セリと王子

田中ボサ

文字の大きさ
2 / 40

2 逃げきれず

しおりを挟む

 思えばこの悪魔に出会った時から私の人生はおかしくなったと思う。

10歳のころ王宮に貴族の子供たちが集められた。

男爵から公爵まで10歳になる男女だ。

貴族の子供として認めてもらうためのパーティだ。

いずれ学院に通うことになる子供たちが顔見知りを作る、という意味合いも持っていた。



何故かそこに2歳上のはずの第2王子がやってきた。

後で聞けば側近候補を各学年で見極めていたらしい。



王子の登場に男女問わず盛り上がっている。

どんな素敵な王子だろうと背伸びして見たとき、王子と目があった。



ぞわわ~っと悪寒が走った。

やばい、こいつはかなりやばい奴だ。

絶対近付いてはいけない。

王子の周りには黒い羽根が舞っているようにみえた。

そのオーラは真っ黒だ。

冷汗が止まらない。

そろり、そろりと後ろに下がり、距離をとる。



無事に逃げられた、庭園の人気のない場所まで気配を殺して移動してきたのだ。

周囲には誰もいない。

ほっと一息ついたところに、背後に気配を感じた。

そ~っっと振り返るとなんと悪魔が!

「ひぃぃ~~」

思わず叫んでしまう。

「お前・・・」

「お許しください、おゆるしください」

「なんでそんなに怯えてるんだ?」

「ひぃいい、おたすけ~」

「おい」

どす黒いオーラが見える。



完全に怯え切っていた私は王子の護衛に連れていかれ、王宮の医務室で休ませてもらった。

そのまま自宅に送ってもらえた。

時間より早く戻って来たことで母は驚いたようだったが、送ってくれた御者さんが体調を崩したようだと伝えてくれたため、王子に怯えた、という話をしなくて済んだ。



朝、昨日の事もあり、今日1日のんびり過ごそうとベットの中でゴロゴロを満喫していると、バーンと部屋の扉がいきなり開いた。

「????」

驚きのあまり声も出ないでいると父母が飛び込んできた。

「セラ、王家から手紙が」

「あなた昨日第2王子殿下に会ったの??」

「そんな事より、早く支度を」

「そうだわ、早く起きて、急いで王宮に行かなきゃ」

二人がかわるがわる大声で叫ぶ。

何が何だか?と、わけのわからないままにベットから引き出され、風呂に放り込まれ使用人総出で洗われる。お出かけ用にと大事に来ているワンピースを着せられ、馬車に乗せられた。



馬車には青い顔をした父母。

お茶会に出るかのような装いだ。

「あの、父様、母様今日は何をしに行くんでしょう?」

その後父から聞かされた話に私は白目をむいて固まってしまった。



何と、第2王子から側近候補としてご指名を受けてしまったのだ。

まだ10歳の為、顔合わせと説明を兼ねて両親とともに呼び出されたらしい。

なんでだよ。

あんな怖いオーラに関わり合いになりたくないっつーんだよ。

「それっておことわり「できるわけないだろう!」」

「昨日王宮で何をしたの?第2王子殿下にお目にかかったの?」

「会ったというか、見たっていうか、・・・でも本当に何も喋ってないし、なんで呼ばれたのかな?

あれ?私名乗ってないのにどうして手紙が?」

「セリ、あなた昨日王宮の馬車で帰宅したのよ?

どこのだれかわからないのに送ってこられないでしょう」

全く持って母の言う通りだが、名乗ってないのに何故だ?

謎だ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

諦めない男は愛人つきの花嫁を得る

丸井竹
恋愛
王命により愛人のいる女と結婚した男の話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

[完結]凍死した花嫁と愛に乾く公主

小葉石
恋愛
 アールスト王国末姫シャイリー・ヨル・アールストは、氷に呪われた大地と揶揄されるバビルス公国の公主トライトス・サイツァー・バビルスの元に嫁いで一週間後に凍死してしまった。  凍死してしたシャイリーだったが、なぜかその日からトライトスの一番近くに寄り添うことになる。  トライトスに愛される訳はないと思って嫁いできたシャイリーだがトライトスの側で自分の死を受け入れられないトライトスの苦しみを間近で見る事になったシャイリーは、気がつけば苦しむトライトスの心に寄り添いたいと思う様になって行く。  そしてバビルス公国の閉鎖された特殊な環境が徐々に二人の距離を縮めて… *完結まで書き終えております*

処理中です...