あざとい僕の甘い罠

とと

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アレ

「えっ!?」

勢いよく振り返ったら――。

……うん、確かにしっかり「ついて」いる。

「そんなモロに見ることある? 一応、初対面やのに」

ふふっと笑いながら、お兄さんは無造作に濡れた髪を拭いている。
けれど、少し長めの髪も、透き通るような肌の白さも、きめの細やかさも。その「一物」以外は、本当に女の人みたいに綺麗や。

というか、若い女の人を近くで見る機会がなさすぎて、どんなんか忘れてしまった。おかんなら毎日見てるけど、それとは次元が違いすぎる。

「マカロン、好きなん?」

「あ……」

さっきタオルを取る時、右手に抱えていたマカロンの箱を棚に置いたのを忘れていた。

「好きです。……甘くて」

「……俺も。甘くて好きやで」

なんて中身のない答えを返してしまったんだろう。
けれど、ニコッと笑って同じ答えを返してくれたお兄さんに、さっきから心臓がうるさくてたまらない。

「あ、もしかしてお兄さんの物でしたか!? これ、お返しします!」

「ええよ、俺は毎日食べてるから。でもそれ、貰いもんやから一個だけ貰おうかな。どうせ後で感想聞かれるし」

「美味しそうなの一個、選んで?」
裸のまま、お兄さんが距離を詰めてくる。
いや、もう! 俺、それどころじゃなくなるから! そんなに近づかないでほしい。

「……じゃあ、これで」

震える手で、ピンクのマカロンを一つ掴む。
あかん、恥ずかしい。指先が思うように動かない。

「ピンク? なんで?」

差し出した手のひらで受け取ってくれたお兄さんが、不思議そうに聞いてくる。
さっきから思っていたけど、この人は、じっと目を見て喋る人だ。
恥ずかしがっている自分を見られるのが、たまらなく気恥ずかしい。

「……可愛いからです」

「可愛いお兄さんには、可愛いピンクのマカロンが似合うと思ったからです。」なんて、死んでも言えるわけがない。

「……なぁ、なんで手ぇ震えてるん?」

「そ、それは……っ」

慌てて左手で震えを抑えようとしたけれど、俺、左手にはコーラを三本もかかえてたんやった。
コーラとマカロンの箱を抱えて風呂場を覗きに来るなんて、ダサいのが丸出しや。

「ふふっ。もうええから、コーラ持っていってあげ。陽、ポテチも好きやからそれも持っていって……あ、もうそれ以上は持てんか」

「いえ! どうにか持っていきます! お兄さんの優しさなので!」

深々とお兄さんに頭を下げて、蓋が開いたままのマカロンの箱を抱え直す。
あっぶな。焦って全部ひっくり返しそうになった。

「おい! 陽! あんな綺麗なお兄さんがおるなら、先に言うといてくれよ!」

部屋に戻り、ドアをきっちり閉めてから陽に詰め寄った。
知ってるのと知らないのでは心の準備が全然違うんやからな!!

「え、陽。お兄さん二人おるってこと?」

空が不思議そうに首を傾げる。

「いや、一人やけど」
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