殺人事件ライラック (ブリキの花嫁と針金の蝶々)

尾崎諒馬

文字の大きさ
1 / 155

まえがき

しおりを挟む
 
 
   殺人事件ライラック
   (ブリキの花嫁と針金の蝶々)



   まえがき
   
 その人の写真を二葉にようほど見たことがある。
 いけない――「葉」などという気障きざな助数詞は作者の辞書にはない。二枚と言い換えておこう。
 そうしてその二枚の写真の顔の印象をずらずらと記していけば、この小説のタイトルは「〇〇失格」とでもなるのかもしれない。なるほど、そうだな! 「〇〇失格」それがいいかもしれない。「ミステリー作家失格」それがこの小説のタイトルに相応しい。
 ネットで検索してもその作家の情報は少ないが、ある読者がこう言っている。
 わずか三作を発表した後は沈黙してしまったらしい……
 しかし一方で、
 三作も出してらっしゃるので「一発屋」なんていったら失礼なんですが……
 そう言ってくれる読者もいる。
「わずか三作」なのか? 「三作も」なのか? それはどちらでもいいのだが、やはり「ミステリー作家失格」ではある。ここで作者が記していくこのフィクションはそういう小説だ。「人間失格」という小説が「人間」を描いた小説なら「ミステリー作家失格」という小説も……
 いや、もう、この辺でやめておこう……
 話を戻して、冒頭の二枚の写真というのは、ある新聞記事に載ったミステリー作家の写真である。その人が第十八回横溝正史賞で佳作を受賞し、デビューした時の――
 地方在住のその人が、地元紙のインタビュー記事に掲載されたその写真。一紙は明らかに写真写りがよくないが、もう一紙はまずまずである。そのまずまずの写真が載った方のインタビューでその人は笑って「ここ地元で殺人事件が起こるかもしれませんよ」そう言ったことになっている。
 いや――これも、やはり、やめておこう。
 とにかく――
 これから記される小説は「失格」を自認する作者によるフィクションである。それがミステリーなのか? 似非ミステリーなのか? いや、仮にそれがミステリーだとして、その前に「本格」が付くのかどうか? その判断は読者に委ねられる。
「思案せり我が暗号」でデビューする遥か以前に「針金の蝶々」というタイトルの本格ミステリーを書こうとしていたことがある。しかし四百字詰め原稿用紙に鉛筆で三十枚程度書いたところで頓挫した。そのプロットもトリックも――つまりはミステリーを構成する骨格がどうもうまく思い出せない。密室だったような気もするし、首のない死体だったような気もするのだが……
 そんな大昔の――かつ(自虐か? 謙遜か? はわからぬが)出来の悪い素材を持ち出さなければならぬのは、ビートルズの最後のアルバム、レット・イット・ビーにおける one after 909 のようなものかもしれないが、一応、現在作者の頭の中には一応のミステリーの断片が渦巻いている。まだ断片に過ぎず、骨格というには程遠いのだが……
 タイトルは――殺人事件ライラック――
 ライラックの咲く、とある別荘で起きた殺人事件――
 ライラックはモクセイ科ハシドイ属の落葉低木。フランス語からリラ とも呼ばれる。標準和名はムラサキハシドイ。
 綴りはLilacだが、強引に言葉遊びすれば――
 ライ Lie 嘘 欺く
 ラック Luck 幸運
 
 まだまだ書きたい事が、あれこれとあるような気もするが、前書きとしてはこれでだいたい語り尽した気もする。作者は虚飾を行はない。読者をだましはしない。読者よ、命あらばまた他日。元気で行かう。失望するな。では、失敬。幸運を祈る。その幸運が仮に「偽りや嘘」だったとしても……
(気障に一部旧仮名遣い)
 
 ライラック
 花言葉
 
 紫のライラックは「初恋」
 ピンクのライラックは「思い出」
 
 

   

   
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

隣人意識調査の結果について

三嶋トウカ
ホラー
「隣人意識調査を行います。ご協力お願いいたします」 隣人意識調査の結果が出ましたので、担当者はご確認ください。 一部、確認の必要な点がございます。 今後も引き続き、調査をお願いいたします。 伊佐鷺裏市役所 防犯推進課 ※ ・モキュメンタリー調を意識しています。  書体や口調が話によって異なる場合があります。 ・この話は、別サイトでも公開しています。 ※ 【更新について】 既に完結済みのお話を、 ・投稿初日は5話 ・翌日から一週間毎日1話 ・その後は二日に一回1話 の更新予定で進めていきます。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...