142 / 155
尾崎凌駕の手記
いろいろあって……
しおりを挟むいろいろあって……
確かにいろいろあった……
そして、それが、
読者と探偵が同じ情報を持つ
に繋がっている。
SEの■■さんは知っているのだろう。しかし、彼はそれをはっきり書かないでひたすら匂わせてきた。要は私に「自分で書け」そう促しているのだろう。
やはり書くしかないか……
少し惨めなことではあるのだが……
私はある障害を抱えている。あの別荘の事件から遡ること二年ほど……
交通事故で障害を負った。
考えてみたまえ。なぜ、脳外科医が、重症とはいえ、専門外のやけど患者の治療に当たるのか? 医療センターは人手不足だったのかもしれないが、専門が脳外科の医師が当直で救急搬送されてきたやけど患者の治療に当たるのは少しおかしい、そう読者も思ったんじゃないだろうか?
それに――
特A医師……
地下にいる、特別扱いの医者……
そうなのだ、私は最早まともな医者ではないのだ。
その抱える障害のため、この医療センターでもまともな医者として扱われてはいない……
地下送りと称して、まだ生きている患者の死亡診断書を書くという、やばい裏仕事を請け負ってきたのもそのためだ。
私の抱える障害……
いろいろ――複数あるが、深刻な障害の一つは失顔症――相貌失認……
私には人の顔がわからない。というか、区別ができない。すべてが同じ顔に見える。
目があって、鼻があって、口がある。それはわかる。しかし、顔の区別がつかない。すべてが同じ顔……
それが私の脳が抱える障害だ。
先天的ではなく、後天的で――
交通事故で、頭に損傷を受け――
いや、実は交通事故での頭の損傷自体が原因ではないのだ。原因は手術にある。しかし、治療のための手術自体は原因ではなく……
詳しく語ろう……
私は脳外科医だ。そしてBMI実験に興味を持っていた。それで、もし自分が開頭手術を受けるようなことがあったら、是非BMI実験に自分の脳を使ってみてほしい、とかねてより要望を出していたのだ。
交通事故で脳内出血を起こし、脳挫傷もあり、開頭手術は必須になった。手術前に意識はあったので、その意志――BMI実験の被験者になる意志を明確に示した。
出血にも挫傷にも影響を受けていない健康な脳の一部に数十本の電極を挿入し、コンピューターに接続する。その実験の被験者に自ら志願したのだ。
自分自身がBMI実験の被験者になることは、得難い体験になると思っていた。コンピューターに脳が直接アクセスできる、というのはまるで超能力を持つようなものではないか! そう思っていた。しかし――
実験は無残に失敗した。私の脳髄――右側頭・後頭葉に挿入された電極は、結局酷い損傷を脳に与えただけだった。それが原因で私は……
それは嘆いても仕方ない……
とにかく、私は一年間入院し、ただ治療とリハビリに明け暮れていた。
そんな失意のどん底にいる私を献身的に支えてくれた看護師が一人いた。胸のネームプレートに佐藤とあった。私にはすべての看護師が同じ顔に見える。そのネームプレートだけが彼女を他の看護師と区別し認識するすべてだった。
彼女には心から感謝していた。退院後、彼女とは何回か会ったが、感謝以上の感情はない。それが彼女は不満だったようだが……
そして――
彼女の名前を聞いたのだが……
良美と名乗って笑っていた……
眩暈がした……
結局、私は彼女から逃れられなかった。彼女から求められれば、応じるしかなかった……
その時、彼女は既婚者だったのだが……
繰り返すが、彼女には感謝の気持ちはあったが、恋愛感情は持っていなかった。しかし、不倫の関係が始まってしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣人意識調査の結果について
三嶋トウカ
ホラー
「隣人意識調査を行います。ご協力お願いいたします」
隣人意識調査の結果が出ましたので、担当者はご確認ください。
一部、確認の必要な点がございます。
今後も引き続き、調査をお願いいたします。
伊佐鷺裏市役所 防犯推進課
※
・モキュメンタリー調を意識しています。
書体や口調が話によって異なる場合があります。
・この話は、別サイトでも公開しています。
※
【更新について】
既に完結済みのお話を、
・投稿初日は5話
・翌日から一週間毎日1話
・その後は二日に一回1話
の更新予定で進めていきます。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる