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リーダーを選んで、リーダーが取りまとめをする。藤野佳奈多は目を丸くして昴を見た。松本大翔も昴を見た。見た、というよりも睨んでいるといっていいだろう。昴は笑って首を傾げる。
「だめかな?」
「う…ぼ、ぼく、あの、五十嵐君、リーダー、かな、て、…」
「俺はクラス委員長で人をまとめる経験はもうしているし、この授業、リーダーってポジションはもちろんだけど、それを支える立場も経験させるって意図があると思うんだ。できれば俺は、フォローする立場にまわりたい。松本君はどうかな。俺のフォローも俺にフォローされるのも、嫌でしょ?」
松本大翔から返事はない。
どちらかといえば松本大翔もリーダータイプだろう。しかし松本大翔がリーダーとなると藤野佳奈多と昴で意見をすり合わせていくことになる。きっと松本大翔はそれも気に入らないだろう。それなら藤野佳奈多に間を取り持ってもらって、松本大翔と昴が意見を出し合ったほうがましなはずだ。
昴の考えを察したのだろう。松本大翔は藤野佳奈多の手を取った。
「かなちゃん。リーダー、してくれる?」
「うっ?う、あぅ…」
「松本君と俺のフォローじゃ、頼りないかな?」
藤野佳奈多はびくんと体を震わせて、昴に向かって激しく首を振った。
「う、うぅ…あの、五十嵐君、ひろくんも、頼り、なるよ。心強い、から…あの、やる、ぼく」
「彼のフォローは俺がやる。お前は何もしなくていい」
藤野佳奈多はリーダーを承諾してくれた。やっと、松本大翔は昴を見てくれた。有無を言わさぬ命令口調に、昴は苦笑してしまう。しかし、彼らしい発言だ。昴は他人に、こんなふうに扱われたことはない。まったく悪い気がしない。
「わかった。じゃあ松本君、早速だけど。どういった差別について話し合おうか」
「絞らなくていい。大抵の差別の根底にあるのは差別する側の固定観念と正義感だ。人間が人間である以上、なくならない」
「それは…ものすごい決めつけだな。『差別をなくすために何をすべきか』っていう議題に対して、人間だからなくならないで終わらせるの?」
「終わらせる。差別をなくすためにできることはない。もう話すことはない」
「うーん。俺はもっと、歩み寄りが必要だと思うんだけど…言語を用いる以上、話し合って解決できることもあると思うよ。差別についても然り。理解し合うことで差別は無くせるんじゃないかな」
昴の問いに、松本大翔は答えない。まるで聞こえていないかのようだ。先程の、もう話すことはないと言う宣言を今実行している。
昴は笑ってしまった。
松本大翔はやはり、松本大翔だ。幼稚園児の頃、松本大翔はもっとヤンチャで年相応の子供だった。それが、この学園の小学部に上がった頃から、とても大人びて見えるようになった。学園で過ごす上で、この性格が形成されたのだろうか。藤野佳奈多以外にはとても冷たく横暴になる。居丈高、というのか。騎士や王子というよりは王様のようだ。
昴は松本大翔のこの正直な態度が羨ましくて眩しい。
「う…あの、けんか、だめ、だよ。話し合い、を…」
「喧嘩なんかしてないよ。かなちゃんがいてくれるから、ちゃんとお話できたよ。今の話をまとめたら終わりだね。一緒にやろう」
「…俺は、仲間に入れてくれないんだね。松本君の言う通り。差別はなくならないね」
昴はしょんぼりと肩を落としてみせた。せっかくの三人一組なのに、松本大翔は昴に構う気がまったくない。
「あ、う、ご、ごめんね、五十嵐、君…ひろくん、ちゃんと、お話、しよ?あの…ひろく…ま、松本君、は、差別、なくならない。五十嵐君、は、なくな、る。は、話し、合うと」
「…かなちゃんは、どう思う?」
藤野佳奈多は気落ちしている昴に慌てたように場を取り持ってくれた。松本大翔の、先程までの昴に対する態度は鳴りを潜めた。トゲのなくなった松本大翔は藤野佳奈多の手を取る。
いつも松本大翔の影に隠れて目立たないが、この松本大翔をうまく操縦している彼は中々の策士のようだ。
「今のところ、意見は真逆だね。藤野君の意見も聞きたいな」
昴は顔を上げて藤野佳奈多に問いかける。藤野佳奈多は何度も顔を上げたりうつむいたりを繰り返した。手助けをしたほうが良いかと思ったが、口を出そうとすると松本大翔が睨みつけてくる。瞳が『黙っていろ』と言っている。察した昴は大人しく待った。
「だめかな?」
「う…ぼ、ぼく、あの、五十嵐君、リーダー、かな、て、…」
「俺はクラス委員長で人をまとめる経験はもうしているし、この授業、リーダーってポジションはもちろんだけど、それを支える立場も経験させるって意図があると思うんだ。できれば俺は、フォローする立場にまわりたい。松本君はどうかな。俺のフォローも俺にフォローされるのも、嫌でしょ?」
松本大翔から返事はない。
どちらかといえば松本大翔もリーダータイプだろう。しかし松本大翔がリーダーとなると藤野佳奈多と昴で意見をすり合わせていくことになる。きっと松本大翔はそれも気に入らないだろう。それなら藤野佳奈多に間を取り持ってもらって、松本大翔と昴が意見を出し合ったほうがましなはずだ。
昴の考えを察したのだろう。松本大翔は藤野佳奈多の手を取った。
「かなちゃん。リーダー、してくれる?」
「うっ?う、あぅ…」
「松本君と俺のフォローじゃ、頼りないかな?」
藤野佳奈多はびくんと体を震わせて、昴に向かって激しく首を振った。
「う、うぅ…あの、五十嵐君、ひろくんも、頼り、なるよ。心強い、から…あの、やる、ぼく」
「彼のフォローは俺がやる。お前は何もしなくていい」
藤野佳奈多はリーダーを承諾してくれた。やっと、松本大翔は昴を見てくれた。有無を言わさぬ命令口調に、昴は苦笑してしまう。しかし、彼らしい発言だ。昴は他人に、こんなふうに扱われたことはない。まったく悪い気がしない。
「わかった。じゃあ松本君、早速だけど。どういった差別について話し合おうか」
「絞らなくていい。大抵の差別の根底にあるのは差別する側の固定観念と正義感だ。人間が人間である以上、なくならない」
「それは…ものすごい決めつけだな。『差別をなくすために何をすべきか』っていう議題に対して、人間だからなくならないで終わらせるの?」
「終わらせる。差別をなくすためにできることはない。もう話すことはない」
「うーん。俺はもっと、歩み寄りが必要だと思うんだけど…言語を用いる以上、話し合って解決できることもあると思うよ。差別についても然り。理解し合うことで差別は無くせるんじゃないかな」
昴の問いに、松本大翔は答えない。まるで聞こえていないかのようだ。先程の、もう話すことはないと言う宣言を今実行している。
昴は笑ってしまった。
松本大翔はやはり、松本大翔だ。幼稚園児の頃、松本大翔はもっとヤンチャで年相応の子供だった。それが、この学園の小学部に上がった頃から、とても大人びて見えるようになった。学園で過ごす上で、この性格が形成されたのだろうか。藤野佳奈多以外にはとても冷たく横暴になる。居丈高、というのか。騎士や王子というよりは王様のようだ。
昴は松本大翔のこの正直な態度が羨ましくて眩しい。
「う…あの、けんか、だめ、だよ。話し合い、を…」
「喧嘩なんかしてないよ。かなちゃんがいてくれるから、ちゃんとお話できたよ。今の話をまとめたら終わりだね。一緒にやろう」
「…俺は、仲間に入れてくれないんだね。松本君の言う通り。差別はなくならないね」
昴はしょんぼりと肩を落としてみせた。せっかくの三人一組なのに、松本大翔は昴に構う気がまったくない。
「あ、う、ご、ごめんね、五十嵐、君…ひろくん、ちゃんと、お話、しよ?あの…ひろく…ま、松本君、は、差別、なくならない。五十嵐君、は、なくな、る。は、話し、合うと」
「…かなちゃんは、どう思う?」
藤野佳奈多は気落ちしている昴に慌てたように場を取り持ってくれた。松本大翔の、先程までの昴に対する態度は鳴りを潜めた。トゲのなくなった松本大翔は藤野佳奈多の手を取る。
いつも松本大翔の影に隠れて目立たないが、この松本大翔をうまく操縦している彼は中々の策士のようだ。
「今のところ、意見は真逆だね。藤野君の意見も聞きたいな」
昴は顔を上げて藤野佳奈多に問いかける。藤野佳奈多は何度も顔を上げたりうつむいたりを繰り返した。手助けをしたほうが良いかと思ったが、口を出そうとすると松本大翔が睨みつけてくる。瞳が『黙っていろ』と言っている。察した昴は大人しく待った。
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