あの子を甘やかして幸せにスローライフする為の、はずれスキル7回の使い方

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第三章 刺激的なスローライフ

29.準備しよう

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あれ?

普通こういう場合、ニコラが詫びに俺に協力するのでは??
と混乱しつつも、

「協力って、一体何をしろって言うんだ?」

と、ニコラのペースにすっかり巻き込まれそう聞けば、

「第四王子の初恋の相手を探す手伝いをしてくれ」

ニコラが真面目腐った顔で、そんな一見お茶目な事を言い出した。

「トレーユの初恋の相手???」

「あぁ。そもそもローザ嬢との婚約話が出たのは、第四王子が初恋の相手と意外結婚するつもりはないと、これまでかたくなに見合いを断り続けてきたせいだと聞いた。そんな第四王子の態度に業を煮やした王が、魔王討伐の旅の仲間であった二人なら見合いを組まずとも上手くいくだろうし、二人の英雄の結婚にそうそう反対できる者もいないだろうと、ローザ嬢に白羽の矢を立てたという訳だ」

ニコラの話を聞いて、ローザが今度は顔を真っ青にして

『いくら旅の仲間だからといったって、トレーユとの結婚は無理無理無理無理!』

と、激しく首を横に振っている。

俺はそんなローザの様子を見て、別に告白してないうえ、おそらく何とも思っていない相手から、自らのあずかり知らぬところで完膚なきまでに振られているトレーユの事を改めて気の毒に思った。

「だからトレーユ様の初恋の相手を見つけ出して、ローザ嬢との結婚の話も立ち消えになると思うんだ!! なぁ、一緒に旅した仲間だろう? 何か聞いていないか?」

……なるほど。

「トレーユと長いこと旅をしたアリアとローザから情報を引き出し、トレーユの初恋相手を見つけてトレーユと王家から個々に褒賞を得た後、ローザを伯爵家に送り届け、そこからも約束の褒賞を得るつもりか」

流石は守銭奴。
目の付け所が違うと関心する。

しかし、残念なことにアリアとローザは

「トレーユの好きな人? そんな話トレーユから聞いたことなんてないよ」

と首を横に振った。

まぁ、そうだろうな。
自らの初恋の思い出を喜々として語るトレーユ……。
俺も想像だに出来ない。

かと言って。
他にローザとの結婚話を立ち消えにさせるのに良い方法も思いつかず……。

もうこうなったら、トレーユをここに呼び出して、本人に直接聞いてみ吐かせようということになった。

「よし、そうと決まれば早速お泊り会の準備に取り掛からないとな! もたもたしている暇は無いぞ、全員持ち場につけ!!」






◇◆◇◆◇

翌日――

「でも、何でお泊り会なの?」

アリアにそう尋ねられ、六人分の寝具を干しながら

恋バナ暴露大会と言えば、お泊り会と相場が決まっているからな!!」

そう教えてやった。


あの堅物トレーユが相手だ。
真昼間に呼び出し、単刀直入に

『初恋の相手とは誰だ? ローザの為にも、探し出す協力をしてやるから話せ』

と言ったところで、ずっと一人心に秘めていた事をベラベラと話すとも思えない。

本来ならば男同士、酒でも飲んで、いい感じに酔っぱらったところで聞き出すところだが。
トレーユはウワバミだ毒耐性があるからその手も使えない。

そこで、せめて楽しく打ち解けた雰囲気に酔わせ、そのノリでしゃべらせてしまおうという作戦を思いついた訳だ。

決してトレーユの初恋相手を聞き出すというミッションにイマイチ野次馬的興味が持てず、

『どうせならそれを言い訳に皆でワイワイ騒いで楽しく過ごそう、その方がアリアも喜ぶだろう』

とかなんとか適当な事を思ったわけでは決してナイ☆




若干の警戒を込め、ニコラは少し離れた街まで買い出しに行かせた。
なので当面の間は安全面で不安はないし、おいしい食事と飲み物、そして一応酒の準備も問題ない。
情報屋なだけあって、ニコラは上手い酒や食べ物にも精通しているからな。

本当は俺が街まで買い物に出て、アリアにかわいいパジャマをプレゼントしてやりたかったのだが……。
今回はいろいろ考えた末その姿を他の男に見せるのも癪だから、それは我慢することにした。


天井からシャンデリア、そしてカーテンと上から順にはたきをかけ埃を払い、床を履いた後、ピカピカに磨き上げ。
女子二人はベッドを使わせ、野郎四人は床にカーペットを引いて雑魚寝すればいいかと思った時だ。

天井と壁に、大きな雨漏りの跡を見つけた。

今は晴れているが、トレーユが到着するであろう明日の夜あたりには雨になるはずだ。

せっかく掃除したが、雨漏りを気にしながらでは恋バナもイマイチ盛り上がらない。
会場はまた別の部屋にするか?
でもここの部屋が一番広くて、暖かいうえ、調理場からも近くて便利なんだよな。


顎に手を当て、さてどうするかと一人考えていた時だった。

「ハクタカのスキルで直せない?」

アリアにそんな事を聞かれた。
アリアは随分と俺の父さんの力を高く買ってくれているようだが

「流石にそんな技術は父さんも持ち合わせて……」

『いない』

そう言おうと思ったのに。

ダメ元でスキルを発動させてみれば、勝手に手が動いて

「いたみたいだ!!」

俺は驚きのあまり思わず大声でそう叫んだ。

そんな俺の声を聞いて。
干し終えた枕の上で気持ちよさげに丸くなって寝ていたシューが煩わし気に片目を開いた。
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