蒼い春も、その先も、

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春愁は君だけに

18-3

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 薬袋やくたいの入ったビニール袋をぶら下げて、穂希は帰路についていた。

 手元に薬があることに安心する傍らで、何故生きる必要も無いのにこんなものを持っているのか、と言う疑問に駆られる。

 椿という存在に見放されてしまった今、生きる意味などはどこにも無い。彼に出会う前よりもずっと、その感覚は鮮明になっている。
 脳裏に数度目の自殺を試みる自身の姿を描き、それを一秒でも早く実行する為歩調を速める。

 そして家に辿り着いた瞬間、穂希は息を止めた。

「……椿」

 思わず口にすると、玄関の前で立ち尽くしていた椿が肩を縮めた。

 彼は遅々と振り向いて、瞼を伏せる。少しだけ、瞳が揺らいでいるようにも見える。

「何か話しに来てくれたんだよね?」

 言いながら、穂希は彼の手をとった。拒絶されなかったことに、内心安堵する。

「ここは暑いから、中に入ろう」

 そこで漸く、椿が『うん』と頷く。
 内玄関に入り、荒れ果てた居間に着くまで二人の間に会話は無かった。 

 だが、穂希は根拠も無く確信を抱いていた。

 椿は再び、自らここに訪れたのだ。そして握った手を振り払わず、部屋に足を踏み入れた。その行動こそが、彼の愛情の表明に違いない。

 横目で椿の表情を窺いながら、穂希は何食わぬ顔を装って飲み物の準備に取り掛かった。
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