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尾崎凌駕の手記
父、尾崎睦美は×××××
しおりを挟む父、尾崎睦美は×××××
さて、父、尾崎睦美についてもう少し詳しく書いておこう。私は医者になったこともあり、父の精子不動症についていくつか情報を持っている。
父、睦美はとにかく子供に執着していた。尾崎家と自分が興した企業グループ、尾崎グループの跡取りがなんとしてでも欲しかったようだ。
父と母の間に恋愛感情があったのか? どうかはわからない。
愛する男――好きな男の子供が欲しかった――
そう言って、父ではない男の子供――それが私なのだが――を産んだ母は父のことなど愛していなかったのかもしれないが、とにかく二人は正式な夫婦だったのだし、子供ができない場合、不妊治療を受ければ――そう読者も思うだろう。
しかし、それは時代的に難しいと言わざるを得ない。
精子不動症の問題ある精子でも体外受精を実施すれば……
つまり所謂試験管ベビーだ。
母から卵子を採取して、顕微鏡下で父から採取した精子を使って強制的に受精させ、それを母の子宮に戻す。そうすれば、精子の運動性に問題があっても子供を産むことは可能なはずである。
しかし……
最初の体外受精の成功例は一九七八年、日本だと一九八三年のことだ。私は一九六九年生まれなので、当時は体外受精は無理な話だ。
当時、夫婦の男の方に問題がある場合の不妊治療は人工授精しかなく……
人工授精(AID:非配偶者間人工授精) は、体外受精とは異なり、第三者の精子を用いて女性の体内に直接注入する方法――
日本での最初の実施は、一九四九年に慶應義塾大学にて――
ただし、AIDの実施は非常に限られており、秘密裏に行われることが多かったらしい。
提供者(ドナー)の匿名性が厳守されていて、社会的にはまだまだタブー視されていたとのことだ。
これについて調べてみたが、一九七〇年当時、日本では人工授精や体外受精に関する明確な法律は存在しておらず、違法ではないがグレーゾーンで、医師と夫婦の同意のもと、「医療行為としての容認」という形で人工授精は行われていたようだ。
出生した子供の戸籍には実父として夫の名前が記載されることが多く、ドナーとの関係は隠されるのが普通だったようだ。
なので、私の出生もこのAIDによるものかと思ったのだが……
愛する男――好きな男の子供が欲しかった――
母がそう手紙に書いた以上、そこに医療行為は介在していないのだろう……
子供としては複雑な感情を持つが、母が望んだことであり、かつ戸籍上の父が認めているのなら、それでよかったのだと思っている。
本当は父がどう思っていたのか? それはわからないが、父と母は離婚したのだし、子供がどうこういうことでもないだろう……
それで……
母以外の三人の女性
このうち初恋の女性、祐天寺良美と、尾崎諒馬=鹿野信吾=佐藤稔の母の二人は父とは結婚していないので、不妊治療などは行われていないだろう。しかし、良美と勝男の母、前述の符号で書けば、妻Aとの間に不妊治療が行われたのかもしれない。
いや、父が精子不動症だったとはいえ、奇跡的に妻Aが自然妊娠することもあったのかもしれない。
いや……
これは先に既にちょっとだけ書いたな……
別の女性Aが女の子を出産、良美と名付けられる
ああ、そうだ! この良美の父親もひょっとしたら……
いや、それは後で書こう――
一つ前の章に、そう書いている。
そうなのだ。施設に会いに行った女の子を見て、自分に似ている! そう直観的に感じたように、尾崎良美に始めて会った時にも、自分に似ている! そう直観的に感じたのだ。
そうであれば、父、尾崎睦美が再婚後に設けた娘の良美も私の生物学上の父「その男」の娘なのかもしれない。
尾崎睦美が自分の妻Aとの間の不妊治療、つまり医療行為としてのAIDを受け入れたのか? どうかはわからないが、自分は直観的に――つまり自分と似ているが故に――尾崎良美とは生物学上も異母兄弟だと確信している。
凡そ、本格ミステリーには相応しくない、いい加減な話だ。最初に会った時に自分に似ている、そう直観的に思ったから自分とは血が繋がっている、と断言してしまうのは、かなりいい加減な話だ。
しかし、自分はそれを信じている。この小説のどこかに、
顔が似ている、似ていないの判断は個人の主観
そう書かれているはずだ。
個人の主観――つまり、私は似ていると思ったのだ!
DNA鑑定などしてはいないが、私はそれで二人の良美とは血が繋がっている、そう信じている。
そして――
尾崎勝男とは血は繋がっていない!
尾崎諒馬=鹿野信吾=佐藤稔とも血は繋がっていない!
そう信じている。
恐らく、尾崎勝男の生物学上の父親は尾崎睦美だ。
日本で最初の体外受精の成功例は一九八三年で勝男の生誕はそれより前だが、尾崎睦美と妻Aは海外で不妊治療を秘密裏に行ったに違いないのだ。
そのだけ、彼は自分の本当の子供に拘りを持っていたに違いないのだ。
勿論、それはすべて私の憶測にすぎない。
ただ、私はそう信じている。
ややこしい話になった……
家系図を作成してみたので添付する。
そしてもう一つ
ややこしい家系図だ……
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