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禁断の果実
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蛇に化けてアダムとイヴに近づいた女神は二人に話かけました。
「こんちには、お二人さん。いい天気ね」
話しかけられた二人はこう言いました。
「えっ……蛇が喋った……」
「うそっ、なにこの蛇怖い」
明らかにドン引きしている二人に若干イラッとした女神だったが、たかだが創作物如きに腹を立てていては神としての沽券に関わると思い直し、訝しんでいる二人に再び話かける。
「実は私は神様に喋る力を貰った特別な蛇なの。つまり、神様の遣いってわけ」
神の御名を聞いた二人はすっかりこの喋る蛇を信用し、警戒を解いてしまったのです。
「なぁんだ、そうだったのですか!」
「そうよね。じゃなきゃ蛇が喋るなんて有り得ないわよね」
純粋なのは良いことではあるが、警戒心が弱すぎる。これから続く生物界頂点ゆえの驕りか。はたまた、知能がまだ未成熟なのか。蛇に化けた女神は原初のペアに対して一抹の不安を覚えました。
しかし、今大事なのは彼らの心配などではない。本来の目的である〝ヤッくん困らせ大作戦〟を遂行することにある。
蛇に化けた女神は、アダムとイヴに対してこう告げました。
「そんな神様が言ってたわよ。あそこの赤い実は今日から食べて良いって。禁断の果実、解禁ですって」
尻尾で赤い実が成る木を差し、蛇はそう伝えましたが二人は困惑した様子でヒソヒソ相談し始めたのです。
「今まで禁忌って言われていたもの急に解禁って……ねぇ?」
「俄かに信じ難いわよねぇ?」
(おっ、警戒してるわ。やれば出来るじゃない。女神様はちょっとだけ安心したわ。けど、あなたたちに拒否権はないから。だって私はあなたたちの管理者の管理者。つまり万物で一番偉大で絶対的な存在なんだから)
蛇は女神として力を駆使して二人の心を掌握し始めました。
「実は私もさっきあの実を頂いたのだけど、とっても美味しかったわ。口に入れた瞬間に弾ける果汁の甘さにほんのり感じる程よい酸味。栄養価も他の食べ物とは桁違い。一つ食べれば病気知らずですって。美味しくて健康に良い。それが解禁されたのよ? 食べない手は無くない?」
無限の女神の力の一つ、セールストークにすっかり乗せられた二人は「ならせっかくだから……」と枝から実を一つもぎ取ると二人で半分にして分け合いながら食べてしまったのです。
その様子を満足そうに見届けた蛇——女神は、これ以上ここに用はないと言わんばかりに宇宙へ戻って行ったのでした。
「こんちには、お二人さん。いい天気ね」
話しかけられた二人はこう言いました。
「えっ……蛇が喋った……」
「うそっ、なにこの蛇怖い」
明らかにドン引きしている二人に若干イラッとした女神だったが、たかだが創作物如きに腹を立てていては神としての沽券に関わると思い直し、訝しんでいる二人に再び話かける。
「実は私は神様に喋る力を貰った特別な蛇なの。つまり、神様の遣いってわけ」
神の御名を聞いた二人はすっかりこの喋る蛇を信用し、警戒を解いてしまったのです。
「なぁんだ、そうだったのですか!」
「そうよね。じゃなきゃ蛇が喋るなんて有り得ないわよね」
純粋なのは良いことではあるが、警戒心が弱すぎる。これから続く生物界頂点ゆえの驕りか。はたまた、知能がまだ未成熟なのか。蛇に化けた女神は原初のペアに対して一抹の不安を覚えました。
しかし、今大事なのは彼らの心配などではない。本来の目的である〝ヤッくん困らせ大作戦〟を遂行することにある。
蛇に化けた女神は、アダムとイヴに対してこう告げました。
「そんな神様が言ってたわよ。あそこの赤い実は今日から食べて良いって。禁断の果実、解禁ですって」
尻尾で赤い実が成る木を差し、蛇はそう伝えましたが二人は困惑した様子でヒソヒソ相談し始めたのです。
「今まで禁忌って言われていたもの急に解禁って……ねぇ?」
「俄かに信じ難いわよねぇ?」
(おっ、警戒してるわ。やれば出来るじゃない。女神様はちょっとだけ安心したわ。けど、あなたたちに拒否権はないから。だって私はあなたたちの管理者の管理者。つまり万物で一番偉大で絶対的な存在なんだから)
蛇は女神として力を駆使して二人の心を掌握し始めました。
「実は私もさっきあの実を頂いたのだけど、とっても美味しかったわ。口に入れた瞬間に弾ける果汁の甘さにほんのり感じる程よい酸味。栄養価も他の食べ物とは桁違い。一つ食べれば病気知らずですって。美味しくて健康に良い。それが解禁されたのよ? 食べない手は無くない?」
無限の女神の力の一つ、セールストークにすっかり乗せられた二人は「ならせっかくだから……」と枝から実を一つもぎ取ると二人で半分にして分け合いながら食べてしまったのです。
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