けうけう!

浜浦うらら

文字の大きさ
6 / 18
第一章〜商店街は妖怪騒ぎの巻〜

その⑤

しおりを挟む

道中は決して優しいものではなかったが、厳しくもなかった。
恐れ知らずの雑魚共が木々の隙間から、岩陰からと、どんどんちょっかいをかけてくる。
そのたびにむすびちゃんはお祓い棒で祓っていった。
「はいはい、成仏成仏じょうぶつじょうぶつぅ~」
近づくにつれ、若干手ごたえを感じるようになってきたと共に、かすかに知能を宿したお化けが増えてきた。
「ここから先は…うわーーっ!」
「うるさい」
「お前なんて一秒で…どんぎゃーーっ!」
「黙って」
「よくも友人A、Bを…許せんっ!返り討ちにしてくれるわーーっ!」
「邪魔」
「ぐっ!だが俺がやられても友人DとEが…」
「長いわ!」
むすびちゃんはほぼ消えかかっているお化けを踏み潰した。
知能があるといっても、まだ低能な馬鹿ばっかしかいない。
飛んで火に入る夏の虫とはこのことだろう。
むすびちゃんは最初からお化けなんていなかったかのように、順調に進んでいった。
石畳の道を抜け、竹藪たけやぶの中をずんずん進む。
澄んでいて、冷たい空気。
それでいてどこか温かさを感じる。
光が竹の合間から漏れ出ていて、少し薄暗い。
「小さかった頃はここ、少し怖かったっけな」
でも、すぐに平気になった。
決して温かくはない、それでも安心する手に引かれ、何度もここを訪れて。
竹の葉がざわざわと鳴く。
その音と、昔の声が重なって聞こえる。
「…ここちょっと怖いよ。この前怒られちゃったし、あんまりオババのとこ行きたくない」
「何も怖いことねえよ。しょうがねえだろ、俺らは子供だ。大人がいないと、二人じゃ何もできない」
「でもぉ…」
「俺が一生をかけてお前を守ってやるよ。だから…心配すんな」
その時は誰よりも頼もしく見えたその背中。
大きくなるにつれ疎遠そえんになり、そして一年間、ずっと会っていない。
突然、家を出て行って。私を置いて。
「お兄ちゃん…」

気が付くとオババの家に着いていた。
「懐かしいなあ」
一人で住むには広すぎる、神秘的で、力強さのある家。
最後に来たのは半年前だっただろうか。
近づくと、元気な子供たちの声がする。
保護された町の子供が無事なことに安堵し、むすびちゃんはインターホンを押した。
十秒もしないうちに扉が開き、ひょっこりと女の子が顔をのぞかせた。
「おーむすびか。久しぶりじゃのう。お主が来ることは分かっておったぞ。まあ入れ入れ」
「…お邪魔します」
久しぶりと言われても、この子に会った覚えがない。
白髪のおかっぱ頭で、年は幼稚園生くらいだろうか?
服装は子供らしくない古風な感じで、オババが着ていたものとよく似ている。
町の子供かオババの親戚の子かな?などと考えている間に、女の子は客間に通してくれた。
しかし、いつまで経ってもオババは見あたらないし、女の子は立ち去る気配がない。
「何から話せばいいもんかのう。とりあえず茶でも入れるか」
「あの!私オババに会いにきたの。オババって今どこにいるのかな?」
「何を言っておるのじゃ?」
「あのね、私はここの家に住んでいるお婆ちゃんに会いにきたんだけど…」
「お主、まだ気づいておらんのか」
「?」
「わしがそのオババじゃよ」
「???」
「あみだちゃんと呼んでくれると嬉しいぞい」
「?????」
全く意味が分からなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

処理中です...