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omen
5-2
不規則にリズムを刻んでいたキーボードの音が止む。未達成のノルマを気にしつつも、朔斗はノートパソコンを閉じた。
とてもじゃないが、昂良の顔が脳裏に浮かんで集中出来ない。彼の脆弱さはよく分かっているつもりだ。だからこそ、今朝の会話が何かの引き金になることも容易く想像してしまう。
同時に、仕事が手に付かないほどの不安に襲われる自分にも呆れる。
「昂良だって子供じゃないんだから」
敢えてそう口にしてみても、声は虚空に溶けていくだけだ。
気を紛らわずものが他に無い今、きっといつものように帰ってくるだろうと、自分に言い聞かせるしかなかった。
昂良が帰宅したのは、それから9時間後のことだ。
案の定彼は悄然としていたが、朝の一件だけを理由にするには、あまりにも重すぎる影を纏っていた。
墓参にはちゃんと行ったのか、その先で何かあったのかと問い掛けたい気持ちを抑えて、台所に戻る。
「ご飯すぐ食べる?」
「あ、うん」
「座ってていいよ」
短く相槌を打ち、徐に席に着く。そんな些細な行動にさえ、朔斗は違和感を抱いた。
いつもなら真っ先に抱きついてくるくせに。
いつしか体に染み付いていたルーティーンを、無意識に脳が求める。帰宅後の抱擁は、朝起きて夜眠るくらい、食事をして呼吸をするくらい、朔斗の中で当たり前のものになっていたのだ。
抱き締めてほしいのではない。ただ“いつもの”が無いことに寂しさを覚える。昂良が視線ではなく、しんとした背中を向けているから、余計に取り残された気になった。
とてもじゃないが、昂良の顔が脳裏に浮かんで集中出来ない。彼の脆弱さはよく分かっているつもりだ。だからこそ、今朝の会話が何かの引き金になることも容易く想像してしまう。
同時に、仕事が手に付かないほどの不安に襲われる自分にも呆れる。
「昂良だって子供じゃないんだから」
敢えてそう口にしてみても、声は虚空に溶けていくだけだ。
気を紛らわずものが他に無い今、きっといつものように帰ってくるだろうと、自分に言い聞かせるしかなかった。
昂良が帰宅したのは、それから9時間後のことだ。
案の定彼は悄然としていたが、朝の一件だけを理由にするには、あまりにも重すぎる影を纏っていた。
墓参にはちゃんと行ったのか、その先で何かあったのかと問い掛けたい気持ちを抑えて、台所に戻る。
「ご飯すぐ食べる?」
「あ、うん」
「座ってていいよ」
短く相槌を打ち、徐に席に着く。そんな些細な行動にさえ、朔斗は違和感を抱いた。
いつもなら真っ先に抱きついてくるくせに。
いつしか体に染み付いていたルーティーンを、無意識に脳が求める。帰宅後の抱擁は、朝起きて夜眠るくらい、食事をして呼吸をするくらい、朔斗の中で当たり前のものになっていたのだ。
抱き締めてほしいのではない。ただ“いつもの”が無いことに寂しさを覚える。昂良が視線ではなく、しんとした背中を向けているから、余計に取り残された気になった。
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