兄が【剣聖】、妹は【聖女】になった双子の転生者はのんびり冒険者やってます♪

雪奈 水無月

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第48話 「夜陰に紛れて」

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 夜風が港町ルゼリアを撫でる。
 兄妹とロゼッタは、静かに屋敷の壁沿いに身を潜めた。

「……ここから入るわよ」
 ロゼッタが低く囁く。赤い瞳が月明かりに光る。

「了解……!」
 蓮が剣を握り、凛は小さな魔法陣を手のひらに描く。

 屋敷の裏口には、鍵がかかっていた。
 凛が小声で呟く。
「私に任せて、ね……《ロックブレイク・サークル》!」
 光の魔法陣が鍵穴に触れ、金属が軋みながら解除される。

「さすが凛……」
 蓮が感心する間もなく、三人は忍び足で屋敷の中へ滑り込んだ。



 暗い廊下を進むと、奥の部屋から微かに光が漏れている。
 黒衣の人物は巻物を広げ、何かを書き込んでいる様子だった。

「……あの人物、油断してるわね」
 ロゼッタはフードを深く被り、影に紛れる。

 蓮と凛も、息を殺して進む。
 だが、階段の軋む音や、服の擦れる音が少しでも響けば、すぐに警戒されるだろう。

「凛、左の通路を押さえて」
 蓮が指示を出す。
「わかった!」
 凛は小さく頷き、魔法で静かな光を作り出して暗闇に溶けた。



 黒衣の人物が巻物を机に広げる。
 そこには、海底王国の港の航路や、ルゼリアの防衛計画まで詳細に描かれていた。

「これは……かなり危険な情報ね」
 ロゼッタが囁く。

 その瞬間、黒衣の人物がふと手を止め、周囲を見渡した。
 赤い瞳がわずかに光る。

「……来ている?」
 ロゼッタが微かに息を潜める。

 だが、兄妹はうまく背後に隠れ、姿を見せずにいる。
 ここで気づかれたら、一巻の終わりだ。



 蓮は机に近づき、巻物を手に取るタイミングを伺う。
 ロゼッタは両手を掲げ、赤黒い魔力で小さな障壁を展開。
 その隙に凛が《シャドウ・ティア》で床板を透明化し、机の下に潜り込む。

「よし……!」
 蓮が静かに巻物を手に取る。

 その瞬間──
「……誰かいる!」
 黒衣の人物が振り向き、赤い瞳が三人を捕らえた。

「来たか……」
 ロゼッタが低く呟き、フードを払って顔を現す。

 黒衣の人物の顔色が一瞬で変わった。
「な、なんだ……吸血鬼……!?」

 その圧倒的な威圧に、兄妹は思わず身を固める。



「──油断なさらないで」
 ロゼッタが両手を振り、赤黒い鎖が宙を走る。
 黒衣の人物は剣を構えるが、鎖が瞬く間に動きを封じる。

「これで……巻物は確保可能ですわ」
 ロゼッタが囁き、蓮は巻物をしっかりと握る。
 凛も後方から光の矢を放ち、追撃を防ぐ。

 わずか数分の駆け引きで、三人は巻物を手中に収め、屋敷から静かに撤退した。



 港町の街灯の下。
 三人は息を整え、握りしめた巻物を見つめる。

「やっぱり……情報は力だな」
 蓮が真剣な眼差しで呟く。

「でも、これで海底王国の存在が確実になったわね」
 ロゼッタは巻物を軽く手に取り、微笑む。

「兄さん、次はどうする?」
 凛が期待に満ちた目で蓮を見る。

「……まずは、情報を分析して次の作戦を練ろう」
 蓮が答える。
 その背後で、ロゼッタが微かに赤い瞳を光らせる。

「この先、我々の戦いはもっと危険になりますわ……」

 港町の夜は、静かに、しかし確実に不穏な気配を孕んでいた。
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