おばあちゃんのお惣菜

プロローグ

お豆腐屋さん

私はフク。この店の店主をしている80過ぎのおばあちゃん。子供や孫に
「いい加減店を畳んで一緒に暮らさないか」と言われているが、いつも仕事帰りや常連のお客さんが買いに来てくれるのでなかなかやめられない。


「ばあちゃん。今日はどれだけいるんだい？」近くの豆腐屋の倅が裏口から顔を出して聞いてきた。
「そうだねおからとお揚を500と豆腐を３０0丁お願い」そう言うと
「いったい何に使うのか不思議なんだけど。ばあちゃん一人で作っているんだろ？」
「今から作ればお昼のお弁当のおかずにする総菜狙いの物が出来るんだよ。午後に厚揚げを30丁持ってきてくれるかい？」と言うと
「わかったよ。今日晩ご飯のおかずを買いに来るからお勧めを取っておいてくれよ」そう言って頼んだ商品を調理台の上に乗せて帰っていった。

さてさて、もうそろそろ起きてくる時間かね。時計を見ながら二階を見ると《どしん》と大きな音がした。
しばらくして寝癖頭の男の子が降りてきた。
「おはようございます」
「おはよう。これから仕込みをするのだから早くご飯を食べて着替えてきなさい」そう言って私はヒジキと干し椎茸をうるかした。


この子は隼人。私の弟の孫にあたるのだが、大学受験に失敗して進学で一悶着あったらしく、家に居づらくなったといいうちに居ついた。
どうやらお店をしている私を心配して弟がよこしたらしい。たまに電話でうちの子達に話しているのが聞こえてくる。
「本当に大丈夫だって。ここから通える学校も探したし、おばさん一人にしないから」と小声で話しているが漏れ聞こえてきてちょっと嬉しい気がする。


さて今日仕入れたものでひとまず３種類作りますか。
1．おからと野菜の炒め煮
2．豆腐の白和え
3．揚げだし豆腐
おからに入れる材料と白和に入れる材料は同じだから豆腐の水切りと同時進行で人参とコンニャクを切る。うるかしておいた椎茸をスライスして戻し汁と分けておく。さやいんげんは筋を取って半分は軽く湯がきて残りはそのまま一口サイズに切る。ここまで終わったところで隼人が着替えて出てきた。
「おばさん。先におからを作るよ」そう言って大きなフライパンを出して手早く調理を始めた。
ヒジキの水を切って他の材料と一緒に近くに持っていき
「あとはよろしくね」そう言って私はすり鉢にごまを入れて白和の用意を始めた。
「おばあちゃん。私がやるよ」そう言って何故か揚げ物をやっていた文枝さんが声をかけてきた。
「いいけど揚げ物を頼んだ分はできたのかい？」
「あとは豆腐の水切りが終わればいいだけ」そう言って私の目kらすり鉢をとってすり棒でペースト状になるまで擦り始めた。
「じゃあ任せるわ。私はおいなりさんの用意をするわね」そう言ってあ揚げを湯通しして煮始めた。

全ての商品が揃う11時30分シャッターを開けて今日も元気に【惣菜屋おたふく】開店です