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イタズラは桜色
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「ねぇ椿。こういうの見ると、ドキドキする?」
視線が絡み合う。
ドラマや映画なんかでよく見かける、好意を寄せている異性の言動にどぎまぎする、そんな顔をしている。
「……ご、ごめん」
「いいよ、謝らなくて」
椿に良心の呵責があることを、穂希も分かっているつもりだった。
しかし、無意識に傷を求める彼を見ていると、もっと先の方へ踏み込みたくなってしまうのだ。
「リスカの痕、見たい?」
意地悪な質問に、椿は再び視線を逸らした。
「……穂希君、嫌じゃないの?」
「椿が嬉しいなら嫌じゃないよ」
寧ろ、椿になら見てほしい。
出かけた言葉を飲み込んで、穂希は明確な返事を聞く事の無いまま袖を捲った。
夥しい線状の傷が、照明の元に晒される。青白い素肌は、隙間無く刻まれた切創によって赤みがかっていた。
椿がごくりと唾を呑む音が、微かに聞こえた。
暫くの間、愛おしそうな眼差しで見据えていた彼は、溜め息にも似た息を吐いて俯いた。
「……ダメだよね、こんなこと」
「ダメじゃないよ。俺たちが良ければ多分、良いんだよ」
そう言って、取り分け創痕の酷い左腕を差し出す。
「……椿、触って?」
「え、あ、……手、洗って……」
「そのままで良いよ。生傷じゃないし、大丈夫」
椿は一度穂希の顔を窺ってから、震える指先を傷跡に伸ばした。
痛覚の鈍った皮膚に、微かな感覚が伝わる。
――――多分、恋人同士が二人きりで居たら、ハグやキスなどのスキンシップで愛情を深めるのだろう。
付き合うとは、一体どういうことなのか。
ひとり思量するが、椿の恍惚とした面差を見ていたら、そんな事はどうでもよくなっていた。
視線が絡み合う。
ドラマや映画なんかでよく見かける、好意を寄せている異性の言動にどぎまぎする、そんな顔をしている。
「……ご、ごめん」
「いいよ、謝らなくて」
椿に良心の呵責があることを、穂希も分かっているつもりだった。
しかし、無意識に傷を求める彼を見ていると、もっと先の方へ踏み込みたくなってしまうのだ。
「リスカの痕、見たい?」
意地悪な質問に、椿は再び視線を逸らした。
「……穂希君、嫌じゃないの?」
「椿が嬉しいなら嫌じゃないよ」
寧ろ、椿になら見てほしい。
出かけた言葉を飲み込んで、穂希は明確な返事を聞く事の無いまま袖を捲った。
夥しい線状の傷が、照明の元に晒される。青白い素肌は、隙間無く刻まれた切創によって赤みがかっていた。
椿がごくりと唾を呑む音が、微かに聞こえた。
暫くの間、愛おしそうな眼差しで見据えていた彼は、溜め息にも似た息を吐いて俯いた。
「……ダメだよね、こんなこと」
「ダメじゃないよ。俺たちが良ければ多分、良いんだよ」
そう言って、取り分け創痕の酷い左腕を差し出す。
「……椿、触って?」
「え、あ、……手、洗って……」
「そのままで良いよ。生傷じゃないし、大丈夫」
椿は一度穂希の顔を窺ってから、震える指先を傷跡に伸ばした。
痛覚の鈍った皮膚に、微かな感覚が伝わる。
――――多分、恋人同士が二人きりで居たら、ハグやキスなどのスキンシップで愛情を深めるのだろう。
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