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番外編 僕らの友情4
しおりを挟む試合は現在、ハーフタイム中らしい。
各チームの選手が休憩中だ。
さて我がクラスのヒーローくんはどこかな、と視線を巡らせて……あ、尾上と喋ってんじゃん。チームメイトの輪から抜けて、平然としてやがるところは流石です。
久賀が晴れやかに笑って何かを言って(二人の会話は聞こえなかったんですけどね)チームメイトのところへ戻っていった。
後半戦が始まるらしい。
尾上の横顔を見て、何とも言えない気分になった。
そんな露骨に恋してますって顔してたら、俺以外にもバレるぞ。
ホント、嘘をつけないイキモノですね。
「おっがみー」
言いたいこととか、聞きたいこととか、色々あるんですけどね。取り敢えずは、そーゆーアレコレを飲み込んで、あっかるい笑顔で近づいてみましょうかね。
「ダーリンは活躍中ですかー?おおぅ。後半も出だしから目立ってんじゃん、彼氏」
「誰がダーリンで彼氏だよ。アホか!つーかお前さぁ、坂本と帰るって言ってなかった?」
「振られちゃった。大山くんハートブレイク」
「はいはい、どーせバカな事を言って怒らせたんだろう。馬鹿だから」
今日はヤケに友人ズの言葉がキツいと思うのは俺だけですかね。
いや。坂もっちゃんは兎も角、尾上はいつもどーりか。
いつもどーりのツッコミをキツいとか冷たいとか感じちゃうのは、やっぱり季節の所為ですか。
「んあー。秋はセンチメンタルになるー」
「突然どーしたよ、頭でも沸いたか、大山」
「視線は試合に釘付けでも、心配してくれるだけで満足だ、おおぅ!久賀ちゃんったら、どんだけ活躍してんの。も、入部しちゃえばいいんじゃね」
ゴールを決めた同級生の活躍っぷりに、なぁ、そう思わないか?と、隣に視線を移して、ちょっぴり静止した。
ああ。何て顔してんだよ、尾上。
中学校の三年間と、高校に入ってから今日まで、コイツとはそれなりに親しい人間関係であったと思うのだが、こんな表情ははじめて見た。
悲しいと嬉しいが混ぜ混ぜになった、そんな横顔だ。
そんなに、好きなのか、と思った。
過去、コイツの恋を応援した事もあるけど、その時とは明らかに本気度が違うよな。
そんなに切なそうな目をして、誰かを見ることなんて無かった。
友人の表情には気づかない振りをして、グラウンドに視線を向けた。
「まさにスポーツの秋だな」
「うん、そーだな」
「読書の秋とか食欲の秋とかゆーよな」
「そーだな」
「恋の秋とか」
「ばーか。恋は春のイメージだろ」
「ああ、そうか。あれ、彼氏どこ行った」
「彼氏じゃねぇけど、久賀ならあっち」
指さす方向に我らがヒーローくんを見つけて、流石に恋の力はちげぇなぁ、なんて思ったり。
恋をするとね、好きな人の周りだけ輝いて見えるの。なんて胸焼け確定の乙女チック発言をしていたのは、クラスの女子たちだっただろうか。
(尾上にも、誰かさんがそんな風に見えてるんですかねー?)
どんなにヒトにあふれた場所であっても、大切な誰かをすぐに見つけられる。
なぜなら、その人の周りだけ輝いているからだ。
なんて、随分と脳みそお花畑な思考回路ですよねー。
でも、悪くないと思っている自分もいたりして、変なの。
「俺も恋したーい!」
「いきなりなんだよ」
「恋がしたくなったから主張してみた」
「すれば良いじゃん。あとさ、試合に集中したいからちょと黙って」
ヒドイわー。みんな友情より恋が優先かよ。最近ほんと久賀久賀ばっで構ってくれないし、大山くん拗ねちゃうよ?
大山くん。本日、二度目のハートブレイク。ああ、悲しいぜ。誰か慰めてくれないかなぁ。
くすん。
焼け空は遠くに微かに残るだけで、後は夜の色に変わっていた。
尾上と二人で帰り道をとぼとぼゆく。
遠くでカラスが鳴こうものなら、余計にしんみりしちゃう夕方マジック。
「久賀は大活躍だったなぁー」
この話題はちょっとどうかなぁなんて思ったけど「だよな」と相槌を打って尾上が微笑したからこっそりほっとした。
まったく、久賀め。俺の大事な親友を落ち込ませやがって、と理不尽に怒ってみる。
サッカーの試合は、レギュラーメンバーが不揃いであるにも関わらず、本校の勝利だった。
女の子たちはきゃぁきゃぁ言い過ぎてみんな声がすごいことになっていたし、たかだか練習試合で選手は号泣し、なぜだか監督を胴上げ。
俺と尾上の二人も、女子顔負けなキャピキャピ具合のハシャぎぷりだったという。
うん、空気とノリは恐ろしい。
で、俺はねてっきり久賀と尾上が一緒に帰るんだと思ってたんだけど、横から鳶がやってきて油揚げはまんまと盗られてしまったのだった。
しかし何度考えても、久賀と安田のコンビってのはしっくりこねぇな。
久賀のうそつきスマイルも、2割増。
つまりうそつき10割。外面100パーセント。
あんなんで、疲れないんでしょーかねー?
俺のカンチガイかもだが、尾上といるときの方が、なんか、楽そうってゆーか、自然なカンジなんだけどな……ま、久賀とはそんなに親しくねぇから、実際のトコロはわからないですけども。
「やま……おおやま!」
「うほぃ!」
いや、なんだ。うほぃって。
突然話しかけられて、驚いた。あー、びっくりした。心臓飛び出るかと思ったよ。
隣を歩く尾上に視線を向ける。なんですかいテルちゃん。急に大声だして。
「お前ぼーっとしてたけど大丈夫か?悩み事あるんだろ、聞くよ?」
「うへぃ……?悩み事」
突然なんだよテルちゃん。俺って悩み事がありますって顔してた?とゆーか、悩み事あるのはお前の方だろ?
「急に恋したいとか叫ぶし、なんか横顔に寂しいって書いてあるし、何だよ、本気で誰か気になるヤツでも出来たのか?俺に出来ることなら協力するぞ、相棒」
にっと笑った尾上は握り拳をつくって、俺の肩口をドンッと叩いた。もちろん力加減はしてあった。
なんてゆーかさー……ヒトの悩みまで抱える余裕なんかないくせに、お前のお人好し加減は相変わらずだよね。
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