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ーーー終わりの始まり
しおりを挟む校庭に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
それはクルクルと展開しながら重苦しく垂れ下がった雲に投影された。
数百人の生徒たちが校舎から見守る中、地上と空の魔法陣の間に黒い点が生まれた。
その点は徐々に大きくなり数を増やす。
まるで透明な巨大階段を降りてくるかのように、厳かに足並みを揃えてゾロゾロと現れる、人型のナニカ。
何事が始まったのか興味津々の生徒の中には、何人かがスマホで生配信など始めていた。
その生物が数百体、現れては組体操のピラミッドの様に四つん這いになり次々と重なっていく。
黒光りする肌、長く上に尖った耳、目は横に裂けたような吊目で黒目がちと言うよりも白目がない。背中にたたまれているコウモリのような翼が、出番を待つようにワサワサと動く。
何も着ていないその腹は餓鬼のように膨れ、手足は異様に細く鉤爪が鈍く光る。
まだ校舎の中は静かだった。写真を撮る者、動画を録る者、生配信する者、ただ見つめる者。それぞれが起こす音はあるが、そんなに酷い喧騒はない。
何が起こっているのかわからない戸惑いが、静寂となって時間を支配している。
そしてそのピラミッドの作成が止まった。
次に出てきた者達は四人。各々デザインと色が違う衣を纏っていた。スマホのカメラでアップにして見ていた女生徒達からため息のような艶めいたものが漏れる。
尖った耳、褐色の肌、様々な灰色の髪。そして人間から見てもとても整った顔面。四人それぞれに違う魅力を纏い、ゆっくり歩む。
その四人が左右に分かれ上段に跪いた。
更に上位の者が出てくる。そんな想像は容易いだろう。
校舎から無数の視線が注がれる中、現れた二人。
真っ白に輝くような長い髪から捩れながら突き出る二本の角。
彫りが深い褐色の顔はとても美しいがやはり白目はない。
堂々とした肩の装飾がきらびやかで、明らかに今までの生物よりも位が高いのがわかった。
数十人の女生徒と数人の男子生徒が、崩れ落ちた。
その人物の隣に立つもう一人。
肌は白く髪は黒い。華美な装飾のないグレーのマントを羽織り、感情のない目で前方を見つめている。
特に彫りが深いわけではなく特に美しいわけでもないその顔の双眼には人間のような白目があった。
数百人が、その人物の違和感にざわめく。
あれ、日本人ぽいな。
そんな感想を抱いていた。
それ以外の、三十人ほどが詰めていた一つの教室は、一瞬にして凍りついた。
誰も声を発せず、息も出来ず、ただその姿を見つめる。
魔法陣から出てきたその人物もまっすぐその瞳を向けた。
カメラでアップにしていた生徒は、その表情の変化に気が付いた。
その、愉悦に満ちた笑顔に。
隣に立っていた豪奢なマントの人物が彼を引き寄せ、背をかがめて話しかける。
青年はそれに答えるように顔を向け、おもむろにその首に両腕を回し抱きしめた。
凍りついた教室の誰かが声にならない声を出した。
「・・・きたがわ・・・ゆう・・・ご・・・」
その声が聞こえたはずはないが、抱き着いていた両腕を離して校舎に向かう。
寄り添う二人は恋人のようで、まるで結婚式のようだ。
その時、突然声が響いた。
「僕は喜多川優豪。僕を殺した奴らに復讐しに来たよ。」
決して大声を出しているわけではない静かな宣言は、一瞬誰の脳内でもきちんと変換されなかった。
「まずは僕をいじめて殺した奴ら。次にそれを見てみぬふりをした奴ら。知らなかったと逃げた奴ら。そして」
優豪の相貌が歪んだ笑みを作る。
「いじめというカテゴリで片付けてすぐになかったことにした社会。他者を虐げて搾取する世界。」
階段を作って大人しくしていた怪物たちの背中の羽根が忙しく動く。
早く早く早く
号令を。
優豪が左手を上げる。
「人類に宣言する。我々魔族の蹂躙の始まりだ。」
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