18 / 51
運命の悪戯2
しおりを挟む
天音が諏訪家で生活を始めるにあたって、1番の不安だったのが、翼との関係だった。
翼は、人見知りで本当に信頼できる人間としか話すことはない、バイト先では仕方がなく話す程度と昴が以前話していたことを思い出す。実際、一緒に生活を始めて、話すことはほとんどなかった。彼は、大学に行く以外は部屋に閉じこもることが多かったからだ。そんな翼が天音と話すきっかけとなったのは、1冊のファッション雑誌だった。
天音は、その日、帰り道にある書店で女性向けの雑誌を購入し、帰宅した。リビングでその雑誌を読む天音に、たまたま台所へ行こうとして通りかかった部屋着姿の翼が初めて自ら声をかけたのだ。
「その雑誌、特集が豪華って話題のやつじゃん。今日発売でしょ。入手困難だったのに、よく手に入ったね。」
突然、翼に話しかけられしどろもどろになる。
「うん。どうしても欲しくて、予約したの。高校生になったから、もっとオシャレしようと思って。」
自分から話を振ったのにも関わらず、その言葉を聞いた翼は、興味なさそうに、ふぅん、と言い、去って行こうとする。
「ねぇ、翼。よかったら見てくれない?私、正直、どれがいいかわかんない。この雑誌のこと知ってたってことは、ちょっとはファッションに興味あるってことでしょ。」
天音の突然の申し出に、怪訝な顔をする。天音は、読んでいた雑誌を閉じ、翼に差し出す。
「お願い。」
翼は、天音からその雑誌を拒むことなく受け取ると、「高いけど。」とだけ言い、自室に戻る。冗談なのか、そうでないのか判断が付かない言い方だった。何よりも、天音は、この場でどの女の子の服が素敵か選んでくれるものとばかり思っていたので、手に取り自室に戻ったことに困惑した。
その翌日、天音が家に帰ると、リビングの机の上には、いくつもの付箋が挟まれた翼に渡したはずの雑誌が置かれていた。天音がそれを見つけ開いてみると、翼が天音に似合うであろうコーディネートや化粧品について、初心者の天音には、正直呪文のようにしか思えない言葉の数々が細く美しい字で書かれていた。
翼と直接言葉を交わすことはなかったが、翼は、実はすごく親切で、お洒落な男の子であることを知った天音は、翼に自ら話しかけに行くようになった。
今まで、近寄りがたい雰囲気があったが、きっかけ1つでそれは大きく変わった。それは翼も同様だった。雑誌のやり取りから数か月後には、一緒に買い物に行くような仲になるとは思わなかったことだろう。
翼は、人見知りで本当に信頼できる人間としか話すことはない、バイト先では仕方がなく話す程度と昴が以前話していたことを思い出す。実際、一緒に生活を始めて、話すことはほとんどなかった。彼は、大学に行く以外は部屋に閉じこもることが多かったからだ。そんな翼が天音と話すきっかけとなったのは、1冊のファッション雑誌だった。
天音は、その日、帰り道にある書店で女性向けの雑誌を購入し、帰宅した。リビングでその雑誌を読む天音に、たまたま台所へ行こうとして通りかかった部屋着姿の翼が初めて自ら声をかけたのだ。
「その雑誌、特集が豪華って話題のやつじゃん。今日発売でしょ。入手困難だったのに、よく手に入ったね。」
突然、翼に話しかけられしどろもどろになる。
「うん。どうしても欲しくて、予約したの。高校生になったから、もっとオシャレしようと思って。」
自分から話を振ったのにも関わらず、その言葉を聞いた翼は、興味なさそうに、ふぅん、と言い、去って行こうとする。
「ねぇ、翼。よかったら見てくれない?私、正直、どれがいいかわかんない。この雑誌のこと知ってたってことは、ちょっとはファッションに興味あるってことでしょ。」
天音の突然の申し出に、怪訝な顔をする。天音は、読んでいた雑誌を閉じ、翼に差し出す。
「お願い。」
翼は、天音からその雑誌を拒むことなく受け取ると、「高いけど。」とだけ言い、自室に戻る。冗談なのか、そうでないのか判断が付かない言い方だった。何よりも、天音は、この場でどの女の子の服が素敵か選んでくれるものとばかり思っていたので、手に取り自室に戻ったことに困惑した。
その翌日、天音が家に帰ると、リビングの机の上には、いくつもの付箋が挟まれた翼に渡したはずの雑誌が置かれていた。天音がそれを見つけ開いてみると、翼が天音に似合うであろうコーディネートや化粧品について、初心者の天音には、正直呪文のようにしか思えない言葉の数々が細く美しい字で書かれていた。
翼と直接言葉を交わすことはなかったが、翼は、実はすごく親切で、お洒落な男の子であることを知った天音は、翼に自ら話しかけに行くようになった。
今まで、近寄りがたい雰囲気があったが、きっかけ1つでそれは大きく変わった。それは翼も同様だった。雑誌のやり取りから数か月後には、一緒に買い物に行くような仲になるとは思わなかったことだろう。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~
葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。
「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。
新卒でセクハラ被害に遭い、職場を去った久遠(くおん)。
再起をかけた派遣先で、元カレとまさかの再会を果たす。
若くしてプロジェクトチームを任される彼は、
かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、
遠く、眩しい存在になっていた。
優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。
もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。
それでも——
8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。
これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる