うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第34話

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 伏せた目蓋の睫が長いなぁとか、緩く開いた唇がエロいなぁとか、首が長くて綺麗だなぁとか……耳の形も髪も掌も全部。全部好きだなぁなんて、随分と脳みそがとろけた事を思う。

 すぐ側で、壁に背を預け、片方だけ立てた足の上に片腕を置いて、座ったまま目を閉じている相手の顔をじっと観察している。

 ちゃんと横になって休めば、とゆーか保健室に行かない?と言えば『こっちの方がまだマシ』と返され、じゃあホールの屋根にもっかい登る?と提案したら『どっかのワンコに、また飛ばれたらメンドーだから止めておく』と言われた。

 天の邪鬼というかなんとゆーか、ホント何一つ言うこと聞かねぇんですよ、コイツ。

 それでも、渋々だが承諾した"バイト"をしてくれてる。いや、ほんと自分でも呆れるが…………『俺が買う!』なんてよく言えたなぁ。

(呆れてたよなぁ、コイツ)

 ウリなんか止めろよって言ってる側から『俺が買います』発言とかないだろう?ダメダメだろう?うん、自覚してます。
 もう、ソレくらいしか方法が思いつかなかったとはいえ、ちょっと落ち着こうか輝くんよ!
 勢いに任せて行動するのはダメだ。ホントダメだ。なんか、今日の俺はダメダメだ。

 頭を掻きむしりたい衝動を必死に抑える。
 だって、隣では久賀が寝たふりをしてるからね。睡眠妨害とか本末転倒だからね。
 ふりじゃなくて出来ればガチで眠って頂きたいんですけどね。
 いや、永眠しろとかそーゆー意味では無くてだ、ただ、ふつーに睡眠をとって下さい。でなければ、何のために俺は売春なんてサイテー行為に片足突っ込んだのってなるだろう?

 …………まぁ、どんな理由があるにしろ、金で人を買って好きなように扱おうだなんて、ホント最低の一言に尽きるけどな。
 つまるところ。
 おれ、さいてーってことですよね、はい。

 あまり音をたてないように、溜め息をつく。
 何度思い返しても、自分の行動が信じられない。
 冷静な判断が、ちっとも出来やしない。

 恋を自覚してしまったからだ。
 自分でも悲しくなるくらい無様だと分かっているのに、心が暴走して、暴走した心が勝手にカラダを動かしたり言葉を発せさせたりしている。

 そうでなければ、誰が建物の屋根から飛ぶものか。
 アレも恋に狂っていたからだとしか、言い訳の仕様が無い。

 コイツのどこに惚れる要素があったのかは、自分でもわかりません。
 見た目は良くても、中身は悪魔じゃん。
 じっと横顔を見つめて、イケメン爆ぜろ、と声には出さずなじってみた。

「あのさ。そんなに見られると気になるんですが」

 目を閉じたまま久賀が言って、飛び上がりそうなくらい驚いた。

(ばばばばれてるっ!見てたのがバレてるっ。何でだ、なんで?目ぇ閉じてるのにっ!)

 わたわたしながら「み、みみみてねぇよ!」ととっさに嘘をついた。

「あ、そ……ま、どうでも良いけどさ……あと、俺はいつまでこーしてりゃぁいいわけ?」

「いつまでって、お前まだ10分も経ってねぇよ」

 体を休めてもらうために多目的ホールの裏に来てから、まだほんの数分だ。
 膝の上にあった手がパタリと地面へ落ち、変わりにそこに頬を乗せた久賀が、細く開いた目を向けてきた。

(うっ……!その目は反則だろっ)

 だってエロい。
 セクシーで格好いいっ。
 ああ、どうして俺はコイツの視線に堪えうる容姿を持って生まれてこなかったのかな。美形な家系に生まれたかった。と、両親に平謝り確定な事を思ってみたり。ごめんよ、かぁさん。


 心は落ち着かずにどきどきはウルサイくらいだ。
 コイツの目が向けられてるってだけで、幸せでいっぱいになるなんて、かなりのイカレ具合だろう。

 だって、絶対に嫌われたと思ったからさ。
 いや、好かれてはいないのはちゃんと分かってるんだけど、怒らせて嫌われて、言葉を交わすことすら出来なくなるじゃないかって、そんな不安があった。だから、こうやってハナシが出来るだけでも、自然に頬が緩むくらい幸せなんだ。あれ、俺、いろいろと終わってないか?

「……なんで、笑ってんの?」

 突っ込まれて、慌てて掌で口元を覆い隠した。うわぁっー落ち着け俺っ。

「いいいや。なんとなくっ」

「あー……そ」

 ふいっと顔が逸れて、闇色の目が見えなくなった。

 途端に今度は悲しくなった。
 ずんっと落ち込む自分に、どうしようと不安が押し寄せる。
 こんな何でも無いことで一喜一憂とか。イカレ過ぎだ。てゆーか……挙動不審すぎて気持ち悪いだろう。ううっ、絶対引かれた。

「……ご、めん。笑うつもりは無いんだけど、なんか……勝手に顔が動いて……えっと、キモいよな俺」

 言いながら、気分は落ちる落ちる。そんなにメンタル面が弱いとか無かったハズだけどな俺。


「……………………べつに」

 かなり、ながぁーーーい沈黙の後、呟くように久賀が言った。
 何がべつになんだろう?
 なに?と聞き返したら、物凄く面倒くさそうに溜め息をつかれて、後悔と自責で心はズキズキする。
 溜め息一つでも、結構ダメージを受けるんだな。つらいなぁ。

「別に、理解不能なだけで、キモイとかは思わねぇよ」

 ぶっきらぼうな口調だったけど、そんな事を言ってくれて、バカみたいに気持ちは再上昇だ。
 ワンコ呼ばわりされても文句言えないや。
 だって、ご主人に頭撫でられた犬の反応だろ、コレ。


 好きで、埋まりそうだ。

(ど、どうするよ、俺)

 どうしよう。そわそわする。
 落ち着かない。
 叫びたいのか笑いたいのか逃げたいのか、一体どれだ。

 深呼吸っ深呼吸!と胸を押さえて大きく息を吸って吐く。
 ドキドキはちっとも減らないけれど、せめて頭の中だけでも正常に戻さなければっ。

(よしっ。冷静に、冷静にっ)

 自分に言い聞かせるように何度も繰り返した。
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