２５歳の俺とＪＫギャルの恋は、社会的にアウトですか？

第３９話 「秘密のヒント」

　火曜の夜。
　仕事を終えて自宅に戻り、スーツを脱いだ瞬間にポケットの中のスマホが震えた。
　画面を見ると――ひなたから。

『翔真さん、ちょっとだけヒントあげる！　特別なことってやつ！』

「ヒント？」

　心臓がひやりと跳ねる。
　続いて送られてきたのは、何枚かの写真だった。

◆

　一枚目は……ガラス越しに並ぶケーキ。
　二枚目は、カラフルなパフェ。
　そして三枚目には――シックな雰囲気のカフェの看板が写っていた。

「……スイーツ？　カフェ？」

　呟きながら写真を拡大すると、看板に書かれている文字に気づいた。

　『ドルチェ・ガーデン』

　地元で最近人気が出始めたお洒落なカフェの名前だ。

◆

　すぐにメッセージが追いかけるように届く。

『ね？　特別っぽくない？』
『女の子同士なら行けるけど、男の人と行くのは勇気いるんだよ！』

「……つまり、デートってことか」

　声に出した瞬間、頬が熱くなる。
　彼女ははっきりと「デート」とは言っていない。
　けれど、意図はもう十分に伝わってきた。

◆

　俺は少し間を置いてから返信した。

『すごく特別だと思うよ。日曜、楽しみにしてる』

　すぐに既読がつき、スタンプと共に返事が来た。

『やったー！　アタシも！　……ほんとはね、翔真さんに見せたい顔があるんだ』

「見せたい顔……？」

　その一文に、胸がまたどくんと鳴る。
　彼女が一体どんな表情を見せてくれるというのか。
　想像が膨らむほどに、眠気は遠のいていく。

◆

　翌日の昼休み。
　会社の食堂で同僚たちと並んで座っていても、俺は無意識にスマホを見てしまっていた。
　画面に残るケーキやパフェの写真が、頭から離れない。

「おい、翔真。ニヤけてね？」
「な、なんでもないって！」

　慌てて弁当に視線を落とす。
　けれど、同僚たちの茶化しも気にならないくらい、胸の中は「日曜」のことでいっぱいだった。

◆

　夜。
　再びひなたからメッセージが届く。

『ねえ翔真さん、もし甘いもの嫌いだったらどうしよ……？』

　俺はすぐに返した。

『大好きだよ。むしろ、ひなたちゃんと行けるなら何でも美味しいと思う』

　送信してから、少しだけ後悔した。
　思っていた以上に正直すぎる。
　だが数分後、彼女から返ってきたのは――。

『……そーゆーとこ、ズルいんだから』

　スタンプの照れ顔が添えられていた。

◆

　日曜まで、あと四日。
　待ち遠しくて、時間がいつもよりゆっくり流れているように感じられた。