロボロじゃろ。それで練習するといい。わしの手作りじゃ、大切につこうとくれよ｣
  天音はマリアさんとマルクさんの暖かさに泣いてしまった。
  ｢ぼ、僕、2人に会えて良かった.....2人の師匠をもてて....僕は本当幸せ者だ....今までありがとうございました....!!｣
  ｢あらあら、泣くんじゃないさね。また遊びに来なさい｣
 うっすら涙目のマリアさんは微笑んでいた。
  ｢馬鹿者、男がなくんじゃないわい｣
 マルクさんもその言葉に合わない笑顔を見せていた。
 僕は荷物を持ち外に待っている馬車の前まで行く。2人にもう一回感謝を言うために振り返った。
  ｢マリアさん!マルクさん!本当今までありがとう!!必ず、いつか、今より強くなって遊びに行くから!!｣
  ｢あらあら、楽しみにしてるわぁ｣
  ｢待っておるのぉ｣
 それを聞き終えたあと、天音は馬車に乗り込み、窓から2人が見えなくなるまで手を振り学園に向かった。