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尾崎凌駕の手記
最も書きにくい尾崎良美について
しおりを挟む最も書きにくい尾崎良美について
この手記を書き始めてだいぶ進んできたが、先に進むほど心情的に書きにくくなってくる。
戸籍上の腹違いの妹――生物学上でも腹違いの妹、尾崎良美……
かつて尾崎諒馬=鹿野信吾=佐藤稔と交際しており、坂東善=水沼=佐藤稔と結婚した――旧姓尾崎良美、結婚後は佐藤姓になった良美について……
私は彼女と男女の関係にあった。
これは尾崎諒馬も知っている話だ。ただ、坂東善は知らないと思う。彼女が結婚後も関係はあったから、不倫になるのだが……
言い訳になるが、私は特に彼女に恋愛感情は持っていない。ただ一方的に惚れられてしまった……
いや、酷い言い訳をしているのかもしれない。
彼女と初めて会ったのは、尾崎諒馬と彼女が交際している時だ。彼女はミステリーが心底嫌いだった。それで、尾崎諒馬とは別れたがっていたのは事実だ。ただ、実際に別れてしまった原因を作ったのは私なのかもしれない。
尾崎諒馬のデビュー作「思案せり我が暗号」に登場する尾崎凌駕は私そのものではなく、私はただ、そのモデルになったにすぎないが、その「思案せり我が暗号」の中で、
尾崎凌駕は恋愛などもしないだろう
とか、書かれているが、強ち間違いではない。
正直、私には何か生まれつきの欠陥があるようで、恋愛というのがよくわからない。ただ、生物学的に性欲はあるので……
というか、そういう状況に陥れば、下半身が反応するというだけだ。自らそういう状況を作ろうとしたことはなく、ただ、相手が――女性側がそういう状況へ導こうとすれば、まあ、そうした行為に及ぶ、ということに過ぎない。
彼女と二人きりになった時、お互い合意の上でそうなった、というだけのことで……
多少は尾崎諒馬に申し訳ないという気持ちはあったのだが……
勿論、馬鹿ではないので、そうした行為に及ぶときは避妊する。それは当然だ。性欲はあるが、子供などは望んではいない。
いや、大体彼女とは異母兄弟だ。戸籍の上は勿論、おそらく生物学上でも、だから子供なんて……
しかし、今、冷静に考えれば、避妊すればいいというのもどうかと……
とにかく、そうした身体だけの関係を数回持ったのは事実だが、結局、彼女とは距離を取った。
その後、いろいろあり……
尾崎諒馬とも次第に疎遠になり、彼女とも会わない日々が続いていた。
私の方は別にそれで何の問題もなかった。彼女に対して特に恋愛感情は持っておらず、ただ、少し持て余し気味の性欲に従順に行動しただけだった、と……
成り行きで数回、そういう関係を持っただけ……
よくある話だ……
そのつもりだったのだが……
その後、いろいろあり……か……
やはり、その「いろいろ」も書かないといけないだろうな……
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