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番外編 僕らの友情2
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うなり声をあげながら悩んでいると、ヤレヤレという呟きが降ってくる。
「尾上は応援に行ってるわけか」
「そそっ」
「で、お前は尾上をとられたから拗ねているわけか?」
「ちげぇますよ、坂本くん。悩んでます」
最初に気付いたのは、久賀が数日学校を休んだ時。
確信を持ったのは、美術の時間だ。
二人一組になって、お互いの肖像を描きましょう、なんてゆー実に面倒くさい課題だ。
いつもなら確実にペアを組む二人が、その日は違っていて、とゆーか明らかに尾上の一方通行で……アイツがぽつりと呟いたセリフを聞いてから「ああ、そうなのか」と妙に納得しちまった。
―俺も久賀と組みたい―
まるで、一生分の願いみたいに、ひたむきだった。
そのときは、あ、何とかしてやらなきゃ。ってキモチになって、なんてゆーかフォロー的な事をしてみたんだけどね。冷静に考えると、それで良かったのかな……って、イロイロ悩んでる訳だよ。
「で、何を悩んでいるって?」
「ふっ。それはいくら坂もっちゃんでも、教えてやれねぇな」
友人(♂)が男に惚れてるかもしれねぇなんて、軽々しく口に出来ないでしょ。
俺だってさぁ誰かに相談できるものならそうしたいですよ。しかし、いくら親友でもこういうデリケートなハナシを本人抜きでするのはねぇ……。
「尾上が男に惚れたから引いてるのか?」
「心読まないで坂本くん!!!!」
坂もっちゃんに『ガチでこいつエスパー』の称号を与えます。きっと誰も異議は以下略。
いやぁ、前々から知ってたけど、ちょっと心読みすぎじゃないですかね?プライバシーってなんぞ。
「お前がわかりやすいだけだ」
「俺ってそんなに顔に出てますかねー?」
「大山だしな」
どうゆうこっちゃい!それは俺より尾上に当てはまるだろー。俺はそこそこ外面が分厚くて、ソレなりにウソつきですよー。
いやいや、そんなことよりも。
「マジスマン尾上」
坂もっちゃんにバレちゃったよ。
多分グラウンドにいるであろう尾上に向けて手を合わせて詫びた。
「よし、ま。バレちゃったなら仕方ないよな。謝ったし、きっと優しい尾上は許してくれるだろーよ」
「適当だな。なんだ、尾上に相談でもされたか」
「いや。俺が勝手にそうかなぁーって思ってるだけですが。でも、多分当たってるっしょ?」
「相手は久賀弟か」
「弟……あ、従兄弟くんが久賀兄ってことか、ナルホド」
「お前は馬鹿の癖に察しがいいな」
……聞きましたか皆さん。
何て酷い言いぐさでしょうか。
俺の繊細な心はいつか坂本くんによって破壊される予定です。ま、今じゃないからそのハナシは横によけておきましょうか。
繊細ってところで、坂もっちゃんに鼻で笑われたけど、それに対する文句も後回しにして。
「で、俺は友人としてどうしてやればいーでしょうね」
「どうとは?」
ぺったりと机に頬をくっつけて、視線は窓の向こうへと。
空の色はもうすぐ茜色に変わるだろう。
聞こえてくる歓声はよりいっそう大きくなった。
ここにはいない友人の顔を思い浮かべる。
そして、その友人が惚れている相手も。
「久賀はいーやつだけど、恋人には適さないと思うんだよねー」
今までの彼女たちも、何だか適当な、遊びみたいなカンジだっただろー。
だからさ俺としては、大事な友人をそんないい加減なヤツには任せられないってゆーか、傷ついて泣くと分かっている恋を、素直に応援して良いものか悩んでいるのだよ。
「このままさぁー、可能性がない恋を『障害は多いけどガンバレヨー』なんて励まして良いものか。傷が浅いうちに、諦めさせてやった方が、あいつのタメかなぁと思ったり」
「成就しない前提か」
「だって、ほら……久賀はねぇ?正直、無理っしょ」
あの外面と猫被りはそう簡単には崩せないよな。
何で分かるかって?そりゃぁね、お嬢さん。いわゆる『同じ穴の狢』ってヤツですよ。
俺と久賀のソレは厚みも精度もまったく違うけれど、俺もね昔はイイコの仮面を被ってたからね。
とゆーのも、小学生の時に親の都合であっちに転勤、はい転校。こっちに転勤、また転校の繰り返しだったわけだ。
ヨソモノが子どもの皮を被った悪魔たちのコミュニティーにひっとり飛び込んでゆくには、それなりのコツがいるんだよ。
にっこり笑顔や、バカな発言や、空気を敏感に読む能力や、情報収集能力。
クラスの派閥を知り、己にあった席を素早くスマートに手に入れる方法。
兎に角、ありとあらゆるワザを身につけた。
ま、中学から寮生活をはじめて転校しなくてよくなった事と、尾上や坂もっちゃんに出会って友人になってから徐々に猫被りも必要なくなっていったわけだ。
そんなわけで、騒がしいのも頭オカシイような発言も、ふざけてダチとじゃれつくのも、八割くらいは素の俺です。ま、残り二割ちょっと自信ないけど。
だからさ、小さい頃からヒトの顔色を伺って空気を読んできた俺にはなんとなく分かるんだよね。
久賀は八割は演技で、本心は二割くらいなんだろうな、と。
カッコ良く武装したうそつき男に惚れた友が、報われる日が来るとは到底思えないんですよ。
「仮に、久賀弟が誠実だったら、お前は反対しないわけか?」
「うん?そうだな。責任もって尾上を幸せにしてくれるなら祝福しますよ、モチロン」
「モチロンときたか……。男同士の惚れた腫れたに何かしら突っ込まなくていいのか」
「坂本君。古風だね。惚れた腫れたなんて表現、ピチピチ高校生がするのはどーよ。胸ドキ☆キュンキュンとか言えよ」
「それもどーかと思うが、取りあえずお前はイかれた脳みそをカスタマイズしてこい」
部品交換したら、もうちっとマトモに動くかしら。無理か。
「そーゆー坂もっちゃんはどーなの?同性愛は受け入れられない派?」
「当事者だ」
「はい?」
「まさにソレをしている最中だ。尾上を蔑む事は自分の恋を卑下する事と同じだ」
あっさり、サラリとカミングアウトなされましたね、坂本くん。
うーん。話が逸れちゃう気がするけど、確認すべきか、しないべきか。
悩むところですね。
「尾上は応援に行ってるわけか」
「そそっ」
「で、お前は尾上をとられたから拗ねているわけか?」
「ちげぇますよ、坂本くん。悩んでます」
最初に気付いたのは、久賀が数日学校を休んだ時。
確信を持ったのは、美術の時間だ。
二人一組になって、お互いの肖像を描きましょう、なんてゆー実に面倒くさい課題だ。
いつもなら確実にペアを組む二人が、その日は違っていて、とゆーか明らかに尾上の一方通行で……アイツがぽつりと呟いたセリフを聞いてから「ああ、そうなのか」と妙に納得しちまった。
―俺も久賀と組みたい―
まるで、一生分の願いみたいに、ひたむきだった。
そのときは、あ、何とかしてやらなきゃ。ってキモチになって、なんてゆーかフォロー的な事をしてみたんだけどね。冷静に考えると、それで良かったのかな……って、イロイロ悩んでる訳だよ。
「で、何を悩んでいるって?」
「ふっ。それはいくら坂もっちゃんでも、教えてやれねぇな」
友人(♂)が男に惚れてるかもしれねぇなんて、軽々しく口に出来ないでしょ。
俺だってさぁ誰かに相談できるものならそうしたいですよ。しかし、いくら親友でもこういうデリケートなハナシを本人抜きでするのはねぇ……。
「尾上が男に惚れたから引いてるのか?」
「心読まないで坂本くん!!!!」
坂もっちゃんに『ガチでこいつエスパー』の称号を与えます。きっと誰も異議は以下略。
いやぁ、前々から知ってたけど、ちょっと心読みすぎじゃないですかね?プライバシーってなんぞ。
「お前がわかりやすいだけだ」
「俺ってそんなに顔に出てますかねー?」
「大山だしな」
どうゆうこっちゃい!それは俺より尾上に当てはまるだろー。俺はそこそこ外面が分厚くて、ソレなりにウソつきですよー。
いやいや、そんなことよりも。
「マジスマン尾上」
坂もっちゃんにバレちゃったよ。
多分グラウンドにいるであろう尾上に向けて手を合わせて詫びた。
「よし、ま。バレちゃったなら仕方ないよな。謝ったし、きっと優しい尾上は許してくれるだろーよ」
「適当だな。なんだ、尾上に相談でもされたか」
「いや。俺が勝手にそうかなぁーって思ってるだけですが。でも、多分当たってるっしょ?」
「相手は久賀弟か」
「弟……あ、従兄弟くんが久賀兄ってことか、ナルホド」
「お前は馬鹿の癖に察しがいいな」
……聞きましたか皆さん。
何て酷い言いぐさでしょうか。
俺の繊細な心はいつか坂本くんによって破壊される予定です。ま、今じゃないからそのハナシは横によけておきましょうか。
繊細ってところで、坂もっちゃんに鼻で笑われたけど、それに対する文句も後回しにして。
「で、俺は友人としてどうしてやればいーでしょうね」
「どうとは?」
ぺったりと机に頬をくっつけて、視線は窓の向こうへと。
空の色はもうすぐ茜色に変わるだろう。
聞こえてくる歓声はよりいっそう大きくなった。
ここにはいない友人の顔を思い浮かべる。
そして、その友人が惚れている相手も。
「久賀はいーやつだけど、恋人には適さないと思うんだよねー」
今までの彼女たちも、何だか適当な、遊びみたいなカンジだっただろー。
だからさ俺としては、大事な友人をそんないい加減なヤツには任せられないってゆーか、傷ついて泣くと分かっている恋を、素直に応援して良いものか悩んでいるのだよ。
「このままさぁー、可能性がない恋を『障害は多いけどガンバレヨー』なんて励まして良いものか。傷が浅いうちに、諦めさせてやった方が、あいつのタメかなぁと思ったり」
「成就しない前提か」
「だって、ほら……久賀はねぇ?正直、無理っしょ」
あの外面と猫被りはそう簡単には崩せないよな。
何で分かるかって?そりゃぁね、お嬢さん。いわゆる『同じ穴の狢』ってヤツですよ。
俺と久賀のソレは厚みも精度もまったく違うけれど、俺もね昔はイイコの仮面を被ってたからね。
とゆーのも、小学生の時に親の都合であっちに転勤、はい転校。こっちに転勤、また転校の繰り返しだったわけだ。
ヨソモノが子どもの皮を被った悪魔たちのコミュニティーにひっとり飛び込んでゆくには、それなりのコツがいるんだよ。
にっこり笑顔や、バカな発言や、空気を敏感に読む能力や、情報収集能力。
クラスの派閥を知り、己にあった席を素早くスマートに手に入れる方法。
兎に角、ありとあらゆるワザを身につけた。
ま、中学から寮生活をはじめて転校しなくてよくなった事と、尾上や坂もっちゃんに出会って友人になってから徐々に猫被りも必要なくなっていったわけだ。
そんなわけで、騒がしいのも頭オカシイような発言も、ふざけてダチとじゃれつくのも、八割くらいは素の俺です。ま、残り二割ちょっと自信ないけど。
だからさ、小さい頃からヒトの顔色を伺って空気を読んできた俺にはなんとなく分かるんだよね。
久賀は八割は演技で、本心は二割くらいなんだろうな、と。
カッコ良く武装したうそつき男に惚れた友が、報われる日が来るとは到底思えないんですよ。
「仮に、久賀弟が誠実だったら、お前は反対しないわけか?」
「うん?そうだな。責任もって尾上を幸せにしてくれるなら祝福しますよ、モチロン」
「モチロンときたか……。男同士の惚れた腫れたに何かしら突っ込まなくていいのか」
「坂本君。古風だね。惚れた腫れたなんて表現、ピチピチ高校生がするのはどーよ。胸ドキ☆キュンキュンとか言えよ」
「それもどーかと思うが、取りあえずお前はイかれた脳みそをカスタマイズしてこい」
部品交換したら、もうちっとマトモに動くかしら。無理か。
「そーゆー坂もっちゃんはどーなの?同性愛は受け入れられない派?」
「当事者だ」
「はい?」
「まさにソレをしている最中だ。尾上を蔑む事は自分の恋を卑下する事と同じだ」
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