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「…へ、へへっ…」
勇斗はへらっと笑って誤魔化した。勇斗はジュンに抱きしめられた。
「俺も、好きだ。勇斗のこと…」
「え?…へへ、へへへ…」
ジュンが怒り出す気配がないので、勇斗は笑った。笑って同意していたほうが今は怒られないと判断した。ジュンが何を言っているのかはわかりたくないので、勇斗は考えを放棄した。
裸のままべたべたとくっつかれて不快だった休日が終わり、勇斗は帰宅することにした。ジュンは泊まっていけと引き止めたが、勇斗は拒否した。両親も心配している。帰らなければならない理由がある。
「じゃあ、ジュン君、さよなら」
帰りの車を外で待とうと荷物をまとめて、ソファに投げ捨てられていた制服にも手を伸ばす。その手をジュンに止められた。
「なにしてんだよ」
ジュンの問に、勇斗は首を傾げて恐る恐る口を開く。
「だって…これ、僕に、くれるって…おうち、来たから…」
ジュンの眉間と鼻の頭に皺が寄る。ジュンの機嫌が悪くなっている。
「勇斗。お前、俺が好きなんだよな?」
聞かれて勇斗は、すぐに返事が返せなかった。
嫌い。
うっかり本音を漏らすところだった。勇斗は視線を泳がせてから笑う。
「へ、へへ。えへへ」
笑えば誤魔化せると思ったが、ジュンは制服を取り上げてしまった。
「お前にやる。でも持って帰らせねぇ。ここに置いておく。見たかったらまたうちに来い。わかったな?」
低い声を出されて、一瞬昴と話しているのかと勇斗は思った。
昴が怒っている。
勇斗は慌てて何度も首を縦に振った。
昴が怒っているところなんて見たことがない。きっと怒りを感じたらこんな声を出すのではないだろうか。
昴に嫌われる。あんなに好きだと言ってくれたのに。最中の、昴の甘い声を思い出す。あんなに求めてくれたのに、嫌われてしまったら、勇斗はどうしたらいいのかわからない。
気づくとジュンは満足げに笑っていた。目の前にいるのはジュンで、昴じゃない。
「待ってるからな。勇斗ぉ」
語尾を間延びさせる、ジュン独特の話し方だ。さっきまで見えていた昴は一体何だったのだろう。勇斗はへらっと笑った。
休みが明けて登校すると教室内の雰囲気が変わっていた。山田が松本大翔に縋りつき、松本大翔は一切山田を見ない。藤野佳奈多は居心地悪そうに傍にいる。
山田が何かやらかした。
ついに飽きられた。
笑ってみていたクラスメイトも次第に視線を逸らすようになった。あまりの山田の必死さと松本大翔の拒絶する姿に見ていられなくなった。今までの姫達はすぐに飽きられ、捨てられていた。山田は傍にいる期間が少し長かっただけで、他の姫と変わらない。やはり松本大翔の姫はただ一人、藤野佳奈多だけだ。今回は気まぐれに浮気心でも湧いてしまっただけなのだろう。山田自身もそう思っていたはずだ。
最初は笑って見ていたジュンも顔をしかめている。みな、どうしたら良いのかわからず、その日一日教室の空気は最悪だった。
翌日、山田とその取り巻き達が休みを取った。
昨日の放課後に取り巻きを引き連れて松本大翔に対峙する山田を見た生徒が何人かいた。取り巻きに教室を追い出されたそうで、実際何があったのかわからない。しかし噂は学園中を駆け巡った。
松本大翔が取り巻き達を打ちのめした。
藤野佳奈多がそれを焚き付けた。
山田は松本大翔と心中するつもりだった。
当の松本大翔は涼しい顔で登校してきた。藤野佳奈多を伴って。二人が一緒にいるのは今まで通りだが、二人の空気が変わった。後ろをついて回っていた藤野佳奈多は、松本大翔の隣に立って歩いていた。そんな藤野佳奈多を、松本大翔がエスコートをしている。二人は本物の姫と騎士になった。
やっかむ人間もいたが、多くは羨望の眼差しで二人を見つめていた。
誰もが知る、甘い恋人同士の二人。
ますます学園内は色めき立ち、その異様な興奮に包まれたまま、夏休みへと突入していった。
勇斗はへらっと笑って誤魔化した。勇斗はジュンに抱きしめられた。
「俺も、好きだ。勇斗のこと…」
「え?…へへ、へへへ…」
ジュンが怒り出す気配がないので、勇斗は笑った。笑って同意していたほうが今は怒られないと判断した。ジュンが何を言っているのかはわかりたくないので、勇斗は考えを放棄した。
裸のままべたべたとくっつかれて不快だった休日が終わり、勇斗は帰宅することにした。ジュンは泊まっていけと引き止めたが、勇斗は拒否した。両親も心配している。帰らなければならない理由がある。
「じゃあ、ジュン君、さよなら」
帰りの車を外で待とうと荷物をまとめて、ソファに投げ捨てられていた制服にも手を伸ばす。その手をジュンに止められた。
「なにしてんだよ」
ジュンの問に、勇斗は首を傾げて恐る恐る口を開く。
「だって…これ、僕に、くれるって…おうち、来たから…」
ジュンの眉間と鼻の頭に皺が寄る。ジュンの機嫌が悪くなっている。
「勇斗。お前、俺が好きなんだよな?」
聞かれて勇斗は、すぐに返事が返せなかった。
嫌い。
うっかり本音を漏らすところだった。勇斗は視線を泳がせてから笑う。
「へ、へへ。えへへ」
笑えば誤魔化せると思ったが、ジュンは制服を取り上げてしまった。
「お前にやる。でも持って帰らせねぇ。ここに置いておく。見たかったらまたうちに来い。わかったな?」
低い声を出されて、一瞬昴と話しているのかと勇斗は思った。
昴が怒っている。
勇斗は慌てて何度も首を縦に振った。
昴が怒っているところなんて見たことがない。きっと怒りを感じたらこんな声を出すのではないだろうか。
昴に嫌われる。あんなに好きだと言ってくれたのに。最中の、昴の甘い声を思い出す。あんなに求めてくれたのに、嫌われてしまったら、勇斗はどうしたらいいのかわからない。
気づくとジュンは満足げに笑っていた。目の前にいるのはジュンで、昴じゃない。
「待ってるからな。勇斗ぉ」
語尾を間延びさせる、ジュン独特の話し方だ。さっきまで見えていた昴は一体何だったのだろう。勇斗はへらっと笑った。
休みが明けて登校すると教室内の雰囲気が変わっていた。山田が松本大翔に縋りつき、松本大翔は一切山田を見ない。藤野佳奈多は居心地悪そうに傍にいる。
山田が何かやらかした。
ついに飽きられた。
笑ってみていたクラスメイトも次第に視線を逸らすようになった。あまりの山田の必死さと松本大翔の拒絶する姿に見ていられなくなった。今までの姫達はすぐに飽きられ、捨てられていた。山田は傍にいる期間が少し長かっただけで、他の姫と変わらない。やはり松本大翔の姫はただ一人、藤野佳奈多だけだ。今回は気まぐれに浮気心でも湧いてしまっただけなのだろう。山田自身もそう思っていたはずだ。
最初は笑って見ていたジュンも顔をしかめている。みな、どうしたら良いのかわからず、その日一日教室の空気は最悪だった。
翌日、山田とその取り巻き達が休みを取った。
昨日の放課後に取り巻きを引き連れて松本大翔に対峙する山田を見た生徒が何人かいた。取り巻きに教室を追い出されたそうで、実際何があったのかわからない。しかし噂は学園中を駆け巡った。
松本大翔が取り巻き達を打ちのめした。
藤野佳奈多がそれを焚き付けた。
山田は松本大翔と心中するつもりだった。
当の松本大翔は涼しい顔で登校してきた。藤野佳奈多を伴って。二人が一緒にいるのは今まで通りだが、二人の空気が変わった。後ろをついて回っていた藤野佳奈多は、松本大翔の隣に立って歩いていた。そんな藤野佳奈多を、松本大翔がエスコートをしている。二人は本物の姫と騎士になった。
やっかむ人間もいたが、多くは羨望の眼差しで二人を見つめていた。
誰もが知る、甘い恋人同士の二人。
ますます学園内は色めき立ち、その異様な興奮に包まれたまま、夏休みへと突入していった。
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