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第一章〜商店街は妖怪騒ぎの巻〜
その⑰
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それからむすびちゃんが地面に足をつけることができたのは、みくじちゃんがそばを通りかかるまで―屋根に上ってから二十分ほど後であった。
多分、今日一日で、一番くじけそうで、泣きそうな瞬間であった。
「助かったわ。ありがとう」
まだ足が震えている。
今はかっこつけているが、さっきまで顔面蒼白、死後硬直したように一歩たりとも動くことができなかった。
情けない。
「なんであんなところに…」
「まあそれは置いといて、あと残り一体よ。親分だかなんだか知らないけど、さっさと捕まえて町のみんなを…」
辺りを見渡す。
小鬼の姿が見当たらない。
「あれれっ?」
「むっちゃんが捕まえたんじゃないの?」
「そうなんだけど…しばらく下を向かないようにしてたから…川に流されちゃったのかも」
「えー…」
「まあいっか」
「ええーー…」
「さあ行くわよ」
諦めも肝心だよねと前を向き、二人並んで歩く。
二人の影がゆらゆら揺れる。
重なったり、離れたり。
「こうやって一緒に歩くのは久しぶりだね」
「そうかしら?でも昔は色々なところへ行ったわね」
「会えない間寂しかったよ。ふっとどこかへ行っちゃうんじゃないかって」
「大袈裟よ。まあ縁乃姫様は消えちゃったけどね…」
「また家に来てよ。歓迎するから」
「うーん、そうね。近いうちに行くわ。近いうちにね…」
とりとめのない話に花を咲かせる。
ふと、むすびちゃんは気になっていたことを問う。
「そういえばみっちゃん、猫又はどうしたの?」
ぴたりと、みくじちゃんの足が止まった。
少しばかりの沈黙。
ここだけ空間が切り取られたように、何もかもが静止している。
「えー?」
口調は明るい。
が、表情にふっと影が差したように見える。
「知らない」
短く、彼女はそう言った。
急に別人と会話しているような感覚に陥る。
夕日が彼女の横顔を赤く、淡く照らす。
こちらに背を向けて喋っているので、実際どんな顔をしているのか分からない。
「そう」
それだけ言うのが精一杯だった。
彼女がこうなる瞬間は度々あった。
いつからだったかは覚えていないが…
「何こんな暗い雰囲気になってるのー?まだ鬼ごっこは終わってないんだから、気分あげていかないとやってられないじゃん!」
無理やりとってつけたような明るさ。
きっと触れないほうがいいのだ。
今までも、これからも。
「そうね」
「うん。じゃあ、」
風が吹き、みくじちゃんの髪を揺らす。
みくじちゃんが振り向く。
真っ赤な空に溶けそうな笑み。
その瞳は、むすびちゃんただ一人を映していた。
「行こっか」
夕日が、綺麗だった。
それからむすびちゃんが地面に足をつけることができたのは、みくじちゃんがそばを通りかかるまで―屋根に上ってから二十分ほど後であった。
多分、今日一日で、一番くじけそうで、泣きそうな瞬間であった。
「助かったわ。ありがとう」
まだ足が震えている。
今はかっこつけているが、さっきまで顔面蒼白、死後硬直したように一歩たりとも動くことができなかった。
情けない。
「なんであんなところに…」
「まあそれは置いといて、あと残り一体よ。親分だかなんだか知らないけど、さっさと捕まえて町のみんなを…」
辺りを見渡す。
小鬼の姿が見当たらない。
「あれれっ?」
「むっちゃんが捕まえたんじゃないの?」
「そうなんだけど…しばらく下を向かないようにしてたから…川に流されちゃったのかも」
「えー…」
「まあいっか」
「ええーー…」
「さあ行くわよ」
諦めも肝心だよねと前を向き、二人並んで歩く。
二人の影がゆらゆら揺れる。
重なったり、離れたり。
「こうやって一緒に歩くのは久しぶりだね」
「そうかしら?でも昔は色々なところへ行ったわね」
「会えない間寂しかったよ。ふっとどこかへ行っちゃうんじゃないかって」
「大袈裟よ。まあ縁乃姫様は消えちゃったけどね…」
「また家に来てよ。歓迎するから」
「うーん、そうね。近いうちに行くわ。近いうちにね…」
とりとめのない話に花を咲かせる。
ふと、むすびちゃんは気になっていたことを問う。
「そういえばみっちゃん、猫又はどうしたの?」
ぴたりと、みくじちゃんの足が止まった。
少しばかりの沈黙。
ここだけ空間が切り取られたように、何もかもが静止している。
「えー?」
口調は明るい。
が、表情にふっと影が差したように見える。
「知らない」
短く、彼女はそう言った。
急に別人と会話しているような感覚に陥る。
夕日が彼女の横顔を赤く、淡く照らす。
こちらに背を向けて喋っているので、実際どんな顔をしているのか分からない。
「そう」
それだけ言うのが精一杯だった。
彼女がこうなる瞬間は度々あった。
いつからだったかは覚えていないが…
「何こんな暗い雰囲気になってるのー?まだ鬼ごっこは終わってないんだから、気分あげていかないとやってられないじゃん!」
無理やりとってつけたような明るさ。
きっと触れないほうがいいのだ。
今までも、これからも。
「そうね」
「うん。じゃあ、」
風が吹き、みくじちゃんの髪を揺らす。
みくじちゃんが振り向く。
真っ赤な空に溶けそうな笑み。
その瞳は、むすびちゃんただ一人を映していた。
「行こっか」
夕日が、綺麗だった。
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