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第三部 世界のすべて
自宅にて(藤沢)その二
しおりを挟む自宅にて(藤沢)その二
鹿野信吾――尾崎諒馬が私に会いたがっている。
果たして、尾崎凌駕からメールが来ていた。Web会議への招待URLが付いている。
〇〇〇お茶会、というのはどうでしょう?
とのことだ。
指定された日時にそのアドレスにアクセスすれば、リモートで尾崎凌駕と鹿野信吾=尾崎諒馬に会える、ということか……
いや、メールには「ひょっとしたらもう二人ほど参加してもらえるかも」とあった。
誰だろう? よくはわからんが……
机の引き出しから尾崎諒馬のインタビュー記事の切り抜きを取り出してみる。
――あの有名な作家に似ている。
そういえばラジオネーム「火星のゴリラ」とか……
しかし、それを言うと彼――尾崎諒馬は怒るかもしれない。
鹿野信吾=尾崎諒馬=本名佐藤稔はあの別荘の殺人事件で焼け出され、身元不明のまま死んだのではないのか?
それもあって、Web会議で会ったとして、そいつが本物の尾崎諒馬だとどうして証明できるのか? そう強く思う。
藤沢はAIに訊いてみることにした。
藤沢:「私は小説家です」という人の真偽を知るにはどう質問したらよいでしょう? 小説家ではなく、小説読むのが趣味でマニアと呼べるほど詳しい人と小説家を区別する質問はあり得るでしょうか?
AI:小説家と小説愛好家(マニア)を区別するためには、創作に関する具体的な質問をすることが効果的です。小説家であれば、自分の作品や創作プロセスについて深く語ることができますし、具体的な経験や技術について話すことができるはずです。以下のような質問を考えてみてください:
創作プロセスについて:
(中略 AIは具体的に質問の例と期待される答えの例を挙げてくれた)
キャラクターの作り方について:
(中略 AIは具体的に質問の例と期待される答えの例を挙げてくれた)
執筆における課題や経験について:
(中略 AIは具体的に質問の例と期待される答えの例を挙げてくれた)
出版経験について:
(中略 AIは具体的に質問の例と期待される答えの例を挙げてくれた)
創作におけるインスピレーション源:
(中略 AIは具体的に質問の例と期待される答えの例を挙げてくれた)
これらの質問に対して、具体的かつ詳細な回答が得られれば、その人が実際に小説家としての経験を持っている可能性が高いです。逆に、曖昧な答えや一般的な知識にとどまる回答であれば、その人は小説愛好家である可能性が高いでしょう。
藤沢:なるほど、今では「小説家になる方法」などのハウツー本も多数でています。そういう「小説家になるために勉強している人」と本当の小説家を区別するにはやはり出版経験を問うのがいいでしょうかね。
AI:はい、出版経験を問うことは、小説家になるために勉強している人と実際に小説家として活動している人を区別するのに非常に効果的な方法です。出版経験について具体的に尋ねることで、その人の小説家としての実績を確認できます。以下のような質問が有効です:
出版経験の詳細:
出版に至る経緯:
編集者との協力:
読者からの反響:
出版活動の影響:
※具体的な質問と期待される答えの例は省略
藤沢:しかし現実には立派な小説家に一般人が提案のような質問をしても「失礼だな」で答えてくれないと思います。特に太宰治のような作家だと……
AI:確かに、著名な小説家に対して直接的に出版経験や創作プロセスを尋ねることは失礼と感じられる場合があります。特に、太宰治のような繊細な作家に対しては、慎重なアプローチが必要です。以下に、もう少し間接的でありながらも真偽を確かめるための方法をいくつか提案します。
作品について尋ねる:
執筆のきっかけについて:
インスピレーション源について:
読者の反応について:
執筆習慣について:
最終的には、相手の反応や話の深さ、具体性などを通じて総合的に判断することが重要です。
藤沢:うーん やはり難しいですね ありがとうまたお願いします。
AI:確かに、著名な作家や専門家の真偽を確認することは難しい場合があります。間接的な方法や会話の中でのニュアンスを見極めることが求められることも多いです。
もしまた何か疑問や話したいことがあれば、いつでも気軽に声をかけてください。お役に立てることを楽しみにしています。こちらこそ、ありがとうございました!
うーん、何か難しい感じだ。
藤沢は再び尾崎諒馬のインタビュー記事の切り抜きを読んでみる。
<i917803|45924>
暗号の原案は十年前から温めていた。暗号が小説の小道具ではなく、物語の全体を支配しているという点が目を引いたみたい」審査員には内田康夫さん、北村薫さん、宮部みゆきさんら大御所が名を連ね「トリックが凝っている」と高い評価を受けた。
そうある。ちょっと調べてみたが、第十八回横溝正史賞の審査員は四人で一人足りない……
記事に書いていないもう一人の選評を読んでみると、確かに彼だけ評価が低いようだ。それに――
武者小路実篤のような作家が目標。推理小説とは無縁のようだが、「自己肯定が強く自分と共通しているところがある。謎解きばかりで読ませるのではなく、人間性や情景をしっかり表現できるようになりたい」と。
そうとも書いている。そう言えば「思案せり我が暗号」のあとがきにも武者小路実篤の言葉を上げている。
本格ミステリー作家で武者小路実篤を目標に上げるのは変な感じがするが、実際そうなっている。まあ、それが次作の「死者の微笑」に繋がっている気もするが……
果てさて、〇〇〇お茶会はどうなるのだろう?
それとあと二人とは誰が出席するのだろう?
これもこのままメールしよう。
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