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旅路

野営地では

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「さて。いつもの結界を張るけれど何か問題があるか?」とジェフが言うと
「お兄ちゃん名前変わったの?」とエマが聞いた。
「ああ。それについても結界を張ってから答えるよ」と言って結界石を入り口にまず置いてそこから普通の結界石を野営地を囲むように置くと私たちが使う範囲に特製の結界石を埋めた。
「何で二重にしたの?」とミルムが聞くと
「普通の結界石だとまた誘拐や強奪が起こる可能性があるだろ?」そう言って最初の野営地で起きた事件を話した。
「まさか僕らが狙われたの?」とジータが聞くと
「わからない。従魔狙いかもしれないし、子供を狙ってきたかもしれない。開拓団と言ってもうちは小さな子供がいるからな。用心には越した事ないんだ」とゴードンが答えた。
「さ。結界も貼り終えたところで改めて自己紹介するな。俺はジェフ。チョット貴族とトラブったので新しい名前でこの開拓団に登録したんだ。その煽りを食らったのが」
「私、ゴードンと先程冒険者ギルドに行ったグラウドだ」
「それでガントおじさんが違う名前で呼んでいたんだね」そう言ってみんなが納得した。
テントを張っているとケイトが少し離れたところにテントを貼ろうとしていた。
「おい。そんなに端に寄ったら危険だぞ」とジェフが声をかけると
「皆さんに迷惑をかけたくないから。この辺りにテントを張ります」と言い出した。
「大丈夫。小さな子供たちがそこにいるだろ?」とミルムたちを指すと
「そうなんですが。もしかしたら私たち狙いの人が来るかもしれないので」まさかの訳あり団員その4?
「大丈夫よ。うちに紛れ込んでいれば誰も気が付かないわよ」と言うと
「そうなんですが、家のものが多分気がつくかと…」まさかのいいところのお嬢様?
「じゃあうちの牛車に乗っていればいいわ。シルクカーバンクルたちがいるけどビックリしないでね」そう言って牛車の中に促した。
大体テントを張り終えた時、
「おーい。新しく開拓団に参加する5人だ。仲良くしてやってくれ」と言いながらガントさんが野営地で泊まる人たちを連れて帰ってきた。
野営地へは誰でも泊まれる結界(盗賊や殺し屋などは弾く)を引いたので簡単に入れるが、さてこの特製の結界には入れるのだろうか?固唾を飲んで様子を見ているとあっさりと入ることが出来た。
「いらっしゃい。歓迎するよ。ただ、良からぬ事を考えただけでここには入れなくなるからそのつもりで」とジェフが言うと
「ガントさんからその話は聞きました。よろしくお願いします」と言って5人が頭を下げた。
彼らは”疾風の狼”と言うパーティで王都から5日ほど離れた街を拠点にしていたが、領主様と揉めてギルドでこちらに行ったほうがいいと勧められたらしい。確かに変な横槍を入れられることはない開拓団といえば納得する。
「まさかそのご領主はクロコダイン子爵と言いませんか?」とケイトさんが牛車から顔を出して聞いてきた。
「そのクロコダイン子爵です」とリーダーのブラウンが答えると
ケイトさんの慌てた様子に
「大丈夫です。ギルドでもご領主の依頼を受けないと決めたので」とフローラが言った。
「本当だ。ソルドの冒険者ギルドでその話もしている。誰もあなたを引き渡さないでしょう」とガントさんが言った。まさかの子爵令嬢?
「ありがとうございます」と言って安心したのかホッとした顔をしてくれた。
「まだ心配であったら、牛車の中にいてくださいね」そう言って私は夕食の支度を始めた。
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