4 / 65
第4話 王さまのナデポン……延びしろですね!
しおりを挟むさて、王さまのお胸で大泣きしちゃってからこちら、親子の関係はそこそこ良いようです。
王さまのナデポン(頭を撫でて優しくポンポン叩くこと)の技術は瞬く間に上昇。
今ではお膝にナジィカを乗せて、絵本を読む子煩悩なお父さんに進化しました。
親父さん、デレッデレです。
そーいやー、ナジィカは王さまが心底惚れて側室に迎えた、平民の母親に瓜二つなんだよな。
因みに彼女はナジィカとナジィカの双子の弟を生んで程なく亡くなっている。
ナジィカの双子の弟は父親に似たから、愛した女の面影を残す子どもはナジィカひとり。
神託のせいとはいえ塔に幽閉した負い目からか、今までは何処かよそよそしかった王さまは、ナジィカに憎まれていないと分かってから此方、親バカって言葉じゃ足りないくらい、息子を溺愛する父親にジョブチェンジしましたですよ、はい。
「お父さん、ここでお仕事しようかな」
ああ。塔通いでは飽きたらず、ついにそんなことまで言い出したよ、王さまってば。
側近その2の大男にお馬さんごっこで遊んで貰っている俺を見ながら、簡素な椅子に座るおとーさんは、ガチな声音でそー言いました。
今までは数週間に一度程度の訪問だったのに、このところほぼ毎日お会いしてますねー。
朝から夕までここに居る時もありますねー。
それでいーのか、王さまよ。
「はははっ。面白い冗談ですね、陛下」
側近その1の美丈夫さんが、後ろに回した手を組み、爽やかな笑顔に不穏な色を混ぜながら王さまを遠回しに嗜めます。
「うむ。やはりダメか」
「当たり前です」
「じゃあ此処で暮らそうかな」
「毎朝、政務をしに行きたくないとごねる姿が目に浮かぶので、本気で止めてください」
「どーしてもダメか?アルバート」
「ぶん殴られたいのですか、陛下」
「腹心のまさかの反乱っ!下克上は止めて欲しいのだがね」
「陛下が腑抜けになられるようなら、ソレも視野にいれましょうか」
あれ。なんか俺の親父って威厳ねぇの?
腹心にぞんざいな口調で脅されてるんだけど、なぁ、デュッセンさんあの二人止めなくて大丈夫?
「はっ、はっ、はっ!殿下、まだまだ速くなりますよ!暴れ馬を御する立派な男にお育ち下され!!」
「きゃぁう!きゃははははっ!」
暴れ馬って自分で言っちゃうの!
デュッセンさんパネェ!
親子の和解シーンで男泣きしちゃった陛下の側近&腹心その2こと、気の良い大男デュッセンさんの背中にのって、服を掴みながら落ちないようにバランスをとる。
落ちそうで落ちないギリギリの傾き加減で攻めてくるデュッセンさん、遣り手です。
遊びながら王子のバランス感覚を鍛え中。
一石二鳥でやはり遣り手です。
5歳児がお馬さんごっこで遊ぶかどーかは知らねぇですが、生まれてからこちら乳母のメアリーしか遊び相手がいなかったナジィカは、今がとっても楽しくて幸せみたいです。
無邪気な子どもの笑顔に坂谷くんは、涙ちょちょ切れそーですよ。まぁ、自分の顔だからどんな風に笑ってるのか見えないわけですけど!
鏡はありませんよ、武器になるから。
毎日が楽しくて忘れそうになるけれど、此処は俺を閉じ込める為の牢獄だからね。
そーいえば、親子の和解をこっそり目撃しちゃった門番の兵士さん二人も、俺を気に掛けてくれます。
「王子様。プミカの焼き菓子ですが、食べます?」
「食べるっ!ところでプミカってなぁに?」
「えーと、木の実?ですかね、割るとツブツブした赤い実が詰まってるんですよー。はい、手を離すので受け取って下さいね」
こんな感じで、たまーにお菓子とかを、ドアに付いている小窓から差し入れしてくれたりする。
勝手にドアを開けることは出来ないので、こっそりドア越しに話したりもする。
今までの門番には、忌み子、呪い子として恐れられ憎まれていたので、かなりの進歩ではないだろうか。
メアリーの事件で、彼女と結託した門番の兵士がいたため、門番は総取っ替えになった。
十名くらいの兵が交代で門の前に立つので、俺に良くしてくれる彼ら二人とは5日~7日に一度くらいしか話せないけど、今までに比べたら十分ですよ。
メアリーの変わりの世話役は与えられなかったから、ナジィカは今、ガチでロンリネスなんだよね。
王さまもそんなに毎日来れないからさぁ……本来なら。
いまはめちゃ来てるけど。
このところほぼ毎日来てるけど。
あきらかに、来すぎだからね、王さま。
王さまの塔通いは殆ど毎日のように続いていますよ、ええ。政務とか大丈夫なの?と心配になるレベルですよ、はい。
アルバートさんの笑顔が日を追うごとに険しくなっていくので、俺は心底申し訳なくなって、ある日王さまに言いました。
「王さま、民の血税を無駄にしないで下さいね(仕事しろやおっさん)」
それを聞いた王さまはいたく感動されたらしい。
大袈裟に肩を震わせながら、腹心の二人にすがり付き「息子が良い子過ぎてつらい」と泣いていました。
今まで色々ありましたからね。
気持ちは分からないでもないですが、それにしても、王さまオーバー過ぎっすよ。
此方まで照れるっすよ。
まぁそれは兎も角だ、真面目な話、デュッセンのおっさんが貰い泣きしてて大変暑苦しいし、仕事が片付かないってアルバートさんが困っているからマジでそろそろ王さま仕事しろ。
「はいはい、こんな劣悪な環境でも良い子が育つと解って良かったですね。さ、陛下。殿下で十分癒されましたね。4日分の書類が片付くまで、眠れると思わないで下さいね」
「え?そんな横暴な」とかなんとか騒ぐ王さまを完全シカトしたアルバートさんが「それでは殿下、失礼いたします」と頭を下げて出ていった。
王さまの首根っこを引っ張って、仕事場に連行することも勿論忘れておりません。
ありがとう、アルバートさん。優秀な家臣がいるなら、国の未来も明るいよ。
「パパ、また直ぐに来るからね!寂しくなったら門番に伝えてパパを呼ぶんだよ!」
ついに自分をパパと呼び始めた王さまを、ひらひらと手を振って半笑いで見送りました。
すまない王さま。
父親として貴方を愛しているが、四六時中ベッタリ一緒だとか今までと環境が変わり過ぎだから。
孤独に慣れているナジィカの精神では、とてもじゃないが堪えられない。
それに、俺にはデッドエンドを打破するという、大きな使命があるんだよ!
ひとりの時間も必要なんだ。
正確にはひとりではないんだけどね。と、俺は王さまたちを見送った後、暖炉に近づいた。
この鳥籠のような世界で、ナジィカは乳母と二人っきりで生きてきたけれど、実はこの部屋にはもうひとり住民がいる。
ひとり、という数え方は、肉体を持たない彼には相応しく無いかも知れないが、彼はナジィカが生まれる前から側に寄り添い、幼い少年を見守り続けていた。
小説の中のナジィカは時折何かの気配を感じることはあっても、その存在を瞳に映すことも、声を聞くことも出来なかった。
でも、俺には予感がした。
いまならば。坂谷一葉とナジィカがひとつに混ざりあった今ならば、見えるのではないかと、そう思えた。
乳母に命を奪われかけたあの夜。
幼い命が永遠に失われようとしていたあの夜。
空気を切り裂く怒声と共に、ナジィカを救ったその存在は―。
1
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる