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ジュンは学内にも学外にも友達がたくさんいて、良くないこともたくさんしているようだ。お金持ちで明るいジュンには人が寄ってくる。派手な見た目と騒がしい言動。ジュンと一緒にいると、勇斗はとても疲れた。なぜジュンが自分に絡んでくるのか。勇斗はわからなかった。
グラウンドに出ると、体育が担当教科の学年主任とクラスメイト達がいた。
「よーし、まず準備運動から始めるぞ~…おい、遅いぞ火鷹、内村!外周走ってこい!」
「あぁ!?松本まだ来てねぇだろ!」
「松本君が来てないから何だ!お前達に関係ないだろうが、走ってこい!」
「…んだと、てめ」
「ジュン君、い、行こう、走ろうよ」
学年主任に怒鳴られて、勇斗はジュンを引っ張って走り始めた。ジュンは不貞腐れているものの、勇斗と共に走り出す。
松本大翔が来てから授業が始まるのは暗黙の了解だったが、学年主任は気まぐれな人間だ。走っているうちに松本大翔と藤野佳奈多がグラウンドに現れたが、彼らがランニングを強要されることはなかった。きっと遅刻という扱いにもされていない。学年主任はあからさまに生徒を格付けし、松本大翔に対してはわかりやすく媚びへつらっている。
ジュンに対してこんなに強く当たる教師は他にいない。他の教師達は家柄を見て口を出すか出さないかを判断している。
学年主任はジュンの更生を目指してあえて厳しく接しているのだとみんなの前で言っていた。同級生達は学年主任を良く思ってはいないが、ジュンと仲の良くない生徒は素行の悪いジュンも怖いので、このときばかりはジュンに強く出てくれる学年主任に賛同している。
ジュンは学年主任を毛嫌いしているが、勇斗にとってもあまり好きな先生ではない。怖いので大人しく従ったほうが良いと判断した。
走り終えてクラスメイトの元に戻ると、勇斗は声をかけられた。吐きそうになって鼻水を垂らしながら顔を上げる。
「大丈夫?遅刻してたね」
勇斗の憧れの、五十嵐昴だった。勇斗は肩で息をしながら呼吸を整えていたが慌てて下を向いた。こんな疲れてくたびれた顔を見られたくない。
「あ、ふっ、だっ、だいじょぶ、でふっ」
「体調、悪かったの?」
「えっ?へ、へひ、あの、げっ、元気!れす!」
「ふっ…ふふふ…元気、そうだね。良かった。ごめん、笑って。これ使って。行ってくるね」
走ってきたばかりであることと、昴を目の前にした緊張で勇斗はうまく話せない。そんな勇斗に昴は吹き出すように笑っていた。目の前にティッシュが差し出されて、勇斗の手に握らせてくれた。
恥ずかしさでますます顔が上げられなくなった勇斗だったが、昴の靴が遠ざかってしまったのですぐさま顔を上げた。
昴は学年主任に呼ばれていた。もうすぐ行われる体育祭について、話をしているようだ。
「五十嵐君は松本君の前だ。頼んだぞ。一度、通しでやってみたいんだが…いいかなぁ?松本君」
他の生徒を端に追いやってリレーの練習が行われた。昴は最後から二番目、アンカーの松本大翔にバトンを渡す。見守る同級生達は、練習なのに大声で応援し始める。
開始の合図と共にリレーがスタートした。選手達は全力ではなく、バトンを誰に渡すのか等を確認をしながら走ってるのだが、見ている生徒は熱気と興奮に包まれていた。普段勉強ばかりで面白みのない生活を送っているからか、こんな時、誰が速いだのどこが勝つだのと盛り上がって沸き立ってしまう。
昴がバトンを受け取り、大きな歓声が上がった。昴は勉強もできるが運動も得意だ。あっという間に松本大翔の手元にバトンを渡してしまった。勇斗はもっと昴を見ていたかったのに。
バトンを渡された松本大翔も走り出す。昴のときよりも大きな歓声が上がった。まったく本気を出していないように見える彼だが、それでも速かった。昴も松本大翔も、走る姿は美しくすらある。
松本大翔は上背もあって男らしい体つきをしているが、顔面は美しいと評されていた。女性の顔とはまた違うのだが、男臭い顔でもない。なんというか、綺麗な顔だ。
昴は松本大翔に比べたら男らしい顔つきをしている。背も高く、がっしりとした体つきから男臭さが漂うかと思いきや、纏う空気は柔らかい。柔和な性格が内からにじみ出ているかのような、いつも余裕をもった昴の態度や空気が、勇斗は大好きだった。
「あ~格好いい!やっぱり松本君だよねぇ」
「わかる!でも五十嵐君も格好いいのよ。迷う~」
「迷う~って。お前は選ばれねぇから!」
そばにいたクラスメイトが笑いながら話をしている。勇斗は聞き耳を立てた。
グラウンドに出ると、体育が担当教科の学年主任とクラスメイト達がいた。
「よーし、まず準備運動から始めるぞ~…おい、遅いぞ火鷹、内村!外周走ってこい!」
「あぁ!?松本まだ来てねぇだろ!」
「松本君が来てないから何だ!お前達に関係ないだろうが、走ってこい!」
「…んだと、てめ」
「ジュン君、い、行こう、走ろうよ」
学年主任に怒鳴られて、勇斗はジュンを引っ張って走り始めた。ジュンは不貞腐れているものの、勇斗と共に走り出す。
松本大翔が来てから授業が始まるのは暗黙の了解だったが、学年主任は気まぐれな人間だ。走っているうちに松本大翔と藤野佳奈多がグラウンドに現れたが、彼らがランニングを強要されることはなかった。きっと遅刻という扱いにもされていない。学年主任はあからさまに生徒を格付けし、松本大翔に対してはわかりやすく媚びへつらっている。
ジュンに対してこんなに強く当たる教師は他にいない。他の教師達は家柄を見て口を出すか出さないかを判断している。
学年主任はジュンの更生を目指してあえて厳しく接しているのだとみんなの前で言っていた。同級生達は学年主任を良く思ってはいないが、ジュンと仲の良くない生徒は素行の悪いジュンも怖いので、このときばかりはジュンに強く出てくれる学年主任に賛同している。
ジュンは学年主任を毛嫌いしているが、勇斗にとってもあまり好きな先生ではない。怖いので大人しく従ったほうが良いと判断した。
走り終えてクラスメイトの元に戻ると、勇斗は声をかけられた。吐きそうになって鼻水を垂らしながら顔を上げる。
「大丈夫?遅刻してたね」
勇斗の憧れの、五十嵐昴だった。勇斗は肩で息をしながら呼吸を整えていたが慌てて下を向いた。こんな疲れてくたびれた顔を見られたくない。
「あ、ふっ、だっ、だいじょぶ、でふっ」
「体調、悪かったの?」
「えっ?へ、へひ、あの、げっ、元気!れす!」
「ふっ…ふふふ…元気、そうだね。良かった。ごめん、笑って。これ使って。行ってくるね」
走ってきたばかりであることと、昴を目の前にした緊張で勇斗はうまく話せない。そんな勇斗に昴は吹き出すように笑っていた。目の前にティッシュが差し出されて、勇斗の手に握らせてくれた。
恥ずかしさでますます顔が上げられなくなった勇斗だったが、昴の靴が遠ざかってしまったのですぐさま顔を上げた。
昴は学年主任に呼ばれていた。もうすぐ行われる体育祭について、話をしているようだ。
「五十嵐君は松本君の前だ。頼んだぞ。一度、通しでやってみたいんだが…いいかなぁ?松本君」
他の生徒を端に追いやってリレーの練習が行われた。昴は最後から二番目、アンカーの松本大翔にバトンを渡す。見守る同級生達は、練習なのに大声で応援し始める。
開始の合図と共にリレーがスタートした。選手達は全力ではなく、バトンを誰に渡すのか等を確認をしながら走ってるのだが、見ている生徒は熱気と興奮に包まれていた。普段勉強ばかりで面白みのない生活を送っているからか、こんな時、誰が速いだのどこが勝つだのと盛り上がって沸き立ってしまう。
昴がバトンを受け取り、大きな歓声が上がった。昴は勉強もできるが運動も得意だ。あっという間に松本大翔の手元にバトンを渡してしまった。勇斗はもっと昴を見ていたかったのに。
バトンを渡された松本大翔も走り出す。昴のときよりも大きな歓声が上がった。まったく本気を出していないように見える彼だが、それでも速かった。昴も松本大翔も、走る姿は美しくすらある。
松本大翔は上背もあって男らしい体つきをしているが、顔面は美しいと評されていた。女性の顔とはまた違うのだが、男臭い顔でもない。なんというか、綺麗な顔だ。
昴は松本大翔に比べたら男らしい顔つきをしている。背も高く、がっしりとした体つきから男臭さが漂うかと思いきや、纏う空気は柔らかい。柔和な性格が内からにじみ出ているかのような、いつも余裕をもった昴の態度や空気が、勇斗は大好きだった。
「あ~格好いい!やっぱり松本君だよねぇ」
「わかる!でも五十嵐君も格好いいのよ。迷う~」
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