【草】の錬金術師は辺境の地で【薬屋】をしながらスローライフを楽しみたい!

雪奈 水無月

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二章:妖精国編

第21話 黒晶の脈動と、動けない影

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 ユグドラの木の根の間は、
淡い緑光と黒い腐食が入り混じる、不気味な空間だった。

天井から垂れ下がる根の多くは黒く変色し、
まるで病に侵された血管のように脈打っている。

「……これが、ユグドラの木の根……?」

ネムは息を呑んだ。

カイも険しい表情で周囲を見渡す。

「ひどいな……魔力の流れが完全に乱れてる」

アーノルドは槍を肩に担ぎ、
黒く染まった根を睨んだ。

「オレの知っとるユグドラの木は、
 もっと神々しい光を放っとったはずや……」



その時――

ズズ……ズルル……

根の奥から、
巨大な影がゆっくりと姿を現した。

形は曖昧で、
人型とも獣ともつかない“黒い塊”。

ネムは反射的に鑑定スキルを発動したが――


《???》

・情報取得不可
・強力な干渉により鑑定不能
・黒晶核と同質の魔力反応


「鑑定……できない……!」

影は咆哮を上げた。

ギャアアアアアアア!!

黒晶核が脈動し、
影の身体に黒い魔力が流れ込む。

「来るぞ!!」

アーノルドが前に飛び出し、
カイも剣を構える。

ネムは急いで錬成を開始した。

「錬成……!!」

光が弾け、
ネムの手の中に光の防壁が生まれる。


《フェアリー・ルミナスシールド》

・光の防壁
・影の攻撃を軽減
・効果範囲:中


「これで……!」

ネムが防壁を展開した瞬間――

ドゴォォォォォン!!

影の一撃が直撃した。

「きゃあっ!!」
「ぐっ……!」
「うおおっ!!」

防壁は確かに展開されていた。
だが――

威力が桁違いだった。

三人は光の壁ごと吹き飛ばされ、
根の間の端にある石壁へ叩きつけられた。

ガンッ!!

「っ……痛っ……!」

ネムは床に転がりながら、
必死に身体を起こした。

カイもアーノルドも、
壁に背中を強打しながらも立ち上がる。

「なんて威力だ……
 防いでなかったら即死だったぞ……!」

「オレでも肺が潰れるかと思ったわ……!」



だが――

影は追撃してこなかった。



その場で、
まるで“見えない鎖”に縛られているように、
ユグドラの木の根の周囲から動けずにいた。

ネムは震える息を整えながら呟く。

「……あれ……
 ユグドラの木の“周囲”から離れられない……?」

カイが目を細める。

「確かに……攻撃はしてくるが、
 一定の範囲から出てこないな」

アーノルドも頷く。

「黒晶核に繋がっとるんやろ。
 あれが“本体”みたいなもんや」

ネムは影の足元――
黒く染まった根の周囲を見つめた。

(この範囲だけ……異様に黒い……)

その時、
ネムの視界に“あるもの”が映った。

「……あれ?」

根の間の隅に、
黒く変色した草が生えていた。

本来なら、
ユグドラの木の根元に生える草は
淡い緑色の光を放つはずなのに――

その草は、
黒い染みのように変色していた。

ネムは慎重に近づき、
そっと手に取った。

「この草……
 ユグドラの木の魔力を吸って……
 黒晶核に汚染されてる……?」

カイが覗き込む。

「ネム、鑑定できるか?」

ネムは頷き、
震える手で鑑定スキルを発動した。

(……これは、ただの草じゃない)

黒晶核の侵食が、
ユグドラの木だけでなく
周囲の生命にも広がっている証拠だった。

ネムは草を握りしめ、
強く息を吸った。

(この草……
 きっと、何かに使える……
 錬成で“黒晶の正体”に近づけるかもしれない)

影は動かない。
だが、脈動は強まっている。

時間は、もう残されていない。
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