上 下
6 / 21
1章 雨の日は足元に注意

カルテ1 唐傘お化けのカンタ

しおりを挟む
「すいません急患です!。先生見てもらえますか?」外が騒がしいので玄関を開けるとなぜか目が二つだけ見えた。

よくよく見ると唐傘お化けと一つ目小僧だった。
「ととにかく中に入って。えっと、患者さんは?」
「こいつです。外は土砂降りではないのにこいつ川に流されていて慌てて拾って来たんですが…」
「すぐに診察台に寝かせてお兄ちゃん。あとわかる範囲でいいのでこちらに記入いただけますか?」とサヨリが問診票を差し出した
「名前なんかはこいつが気がついてからお願いします。後はわかる範囲でよければ」そう言って助けた場所や経緯などを記載してもらっている間に僕は彼の状態と水を吐かせるために横向きにした



「ウゲ~」そう言って水を吐き出した唐傘お化けは意識を回復した。

「おい大丈夫か?」そう一つ目小僧が声をかけると
「お俺は。ここは一体?」不思議そうに辺りを見渡すので
「ここは診療所です。彼が君を連れて来てくれたんですよ。一体何があったかわかりますか?」そう僕が聞くと
「元々は洋傘だったんですが、ある日持ち主が大雨の中僕を差して移動しているうちに突風で煽られて僕は端から川に落ちたんです。そのあとはあよくわかりません」
どうやら付喪神化しかかっていたらしい。
「お名前は付けられていましたか?」とサヨリが聞くと
「名前はありません。いくあても無いのですが…」そう答えたので
「では持ち主の名前をもらっては?」そう僕が提案すると
「たぶん《カンタ》が名前じゃないか?其処に名札がついている」と一つ目小僧が教えた。
それを聞いて即座にサヨリが問診票とカルテに記載をする。
「そうかあれは子供だったんだ」そう言って名札について手にとって確認する。そう名札には住所と名前そして見つけたら連絡をくださいと子供の手で書かれた連絡先が記載されていた。
「手当てが終わったら帰ることができますが、連絡を入れてみますか?」
「僕が元の姿に戻れるでしょうか」そう不安がっているのを
「大丈夫これだけ大切に扱っていたのですから彼に会えれば元に戻れますよ」そう言って破れた箇所を繕い、折れた骨を取り替えて男の子ために補修した場所を目立たないようにすると唐傘お化けは元気になった
「ありがとうございました。治療費はどうすれば?」そう聞いて来たので
「元の姿に戻ったときの放出された妖力をいただきます」そう言って連絡先に電話をかけると急いで持ち主が取りにきた。もちろん唐傘お化けはすぐに元の姿に戻ったので付喪神になっていることは気づかれなかった。
「ありがとうございます。この子が傘をなくしたと言って大泣きしていたので訳を聞くと、突風に煽られて傘が川に落ちたと言うのを聞いて諦めていました。本当によかったです」そう言って修理代金として3千円を置いて引き取って行った。
それを羨ましそうに見つめる一つ目小僧を見て
「この度はありがとう。居場所がないのならここで手伝ってくれると僕は嬉しいんだが」と僕が言うと
「いいんだ、気にしないで。僕はまたあの山に帰るだけだから」そう言って街の北にある山に向かって帰って行った。





しおりを挟む

処理中です...