氷の貴公子って呼ばれてるそうですが、ただのコミュ障です。

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6.sideレオ

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sideレオ


最近俺は行き詰まっていた。

ギルド登録をしてから数年、高ランカーと言われるAランクに慣れたものの、流石にソロでの活動が厳しくなってきた。

仕事を選ばなければ気にしなくて良いのだが、俺は皆んながやらない様な依頼を受けたいと思っている。

つまり高ランク向けだが依頼料が低いもの。

もともと人助けがしたくて慈善活動の真似事をしていたところをギルドマスターに勧誘されたんだ。そしてヒーローのクラスを受けたからには期待に応えたい。

まあ、依頼者が裕福でない場合に限るけど。
余裕があるのにケチって依頼料を低くしてるなら受けない。因みにここの見極めは受付の人がやってくれている。依頼期限が切れそうな時だけ自分の目でこっそり依頼者を見に行って判断している。

まあ、そんなこんなで今まで何人かとパーティを組んだが、せっかく高ランクになったなら割りのいい仕事をしたい!という人が殆どであり、俺の考えに賛同してくれる人は少なかった。

女性は比較的慈悲深い人が多いのか、男より長めに組めることがあるが、なんというか、その、あからさまな夜の誘いが煩わしくて俺から解散の提案をする事もあった。

いい出会いはないものかとギルド内を見渡すと見知った顔ばかり。

元パーティメンバーは気まずそうな視線や、何故かまだ熱のこもった視線、そして先輩冒険者だがランクは俺より低い人達からの恨みがましい視線などなど。

まあ、暫くソロか。怪我しそうなものだけ避けて探すか。
ポーションがあれば多少の怪我なんてへっちゃら!と侮ってはいけない。ソロならば、例えば足を怪我して動けなくなった場合、それは死も同然。危ない橋は渡るべからず。

ふーっとひと息ついていると、見慣れないローブの少年?青年が入ってきた。どうやら冒険者登録をする様だ。

細身ならば魔術師か。ヒーラー適正、あわよくばCランク以上だったらパーティに誘いたい。

俺は耳をそばだてる。

「冒険者ネームはどうされますか?」

「アレン」

呟く様なそれは鈴が転がる様な可愛らしい声だった。
ローブから少し覗く白い頬、通った鼻筋、薄い小さな口は桜貝色で、肩口に溢れる水色の髪は透き通る様な水色だ。

周りの冒険者達も、男達を筆頭に釘付けだ。皆んな鼻息荒すぎだろ。

「アレン様で登録しますね。それでは鑑定を行います。結果は今すぐお伝えしてよろしいでしょうか?個室もご用意できますが」

「ここで良い」

「承知いたしました。それでは。…、………」

皆が息を呑んで様子を伺う。
能力が低くてもパーティに入れたいと羨望する物が多いのだろう。

ローブを被ったところでその美貌は隠し切れないようだ。

「鑑定終了しました、種族はそのまま登録でよろしいでしょうか?一応隠す事はできますが…、それから、先ほども申し上げたように、個室で結果をお伝えすることが可能ですが、」

そう言われると言う事はよっぽど能力が高いか、特殊な能力があるかだ。

低ランクパーティのものは諦めた様な視線を向けている。

「良いから早くしてくれ。」

「失礼いたしました。それでは鑑定結果です。種族はエルフ。魔力S、魔術A、筋力D、武術C、体力D、特殊能力あり、適正クラスはマジシャンまたはヒーラー。総合ランクB。冒険者ランクB以下から登録できますが、Bで登録してよろしいでしょうか。」

エルフ…!?しかも魔力Sの魔術A!?初期登録でBなだけで間違いなくすぐにAランク、もしかしたらSまで行くかもしれない。

…欲しい。

登録が終わった様で、アレンと呼ばれた青年は受付から離れる。勧誘しようとした瞬間には既に人に囲まれていた。

皆Bランクの名の知れたパーティのリーダーだった。
アレンは迷惑そうにそっぽをむいているが、1人の男が腕を掴み、後に続く様に他の人も腕を掴んで引っ張る。

おい、高ランク魔術師の大切な腕だぞ!?

「離せ!」

アレンが叫ぶも皆腕を離さない。気持ちはわかる、少し涙目になっている表情が大変可愛らしい。けど。

「なぁ、痛がってるだろ。離してやってよ…大丈夫?」

無理矢理体を押し込んでアレンを庇う様に立つ。
俺は一応Aランクなので、皆渋々手を離す。

怪我はしてないかと後ろを見ると視線を逸らされる。

エルフは警戒心が強い種族だと聞いたことがあるし、この状況は不本意なんだろう。

「あー、俺はレオ。Aランク冒険者で、クラスはヒーロー。よろしくな。」

「よろしくするつもりはないが、一応礼は言っておく。」

名乗れば少し警戒心は薄れるかと希望を持ったが打ち砕かれる。握手すら拒まれてしまった。

「ぷっ、Aランクのイケメン様だって嫌がられてるじゃねぇか!なぁ、やっぱ俺と来てくれよ!良い宿も知ってるし!」

「そうだそうだ!それに俺とくれば良い思いさせてやるぜ?こんなスカした若造よりすごい事教えてやるからさ!」

「黙りな!おねぇさんと来てよ!一緒に楽しい事しましょ?」

好機と捉えた冒険者達はまたアレンに群がった。
アレンは焦った様に俺の後ろに隠れる。小動物みたいだ。嫌われているのか好かれているのか分からない距離感にドギマギする。他の奴よりマシ程度に思ってくれているのなら嬉しいが。

「!…ほら、やっぱあんたらが嫌がられてるだろ。そもそも初対面で名乗りもせず失礼だ。今後必要以上に近づくなよ?」

牽制も忘れずに奴らを追い払った後、警戒心の強いアレンが落ち着けるように、なるべくゆっくり話しかける。

「ほら、あいつら行ったから、もう大丈夫だよ」

「助けてくれなんて言ってない。」

…ん?

「あ、ああ…、ごめん、余計なことしたかな」

一応謝ってみたが、アレンま無言で立ち去ってしまった。

嫌われているのか。いや、そうなんだろうけど…。

「ダメ元で勧誘だけしてみるか。」

性格、相性に難ありな感じだが、能力は魅力的だ。
それにあれは危ない。人目を惹きすぎる。

種族も容姿だけでも目を引くが、あの性格は敵を作る。

冒険者の中では穏やかと言われる俺でさえなんかこう、イラッとした。
血の気の多い奴にあんな顔であんな態度とったらわからせられそうだ。

パーティを断られても忠告だけはしておこうかと、その背中を追いかけた。

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