僕は魔王の寵愛を受けて復讐する

神尾瀬 紫

文字の大きさ
1 / 7

ーーー終わりの始まり

しおりを挟む
 
 校庭に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
 それはクルクルと展開しながら重苦しく垂れ下がった雲に投影された。
 数百人の生徒たちが校舎から見守る中、地上と空の魔法陣の間に黒い点が生まれた。
 その点は徐々に大きくなり数を増やす。
 まるで透明な巨大階段を降りてくるかのように、厳かに足並みを揃えてゾロゾロと現れる、人型のナニカ。
 何事が始まったのか興味津々の生徒の中には、何人かがスマホで生配信など始めていた。
 その生物が数百体、現れては組体操のピラミッドの様に四つん這いになり次々と重なっていく。
 黒光りする肌、長く上に尖った耳、目は横に裂けたような吊目で黒目がちと言うよりも白目がない。背中にたたまれているコウモリのような翼が、出番を待つようにワサワサと動く。
 何も着ていないその腹は餓鬼のように膨れ、手足は異様に細く鉤爪が鈍く光る。
 まだ校舎の中は静かだった。写真を撮る者、動画を録る者、生配信する者、ただ見つめる者。それぞれが起こす音はあるが、そんなに酷い喧騒はない。
 何が起こっているのかわからない戸惑いが、静寂となって時間を支配している。
 そしてそのピラミッドの作成が止まった。
 次に出てきた者達は四人。各々デザインと色が違う衣を纏っていた。スマホのカメラでアップにして見ていた女生徒達からため息のような艶めいたものが漏れる。
 尖った耳、褐色の肌、様々な灰色の髪。そして人間から見てもとても整った顔面。四人それぞれに違う魅力を纏い、ゆっくり歩む。
 その四人が左右に分かれ上段に跪いた。
 更に上位の者が出てくる。そんな想像は容易いだろう。
 校舎から無数の視線が注がれる中、現れた二人。
 真っ白に輝くような長い髪から捩れながら突き出る二本の角。
 彫りが深い褐色の顔はとても美しいがやはり白目はない。
 堂々とした肩の装飾がきらびやかで、明らかに今までの生物よりも位が高いのがわかった。
 数十人の女生徒と数人の男子生徒が、崩れ落ちた。
 その人物の隣に立つもう一人。
 肌は白く髪は黒い。華美な装飾のないグレーのマントを羽織り、感情のない目で前方を見つめている。
 特に彫りが深いわけではなく特に美しいわけでもないその顔の双眼には人間のような白目があった。
 数百人が、その人物の違和感にざわめく。
 あれ、日本人ぽいな。
 そんな感想を抱いていた。
 それ以外の、三十人ほどが詰めていた一つの教室は、一瞬にして凍りついた。
 誰も声を発せず、息も出来ず、ただその姿を見つめる。
 魔法陣から出てきたその人物もまっすぐその瞳を向けた。
 カメラでアップにしていた生徒は、その表情の変化に気が付いた。
 その、愉悦に満ちた笑顔に。
 隣に立っていた豪奢なマントの人物が彼を引き寄せ、背をかがめて話しかける。
 青年はそれに答えるように顔を向け、おもむろにその首に両腕を回し抱きしめた。
 凍りついた教室の誰かが声にならない声を出した。
「・・・きたがわ・・・ゆう・・・ご・・・」
 その声が聞こえたはずはないが、抱き着いていた両腕を離して校舎に向かう。
 寄り添う二人は恋人のようで、まるで結婚式のようだ。
 その時、突然声が響いた。
「僕は喜多川優豪。僕を殺した奴らに復讐しに来たよ。」
 決して大声を出しているわけではない静かな宣言は、一瞬誰の脳内でもきちんと変換されなかった。
「まずは僕をいじめて殺した奴ら。次にそれを見てみぬふりをした奴ら。知らなかったと逃げた奴ら。そして」
 優豪の相貌が歪んだ笑みを作る。
「いじめというカテゴリで片付けてすぐになかったことにした社会。他者を虐げて搾取する世界。」
 階段を作って大人しくしていた怪物たちの背中の羽根が忙しく動く。

 早く早く早く
 
 号令を。
 
 優豪が左手を上げる。
「人類に宣言する。我々魔族の蹂躙の始まりだ。」
 
 
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...