２５歳の俺とＪＫギャルの恋は、社会的にアウトですか？

第３３話 「弟からの招待状」

　土曜の朝。
　いつもなら遅めに起きてダラダラと過ごすはずが、昨夜の飲み会で寝るのが遅くなったせいで寝起きは最悪だった。

　ベッドから這い出し、顔を洗って冷たい水で頭をシャキッとさせる。
　コーヒーを淹れて、ようやく一息ついたところで――スマホが震えた。

「ん……？」

　画面には、見慣れた名前。
　差出人は――タケル。

　開いてみると、可愛らしい顔文字と一緒に短いメッセージが届いていた。

『翔真にい！　また遊びに来て！　今日でもいいよ！』

「……おいおい」

　思わず苦笑してしまう。
　昨日の夜あれだけ大人の付き合いで消耗したというのに、今日は子供の無邪気な誘いか。
　でも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。むしろ、ちょっとだけ嬉しい。

◆

　返信しようと親指を動かしたが、そこで止まる。

（……これ、ひなたちゃんはどう思ってるんだろうな）

　弟が勝手に誘っているだけかもしれない。
　下手に「行く」と返して、迷惑がられたらどうしよう。
　いや、でも前にあの家で一緒にご飯を食べたとき――ひなたちゃんは……。

　エプロン姿で照れ笑いしながら「どう、味？」と聞いてきたあの表情。
　あれを思い出すと、どうしても「嫌がっている」とは思えなかった。

◆

　悩んだ末、短く返信する。

『タケル、ありがとな。今日はちょっと用事があるけど、また連絡するよ』

　ほんとは予定なんて何もない。
　ただ、あまりにも急すぎる。
　俺の気持ちの整理が追いつかないのだ。

　送信ボタンを押すと、すぐに返事が返ってきた。

『えー！　じゃあ明日は！？』

　即レスに思わず吹き出す。
　子供らしいストレートな欲求だ。

　どう返そうか悩んでいると、追い打ちのようにもう一通。

『ひなたねーちゃんも一緒にいるから！』

「……っ！」

　その一文で、心臓が跳ねた。
　タケルの無邪気な言葉は、俺の心をあっさり見抜いているかのようだった。

◆

　結局、その日は家の中をソワソワしながら過ごすことになった。
　本を読んでも頭に入らないし、テレビをつけても内容が耳に残らない。
　気づけばスマホを手に取り、タケルのメッセージを何度も見返していた。

「……明日、か」

　自分に言い聞かせるように呟き、決意を固める。
　大人としてどうなのか、世間体はどうか――そんなことを考えれば答えは出ない。
　でも、少なくとも今は。
　あの姉弟と過ごす時間を、俺は望んでしまっている。