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秘める春信
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毎週土曜日には並んで台所に立ち、分担して調理をする。今日がその日だったことを、穂希はすっかり忘れていた。
「お兄ちゃん最近どう? 学校じゃ全然会わないけど、行ってるの?」
「行ってるよ、保健室だけど」
「そっか。……何も変わった事はない?」
いつもなら、この質問には即答で『無いよ』と返していた。だが、今日は違う。
穂希は思い出しながら、小さく唸った。
友人すら持たない自分に、同性の恋人が出来たなどと言えば、驚かせてしまう事だろう。
当たり障りない返事を何とか探し出す。
「クラス委員長がすごく優しくて、仲良くしてくれるよ」
「委員長?」
「そう、椿って言うんだけど」
フライパンを揺らしていた葉月が、顔を上げた。
「その人知ってる。学校ではちょっとした有名人だよね」
「そうなんだ」
「私のクラスの女の子たちもウワサしてた」
元から整った顔立ちに加え、全ての人に等しく発揮される温情、怜悧な知性を兼ね備えているのだ。異性に思慕されるのも頷ける。
「お兄ちゃんは椿さんと何話すの?」
「えっとー……勉強とか教えてもらってる」
「なるほど、納得」
虚言ではないのに、嘘を吐いている気分になる。
ゆえに、葉月が納得してくれたことに、安心してしまった。
「お兄ちゃん最近どう? 学校じゃ全然会わないけど、行ってるの?」
「行ってるよ、保健室だけど」
「そっか。……何も変わった事はない?」
いつもなら、この質問には即答で『無いよ』と返していた。だが、今日は違う。
穂希は思い出しながら、小さく唸った。
友人すら持たない自分に、同性の恋人が出来たなどと言えば、驚かせてしまう事だろう。
当たり障りない返事を何とか探し出す。
「クラス委員長がすごく優しくて、仲良くしてくれるよ」
「委員長?」
「そう、椿って言うんだけど」
フライパンを揺らしていた葉月が、顔を上げた。
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「私のクラスの女の子たちもウワサしてた」
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「お兄ちゃんは椿さんと何話すの?」
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